デジタルツインとは?仕組み・活用例・導入のポイントをわかりやすく解説

デジタルツイン
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近年、都市計画やインフラ管理などの幅広い分野において、「デジタルツイン」の活用が注目されています。デジタルツインとは現実空間から得られたデータを仮想空間に反映させ、分析・シミュレーションを行い現実の施策に生かす仕組みのことです。本記事では、デジタルツインの基本構造や活用例、導入手順、注意点などを実務視点で整理します。

目次

  • デジタルツインとは
    • デジタルツインと3Dモデル・シミュレーションの違い
    • デジタルツインとメタバースの違い
  • デジタルツインの仕組み
    • 1. 現実空間からデータを収集する
    • 2. データを統合して仮想空間に再現する
    • 3. 可視化・分析・シミュレーションを行う
    • 4. 結果を現実の施策に反映し、更新する
  • デジタルツインの主な活用例
    • 製造・設備保全
    • 都市計画・交通シミュレーション
    • 防災・避難計画
    • 道路・インフラ管理
  • デジタルツイン導入の進め方
    • 目的・対象・KPIを決める
    • 必要なデータと更新頻度を設計する
    • 小規模に検証し、運用へ広げる
  • デジタルツイン導入時の課題
    • データの品質と現実とのずれ
    • データ連携・標準化と運用コスト
    • プライバシー・セキュリティ・利用権限
  • まとめ

デジタルツインとは

デジタルツインの概要図

デジタルツインとは、工場の設備や都市空間など現実空間から集めたデータをもとに、デジタル上で双子のような仮想空間を再現する仕組みのことです。

コンピューター上に現実と同じ空間を再現できるため、災害時の避難シミュレーションや、新しい設備を導入する前の事前検証などにも活用できます。可視化にとどまらず、仮想空間で分析やシミュレーションを実施し、その結果を現実の施策などに生かしていくことが、デジタルツインを活用する本質です。

災害対策や設備導入前の検証だけではなく、建物の解析、道路や交通、人流シミュレーションなど、活用範囲は多岐にわたります。都市計画やインフラ管理などの幅広い分野において、今後も注目される仕組みです。

2020年に、国土交通省が地方公共団体や民間企業などのさまざまな関係者と共創する「Project PLATEAU」をスタートさせました。デジタルツインには、建物などのデータが必要です。同プロジェクトでは、市町村などが保有する既存のデータをもとに、3D都市モデルを整備し、オープンデータ化しています。このことによって、3D都市モデルと各種技術を組み合わせた、インフラ管理やまちづくりなどに活用されています。

※参考:Project PLATEAU|国土交通省

これまでも物理的な空間(現実空間)の現象をデジタル空間に再現する取り組みはありました。たとえば「3Dモデル・シミュレーション」や「メタバース」などが、よく知られています。これらの取り組みがデジタルツインと、どのように異なるのか解説します。

デジタルツインと3Dモデル・シミュレーションの違い

3Dモデル・シミュレーションとは、対象を立体的に再現した「かたち」のデータ(3Dモデル)を活用し、設定した条件や仮説のもとで仮想的に試す技術のことです。

設計や完成イメージの確認などに活用されています。必ずしも現実のデータと継続的に連動するものではありません。

一方、デジタルツインは、現実空間に設置したセンサーなどで取得したリアルタイムデータと連携し、再現、分析、そしてフィードバックまでを継続的に運用する概念です。

つまり、3Dモデル・シミュレーションは「対象を立体的に分析・検証する技術」であるのに対し、デジタルツインは「現実と仮想空間をつなぎ、継続的に最適化が可能な技術」といえます。

デジタルツインとメタバースの違い

メタバースとは、インターネットの仮想空間のことです。メタバースは、アバターを通じて、ユーザー同士で交流をするほか、デジタル資産の売買などにも活用されています。いわばメタバースは「人が交流や売買などの活動をするための仮想空間」です。

