ゾーン30プラスとは?ゾーン30との違い・物理的デバイス・進め方を解説

交通安全
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生活道路において、歩行者や自転車の安全確保と、通過車両の速度抑制・進入抑制は長年の課題となっています。その解決策として、最高速度30km/hの区域規制と、ハンプなどの物理的デバイスを組み合わせる「ゾーン30プラス」という施策が推進されています。本記事では、制度の概要や従来のゾーン30との違い、具体的な対策例、整備の進め方、そして実務で求められる効果検証の方法について詳しく整理・解説します。

目次

  • ゾーン30プラスとは
    • ゾーン30との違い
    • 生活道路の法定速度30km/hとの違い
    • ゾーン30プラスの整備状況
  • ゾーン30プラスで使われる物理的デバイス
    • ハンプ・スムーズ横断歩道
    • 狭さく
    • シケイン
    • 進入抑制デバイス・その他対策
  • ゾーン30プラス整備の進め方
    • 1. 対策エリア候補を抽出する
    • 2. 地域協働体制を構築し、合意形成する
    • 3. 整備計画を策定し、対策を実施する
    • 4. 効果を検証し、追加対策を検討する
  • ゾーン30プラスの効果検証で見る指標
    • 走行速度と30km/h超過割合
    • 交通量・通過交通・経路変化
    • 急減速・事故・住民評価
  • ゾーン30プラスを進める際の課題
    • 整備前後データを同じ条件で比較しにくい
    • 地域の合意形成と周辺影響
  • まとめ

ゾーン30プラスとは

GPSの仕組み

「ゾーン30プラス」とは、最高速度30km/hの区域規制(ゾーン30)と、ハンプなどの物理的バイスを適切に組み合わせ、交通安全を向上させる施策です。道路管理者と警察が緊密に連携し、生活道路における「人優先」の安全・安心な通行空間を整備することを目的としています。単に設備を作るだけでなく、地域住民との丁寧な合意形成を図り、整備後の効果検証を含む継続的なPDCAサイクルを実施する取り組みです。

参考:ゾーン30プラスの概要|国土交通省

ゾーン30との違い

従来のゾーン30は、おもに警察(公安委員会)が実施する「最高速度30km/hの区域規制」による速度抑制が中心でした。一方ゾーン30プラスは、この区域規制に加えて、道路管理者がハンプや狭さくといった物理的デバイスを設置し、道路の構造面から物理的に速度や進入を抑制します。また、単に区域内に既存のデバイスがある状態を指すのではなく、地域住民との合意形成を図り、しっかりとした整備計画を策定して進めることが重要です。

参考:「ゾーン30プラス」の整備等に関するQ&A|国土交通省

生活道路の法定速度30km/hとの違い

2026年9月1日より、中央線などがない生活道路の法定速度が、従来の60km/hから30km/hへ引き下げられます。ただし、全ての道路が一律に30km/hになるわけではなく、実際の道路構造や標識による指定速度の確認が必要です。この法定速度の引下げが、全国的な交通ルールの変更であるのに対し、ゾーン30プラスは、特定の地域における物理的な対策と、地域の合意形成を組み合わせた局地的な整備施策であるという違いがあります。

参考:生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます!!|警察庁

ゾーン30プラスの整備状況

国土交通省は、全国におけるゾーン30プラスの取り組み状況を定期的に公表しています。2025年3月末時点での公表資料によると、全国で整備計画策定済みの地区は263地区に上ります。各自治体で導入に向けた検討が進んでおり、今後もこの数は増加していくと見込まれます。なお、最新の地区数や公表日については、国土交通省のポータルサイトなどでご確認ください。

参考:生活道路の交通安全対策ポータル広報|国土交通省

ゾーン30プラスで使われる物理的デバイス

ゾーン30プラスで使われる物理的デバイスの例

ゾーン30プラスにおいて、道路管理者が設置する物理的デバイスは、おもに車両の進入抑制と速度抑制を目的とした、道路構造上の対策です。道路の幅員やカーブ、緊急車両の通行、沿道住民の利用、騒音・振動、排水など、現地の条件を総合的に考慮して適切なデバイスを選定します。

ハンプ・スムーズ横断歩道

ハンプは、車道の路面を局所的に盛り上げることで、物理的に速度を出しにくくするデバイスです。またスムーズ横断歩道は、ハンプと横断歩道を組み合わせたもので、横断歩道部を高くすることで、歩行者優先の空間であることを視覚的・構造的に運転者へ示します。設置にあたっては、車両通過時の騒音や振動、雨水の排水、二輪車の安全性、そして路線バスや緊急車両の通行への影響に十分配慮する必要があります。

