シーズン残り3戦となった全日本モトクロス選手権。今大会は終盤戦の行方を左右する重要なラウンドの一つです。会場の名阪スポーツランドは、藤沢スポーツランドと並び称されるサンドコースで、例年、残暑の中でライダーたちによるスタミナ勝負が繰り広げられます。今回は土日ともに好天に恵まれ、一瞬のにわか雨以外は、おおむね強い日差しが会場に照りつけていました。
成田亮(Team HRC)は、予選レースの2周目に激しくクラッシュして、身体にダメージが残る状態でヒート1に出場しましたが、それでももう少しでホールショットかという好スタートを切りました。一方、ランキングトップの山本鯨(Team HRC)もスタート直後から好ポジションを確保し、すぐに平田優(ヤマハ)や成田をパスして、1周目を小島庸平(スズキ)に次ぐ2番手でクリアしました。
2周目には、山本が小島をパスしてトップに浮上。4番手を走る成田は、新井宏彰(カワサキ)と小方誠(カワサキ)から激しいプレッシャーを受けながらも、巧みなライン取りでポジションを守ります。トップに立った山本は、次周以降、そのリードを拡大。平田が2番手に浮上した5周目の段階で、後方に向けて約8秒のアドバンテージを築きました。
レース中盤になると、成田はケガの影響でペースを落とし、徐々に後退。最終的には12位でレースを終えました。トップの山本は、2番手との差を見極めながら余裕のトップ走行。ランキング2位につける小方が10周目に2番手へと浮上すると、次周から再びペースを上げ、最後までライバルたちを寄せつけない走りで今季5勝目を挙げました。
成田は、ヒート1でのライディングや痛みの状況などから判断して、ヒート2への出場をキャンセル。レースは、ポイントランキングでの、小方へのリードを6点に拡大してこのヒートに臨んだ山本が、華麗なスタートダッシュで1周目からトップを走行します。小島を挟み、大塚豪太(T.E.SPORT)が3番手で続きましたが、大塚は1周目の途中に転倒を喫し、トップから大きく遅れてしまいます。
山本は、1周目だけで約2秒のリードを奪うと、序盤からハイペースで逃げを図り、最初の3周で約7秒のアドバンテージを築きました。しかし、4周目に新井が2番手に浮上すると、その後の数周は徐々に山本と新井の差が縮小。8周目には、山本は新井に約4秒差まで迫られてしまいました。
レースが後半に入ると、山本と新井のラップタイムはほぼ互角の状態に。一つのミスが命取りになりかねない状況の中、山本はプレッシャーに負けることなくレースをコントロールし続けました。そして、ヒート1に続いて山本がトップでチェッカー。最高峰クラスでは自身初めての両ヒート制覇を達成し、このヒートを3位でフィニッシュした小方とのポイント差を11点まで拡大しました。
山本鯨(IA1 優勝/優勝)
「自分は埼玉県が地元ですが、現在は奈良県を拠点にしています。これは、日本に戻って全日本選手権を戦っていく上で、メリットがあると考えたからです。実家から離れることで不便なところもありますが、これまで世界選手権に参戦していたことを考えたら、それほど大きな問題ではなく、むしろリフレッシュできるというプラスの効果があると思います。この名阪スポーツランドは、シーズンを通して考えたときにキーポイントになると考えていたので、そこに近い場所に住むことで、練習環境などでもメリットが得られると判断しました。今大会の両ヒート優勝はその成果だと思うので、とてもうれしく感じています」
成田亮(IA1 12位/DNS)
「予選レースでの転倒は、ジャンプを跳びすぎ、ブレーキング時にギャップに入って前転したんだと思います。気づいたときには肩が痛く、予選はリタイアしました。病院で診察を受けた結果、肩鎖関節の脱きゅうということだったので、痛みに耐えることができれば決勝も走れると考えました。チームと相談して、いけるところまでいこうという話でスターティンググリッドに並びましたが、実際には3~4周しかもたず、15分過ぎにはまともに走れる状態ではなかったのですが、出場した以上は最後までと思って完走しました。ヒート2は、より路面も荒れることが予想され、これ以上の無理をすればさらにケガをするリスクが高かったため、出場をキャンセルしました」
芹沢勝樹 | Team HRC監督
「山本は、今回が全日本最高峰クラスで初めての両ヒート優勝です。開幕戦からここまで、なかなか時間がかかりましたが、ポテンシャルが高いライダーなので、いずれ達成できるという思いはありました。理想としているのは、序盤で差を拡大してレースをコントロールする展開ですが、今回は戦略がうまくはまって、ライバルが出遅れる中で理想的な状況に持ち込めたと自負しています。一方で成田は、事前テストでかなり調子がよく、万全の状態で今大会に挑んだのですが、予選で不運があり負傷してしまいました。それでも決勝ヒート1の序盤は、痛みがある中でも上位を走ることができ、走りそのものは好調をキープしていることを確認できました。まずはケガをしっかり治し、再び強さを発揮してほしいです」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | 19 | 32'54.649 | |
