GT500は開幕戦で#8 ARTA NSX-GTが優勝
GT300では#55 ARTA NSX GT3がチャンピオン獲得
昨年、シリーズチャンピオンを獲得したHondaは、2019年に向けて、エンジンの開発方針を見直して車両を仕上げた。Hondaのマシン「NSX-GT」については性能調整が見直され、ミッドシップ車両のハンディーウエイトが5kg増やされるとともに前後重量配分についてもハンディーウエイトが増やされた。そのため、今年は“速さ”よりも“強さ”を追求し、ピークパワーを下げても年間を通して安定した戦いができるよう調整が行われた。
岡山国際サーキットで開幕した2019年シリーズには、GT500クラスに昨年のチャンピオンである#1 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)をはじめ5台のNSX-GT、GT300クラスに3台のNSX GT3が参戦。予選最上位はGT500では山本/バトンの3番手だったが、GT300クラスでは#55 ARTA NSX GT3(高木真一/福住仁嶺)がポールポジションを獲得。昨年実戦デビューしたNSX GT3にとって初めてのポールポジションとなった。
決勝レースでは悪天候で大荒れとなる中、#1 RAYBRIG NSX-GT(山本)と#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大)が2台でレースをリード。ところが水しぶきの中、2台は接触してレースから脱落。#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也)が繰り上がって優勝を果たした。

#8 ARTA NSX-GTが開幕戦を制する
富士スピードウェイで開催された第2戦では決勝直前に雨が降り出すという難しいコンディションの中でレースがスタート。公式予選ではセッティングがまとまらず12番手スタートだった#1 RAYBRIG NSX-GT(山本/バトン)がじりじりと順位を上げ、Honda勢最上位の3位でフィニッシュ。表彰台へ上った。
GT300クラスでは#55 ARTA NSX GT3(高木/福住)が開幕戦に続きクラス2位表彰台を獲得。2018年シリーズに向けてFIA-GT3規定のカスタマーレーシングカー、Honda NSX GT3の販売が開始され、昨年のレース参戦経験を踏まえて改良が加えられた結果、戦闘力が格段に向上して安定した速さをみせるようになっていた。そこにGT300での経験豊富なARTAのチーム力が加わり、NSX GT3は上位争いの常連となった。
シリーズ第3戦は真夏のような天気の鈴鹿サーキットが舞台。シーズン序盤のうちにNSX-GT勢は好成績を挙げた結果ハンディーウエイトを抱え込んでいたが、決勝では最も重いハンディーウエイトを積んだ#8 ARTA NSX-GT(野尻/伊沢)が健闘。4位でレースを終えた。
シリーズ序盤、速さが目立ったNSX-GTだったが、タイのチャーン・インターナショナル・サーキットで開催された第4戦では一転して苦戦に陥った。NSX-GT勢の予選最高位は#1 RAYBRIG NSX-GT(山本/バトン)の7番手、決勝レースでも厳しい戦いとなり、NSX-GT勢最上位は#64 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン/牧野任祐)の10位だった。
真夏の富士スピードウェイで開催された第5戦でもNSX-GTの勢いは復活せず、予選最上位は#64 Modulo Epson NSX-GT(カーティケヤン/牧野)の7番手だった。しかし夏場の500マイルという長く過酷な決勝ではNSX-GTが底力を発揮。スタート時点で気温33℃に達する晴天のもと、チャンピオンカーの#1 RAYBRIG NSX-GT(山本/バトン)は徐々に順位を上げて2位に入り、シリーズポイントを伸ばして2年連続チャンピオンへ望みをつないだ。一方、GT300クラスでは#34 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹)が3位、#18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/松浦孝亮/山田真之亮)が4位入賞を果たした。
シーズンも終盤に入り、NSX-GTが得意とするオートポリスの第6戦。期待通り予選では#17 KEIHIN NSX-GT(塚越/ベルトラン・バゲット)がポールポジション、#8 ARTA NSX-GT(野尻/伊沢)が2番手とNSX-GT2台がフロントローに並んで決勝を迎えた。ところが決勝ではレース序盤に天候が急変。ピット戦略が裏目に出た#17 KEIHIN NSX-GT(塚越/バゲット)は順位を落とし、終盤に追い上げたもののトップを捉えるには至らず、2位でレースを終えた。

#17 KEIHIN NSX-GTは第6戦で追い上げの末2位に
第7戦・スポーツランドSUGOでNSX-GTは前戦に引き続き攻勢に出た。公式予選では#17 KEIHIN NSX-GT(塚越/バゲット)がポールポジションを獲得。チャンピオンを狙う#1 RAYBRIG NSX-GT(山本/バトン)が2番手に続いてNSX-GTは2戦連続でフロントローを独占して決勝レースを迎えた。しかし決勝レースのスタート直前にまたもや天候が急激に悪化したため、タイヤ戦略が焦点に。ここでも作戦が裏目に出た#1 RAYBRIG NSX-GT(山本/バトン)はチャンピオン争いの上で重要なレースを8位で終え、この時点でNSX-GT勢のチャンピオン獲得の可能性はこの時点で消えることになった。
一方でGT300クラスでは#55 ARTA NSX GT3(高木/福住)が難しいコンディションの中、NSX GT3にとって悲願だったレースでのクラス優勝を成し遂げた。第2戦の2位入賞を含めここまで全戦で着実にポイントを積み重ねてきた高木/福住組は、この優勝でポイントランキングでのリードを広げた。
シリーズ最終戦は秋晴れのツインリンクもてぎで行われた。ミッドシップレイアウトのGT500マシンとしては最後のレースとなるNSX-GTは表彰台に上がることはできなかったものの、GT300クラスでは、#55 ARTA NSX GT3(高木/福住)が4位でチェッカーフラッグを受け、シリーズチャンピオンを獲得。SUPER GTを知り尽くしたベテラン高木と、ヨーロッパで激戦を経験してきた新鋭福住のパフォーマンスが噛み合った結果もたらされた大戦果だった。

#55 ARTA NSX GT3はGT300クラスチャンピオンを獲得