狭さく

狭さくは、車道の一部に張り出しを設けて幅を狭め、運転者に心理的・物理的な圧迫感を与え減速を促すデバイスです。車道を狭めた分を歩行者空間として確保したり、ゾーンへの進入口に設置して区域への進入を認識させたりする目的でも活用されます。設置時は、対向車とのすれ違いや、交差点付近での見通し、大型車の通行に支障が出ないかを確認します。

シケイン

シケインは、車道の端に交互に張り出しを設けるなどして車両の走行経路を屈曲させ、直線的な加速を抑えるデバイスです。形状によってクランク型やスラローム型などがあります。運転者にハンドル操作を要求することで確実な減速を促しますが、設置にはある程度の道路幅員が必要となります。また、沿道にある駐車場への出入りのしやすさや、積雪寒冷地における除雪作業などの維持管理面も考慮して設計します。

進入抑制デバイス・その他対策

通過交通(抜け道利用)の進入そのものを防ぐ対策として、時間帯によって昇降するライジングボラードや、物理的な車止めの設置、交差点の形状を工夫する交差点入口ハンプなどがあります。これらの物理的デバイスに加え、路面表示、カラー舗装、標識、一方通行などの交通規制、そして地域での啓発活動を効果的に組み合わせます。対策を行う際は、締め出された交通が周辺の別の生活道路へ転換し、新たな危険を生まないかを必ず確認します。

ゾーン30プラス整備の進め方

ゾーン30プラス整備の進め方フロー図

ゾーン30プラスは、地域住民、警察、道路管理者が課題を共有し、三位一体となって計画・実施・検証を進めることが基本です。特に、地域の合意形成と、対策実施後の客観的な効果検証とPDCAサイクルの運用がプロジェクト成功の鍵を握ります。

1. 対策エリア候補を抽出する

まずは対策を行うべきエリアの候補を抽出します。過去の交通事故データ、車両の挙動データ(急ブレーキなど)、走行速度の実態、通学路の指定状況、そして地域住民からの要望などを総合的に分析し、優先度の高い区域を選定します。対象区域内だけでなく、周辺の幹線道路を含む広域的な交通実態を把握し、学校、高齢者施設、公園といった、歩行者の利用が特に多い拠点の位置関係を確認します。

2. 地域協働体制を構築し、合意形成する

道路管理者、警察、自治体の関係部局に加え、学校、PTA、自治会、沿道住民などで構成される地域協働体制(協議会など)を構築し、現状の課題を共有します。住民からは、生活利便性の低下、デバイス通過時の騒音、沿道駐車場へのアクセスのしにくさ、緊急車両の到着遅延など、さまざまな懸念が出ることが予想されます。これらの懸念を整理し、必要に応じて可搬型ハンプなどを用いた試行設置(実証実験)を行い、実際の効果や影響を体感してもらうことで合意形成を図ります。

3. 整備計画を策定し、対策を実施する

合意形成を経て、具体的な整備計画を策定します。対象となる区域、解決すべき課題、短期的に行う対策と中長期的な対策の切り分け、それぞれの実施主体(道路管理者か警察か)、そして整備スケジュールを明確にします。区域規制(ゾーン30)と物理的デバイスの配置を最適に組み合わせ、計画に沿って対策を実施します。重要なのは、対策による変化を後で評価できるよう、整備前の基準となる交通データを確実に取得しておくことです。

4. 効果を検証し、追加対策を検討する

対策を実施した後は、整備前後のデータを比較して効果を検証します。車両の速度、交通量、事故件数、急挙動の発生状況に加え、住民の体感評価(アンケートなど)も指標とします。また、対象区域内だけでなく、周辺の道路へ交通が転換して新たな危険が生じていないかも確認します。検証の結果、期待した効果が不十分な箇所や副作用が生じた箇所は、デバイスの配置変更や追加の交通規制などの改善策を検討し、継続的に安全性を高めていきます。

参考:生活道路の交通安全対策ポータル 施策紹介|国土交通省

ゾーン30プラスの効果検証で見る指標

効果検証ダッシュボードの例

ゾーン30プラスの効果検証では、対象区域の平均速度が下がったかだけで評価を終わらせず、複数の客観的指標を組み合わせて多角的に分析することが求められます。また、区間全体だけでなく、デバイス直前・直後の局所的な変化も確認します。