一方、デジタルツインは、建物や都市など、現実空間にあるものをデジタル空間に再現し、実際のデータと連携して活用していく技術です。

メタバースが「人が交流や活動をするための仮想空間」ならば、デジタルツインは「現実空間をそのまま再現する仕組み」であり、活用方法も大きく異なります。

このようにデジタルツインが、3Dモデル・シミュレーションやメタバースと異なる点は、時間と共に変化する対象物の状態などをデジタル空間内に反映できることです。

デジタルツインの仕組み

デジタルツインの仕組みとサイクルの図

デジタル空間内のデジタルツインに、現実空間の情報を反映させるためには、データの取得、統合、再現、同期という4つのステップが必要です。

1. 現実空間からデータを収集する

まずは、現実空間の情報を取得します。交通機関などに設置されたIoTセンサーや車両、カメラ、GPS、各種システムから、温度や振動、位置情報、稼働状況などのさまざまなデータを収集します。デジタルツインでは、この正確なデータ収集が土台となります。

2. データを統合して仮想空間に再現する

現実空間から取得した情報を、デジタル空間で統合し、仮想空間に再現します。ちなみに、PLATEAUは、ジオメトリ(形状)とセマンティクス(意味情報)の統合モデルで、3D都市モデルや地理空間情報(GIS)を基盤に、交通・気象・施設情報などの意味情報を持たせることで、データ連携しやすい形で提供しています。共通の座標、IDなどで情報を結びつけることで、現実の都市を多角的に再現可能です。

3. 可視化・分析・シミュレーションを行う

仮想空間に再現したデータをもとに、現状の把握や異常検知、需要予測、施策実施後の変化予測などを行います。データを可視化することで、現実では試しにくい条件も安全かつ低コストで検証できるのが特徴です。

たとえば交通分野では、道路や建物の3D都市モデルを活用し、新しい商業施設や道路を整備した場合の交通流や渋滞、迂回ルート、所要時間の変化などをシミュレーションします。

また、デジタルツインを活用した「3D都市モデル(PLATEAU)」のオープンデータを利用し、交通シミュレーションに役立つツールが開発された事例もあります。

デジタルツインを活用することで、商業施設の建設前に交通の流れや渋滞、迂回ルート、所要時間の変化などを検証できます。これまで時間やコストがかかっていた交通影響解析を、より手軽に実施できるようになります。

ただし、シミュレーション結果は、使用するデータや設定した条件(前提条件)に基づく予測です。データの欠落やモデルの仮定によって結果が変わる可能性があります。予測結果を確定事実として扱わないことが大切です。

4. 結果を現実の施策に反映し、更新する

分析やシミュレーションの結果は、道路整備や設備の運用変更、インフラの保全計画など、実際の施策に反映させます。そして再び現実空間からデータを収集し、予測した結果と実際の状況を比較・検証します。このようにデジタルツインを継続的に更新することで、仮想空間と現実空間のずれを小さくし、より精度の高い分析が可能となります。

デジタルツインの主な活用例

デジタルツインは、製造業の設備保全をはじめ、都市計画、交通、防災、インフラ管理など、さまざまな分野での活用が進められています。デジタルツインを採用することで、より適切な検証が可能となり、意思決定や業務の効率化につながります。

製造・設備保全

デジタルツインは、製造業でも活用されています。工場設備や生産ラインの稼働データをデジタルツイン上に再現し、設備の状態をリアルタイムで把握。センサーデータや設備情報をもとに異常の兆候や故障時期を予測できるため、計画的な保守や予防保全に役立ちます。また、生産ラインの変更前にボトルネックとなる箇所や設備配置をシミュレーションできるため、効率的な改善が可能です。精度の高い分析を行うには、設備ごとのIDを統一し、品質の高い稼働データを継続的に取得することが重要です。

実際にデジタルツインは、合成樹脂製造プラントでも活用されています。サイバー上にプラントの運転状況を再現し、目標品質を実現するため、調整タイミングや原料の投入量などを算出。その結果を現場へフィードバックすることで、サンプリング回数の削減や品質の安定化に加え、作業効率の向上、新製品の立ち上げ期間の短縮などにつながっています。