2 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 19 | +00'04.994 |
3 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 19 | +00'38.212 |
4 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 19 | +00'42.705 |
5 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 19 | +00'43.383 |
6 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 19 | +00'50.338 |
7 | 8 | 星野裕 | カワサキ | 19 | +00'51.491 |
8 | 113 | 田中雅己 | 19 | +01'01.515 | |
9 | 166 | 星野優位 | KTM | 19 | +01'23.524 |
10 | 45 | 大塚豪太 | 19 | +01'37.425 | |
12 | 1 | 成田亮 | 18 | +1Lap | |
14 | 09 | 小野千成 | 18 | +1Lap | |
16 | 19 | 長門健一 | 18 | +1Lap | |
17 | 76 | 上佐祥敬 | 18 | +1Lap | |
20 | 72 | 村上洸太 | 17 | +2Laps | |
21 | 25 | 垣内伊吹 | 17 | +2Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | 19 | 33'16.192 | |
2 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 19 | +00'06.397 |
3 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 19 | +00'13.984 |
4 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 19 | +00'29.279 |
5 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 19 | +00'39.673 |
6 | 44 | 小島庸平 | スズキ | 19 | +00'48.210 |
7 | 166 | 星野優位 | KTM | 19 | +00'48.925 |
8 | 113 | 田中雅己 | 19 | +00'50.785 | |
9 | 8 | 星野裕 | カワサキ | 19 | +01'01.013 |
10 | 793 | 池谷優太 | スズキ | 19 | +01'19.518 |
12 | 19 | 長門健一 | 18 | +1Lap | |
13 | 9 | 小野千成 | 18 | +1Lap | |
16 | 76 | 上佐祥敬 | 18 | +1Lap | |
18 | 25 | 垣内伊吹 | 17 | +2Laps | |
19 | 45 | 大塚豪太 | 17 | +2Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント |
---|---|---|---|---|
1 | 400 | 山本鯨 | 306 | |
2 | 10 | 小方誠 | カワサキ | 295 |
3 | 1 | 成田亮 | 248 | |
4 | 99 | 平田優 | ヤマハ | 244 |
5 | 331 | 新井宏彰 | カワサキ | 222 |
6 | 7 | 深谷広一 | スズキ | 196 |
7 | 166 | 星野優位 | KTM | 181 |
8 | 8 | 星野裕 | カワサキ | 173 |
9 | 45 | 大塚豪太 | 151 | |
10 | 44 | 小島康平 | スズキ | 123 |
12 | 113 | 田中雅己 | 116 | |
14 | 19 | 長門健一 | 80 | |
16 | 117 | 馬場大貴 | 67 | |
17 | 09 | 小野千成 | 64 | |
22 | 72 | 村上洸太 | 24 |