走行速度と30km/h超過割合

最も基本的な指標は走行速度です。整備前後で、平均速度や中央値の低下だけでなく、速度分布のばらつきや、特に危険性の高い、30km/hを超過して走行する車両の割合がどれだけ減少したかを比較します。また、ハンプや狭さくといったデバイスの手前・通過時・通過後の微小区間で速度がどう変化しているかを確認し、デバイスが意図通りに機能しているかを評価します。時間帯別、曜日別、進行方向別の分析も有効です。

交通量・通過交通・経路変化

区域内を走行する交通量の総量が減少したかを確認します。その際、沿道に用事のある居住者などの目的交通と、単なる抜け道として利用する通過交通を、出発地・目的地データなどを用いて可能な範囲で区別して評価します。また、進入抑制デバイスなどによって通過交通を排除した場合、その車両が周辺の幹線道路へ正しく誘導されたのか、あるいは別の生活道路へ迂回して新たな危険箇所を生んでいないかを、周辺地域も含めて面的に分析します。

急減速・事故・住民評価

車両のプローブデータから得られる、急減速(急ブレーキ)の発生地点や、減速強度の度合いの変化を確認し、潜在的な危険(ヒヤリハット)が減少したかを評価します。交通事故件数は、生活道路では発生頻度が低いため、単年での比較ではなく、長期的な評価が必要です。客観的データによる評価と併せて、アンケートなどを通じて、歩きやすくなったか、騒音が気にならないかといった、住民の主観的な安心感や利便性の変化も把握します。

ゾーン30プラスを進める際の課題

効果的な施策となりうるゾーン30プラスですが、実務においては、客観的なデータ取得の負担、多様なステークホルダー間の合意形成、対策による副作用、そして検証・改善の継続的な運用といった課題があります。一律の対策を押し付けるのではなく、地域特性に合わせた柔軟な対応が求められます。

整備前後データを同じ条件で比較しにくい

正確な効果検証のためには、整備前後のデータを同じ条件で比較する必要がありますが、これが実務上の大きな壁となります。比較期間、曜日、季節、天候の条件を可能な限りそろえ、周辺での大規模な道路工事やイベントといった外部要因の影響も記録して考慮しなければなりません。また、用いる交通データ(プローブデータなど)のサンプル数や、対象となる車種の偏りがないかも慎重に確認する必要があります。

地域の合意形成と周辺影響

物理的デバイスの設置は、歩行者の安全を高める一方で、車両を利用する沿道住民の利便性を低下させる側面を持ちます。この安全と利便性のバランスを住民にどう納得してもらうかが合意形成の難所です。

試行設置の実施と、そこで得られた客観的なデータ(速度低下の実績など)をもとに議論を進めることが重要です。また、交通転換による周辺道路への影響をデータで示し、必要であれば周辺エリアを含めた広域的な交通運用改善を提案する姿勢が求められます。

まとめ

HDDSの活用例

ゾーン30プラスは、最高速度30km/hの区域規制にハンプなどの物理的デバイスを組み合わせることで、生活道路の安全を向上させる施策です。成功のためには、道路管理者・警察・地域住民が密に連携し、試行設置を通じた丁寧な合意形成と、データに基づく継続的なPDCAサイクルを回すことが不可欠です。

対策の効果検証においては、単なる通過速度の低下だけで判断するのではなく、30km/hを超過する割合の減少、急減速の抑制、通過交通(抜け道利用)の排除状況、経路変化、そして住民の体感評価など、複合的な指標を用いて多角的に評価しなければなりません。

Hondaの法人向けデータソリューション「Honda Drive Data Service(HDDS)」は、これらの効果検証に関する課題を解決する手段の一つです。HDDSのプローブデータから得られる細かな速度変化や急減速データ、車両の通行・経路(出発地・目的地)データなどを活用することで、対策候補の客観的な抽出から、対策前後の定量的な効果比較までを支援します。デバイス直前の局所的な速度評価や、周辺道路への交通転換の把握など、実務で直面するデータ取得の壁を乗り越えるための有効な手段となります。

※本記事に記載の制度(法定速度30km/h化など)の施行日や、ゾーン30プラスの最新の整備地区数、各種データの提供条件については、記事公開時点の最新情報を各省庁の公式発表やサービス窓口にてご確認ください。

参考:【分析手法紹介】生活道路の速度対策。「走行データ」で見えたこと

このコラムの執筆者

執筆者写真
佐藤耕一
自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。のちライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、SDV・EV関連動向を中心に取材・執筆・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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