都市計画・交通シミュレーション

都市計画・交通シミュレーションの例

都市計画や交通分野では、建物や道路の3D都市モデルに交通量や車両位置などのデータを重ね合わせ、都市全体の交通状況を可視化します。これにより、新しい道路や施設の建設前に、交通の流れや渋滞、迂回ルート、所要時間の変化をシミュレーションできます。施策の実施後は実測データと比較して効果を検証し、その結果を次の都市計画や交通施策に反映することで、より精度の高いまちづくりが可能です。

実際に、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」では、3D都市モデルを活用し、実際の道路環境を再現した運転訓練システムを開発しています。危険箇所や交通状況を仮想空間で体験でき、安全運転教育に役立てられています。

防災・避難計画

防災分野では、浸水や地震などの災害シミュレーションと、建物や道路などの都市データを組み合わせることで、被害状況を予測できます。これにより、避難経路や避難所の配置、救援物資の輸送ルート、災害時に通行可能な道路などを事前に検討することが可能です。災害発生後は、最新の現況データを反映してデジタルツインを更新することで、変化する状況に応じた迅速な意思決定や復旧活動に活用できます。

鳥取市では、洪水時の浸水状況を時系列で再現して避難経路を検討し、浸水予測と建物データを組み合わせて避難可能な建物を可視化する実証実験が実施されました。さらに防災講習会での啓発に活用されています。また福島県郡山市では、3D化浸水想定区域図を活用して「垂直避難」が可能な建物をピックアップし、円滑な避難誘導や施設配置の検討に活用されています。

道路・インフラ管理

道路や橋、トンネルなどのインフラ管理では、点検結果や補修履歴、交通量などの利用状況をデジタルツイン上に統合し、設備の状態を把握します。蓄積したデータから劣化の進み方を予測することで、補修が必要な場所や対応の優先順位を検討しやすくなります。ただし、モデル上の評価だけで判断するのではなく、現地での点検や技術者の専門的な判断と組み合わせて活用することが重要です。

実際に、地下に埋設された上下水道やガス管などのデータを3D都市モデルに統合し、都市開発やインフラの維持管理に活用するための実証実験なども行われています。

デジタルツイン導入の進め方

デジタルツインは、技術や先進性で選ぶのではなく、解決したい課題や意思決定の場面を明確にして設計することが重要です。まずは小規模な実証で効果を検証し、データ更新や運用体制を整えながら、段階的に活用範囲を広げていきましょう。

目的・対象・KPIを決める

デジタルツインを導入する際は、「何を予測・改善するのか」を明確にすることが大切です。たとえば、「渋滞を減らしたい」「点検業務を効率化したい」といった目的を設定し、対象エリアや必要なデータを整理します。さらに、渋滞時間や速度超過率、点検時間などのKPIを設定することで、導入前後の効果を定量的に比較できます。

必要なデータと更新頻度を設計する

デジタルツインの精度は、活用するデータの質によって大きく左右されます。まずは、建物や設備情報などの静的データと、センサーやIoT機器から取得するリアルタイムデータを整理し、必要なデータを洗い出しましょう。その上で、データの精度や粒度、更新頻度、取得方法を設計します。また、データ品質の維持や更新ルール、管理体制まで決めておくことで、導入後も継続して信頼性の高いデジタルツインを運用できます。必要なデータが取得できない場合は、代替データや推定手法を検討することも重要です。

小規模に検証し、運用へ広げる

デジタルツインは、最初から広範囲に導入するのではなく、まずは対象を限定したPoC(概念実証)で効果を検証するのが一般的です。予測精度やシミュレーション結果だけでなく、現場で使いやすいか、データを継続的に更新できるか、運用コストに見合うかといった観点から評価します。課題を改善しながら対象エリアや機能を段階的に拡大することで、導入リスクを抑えつつ、実運用へスムーズに展開できます。

デジタルツイン導入時の課題

デジタルツインは、データを収集するだけでは効果を発揮しません。データ連携や運用コスト、データの利用権限、更新や保守を担う運用体制なども必要となるので注意しましょう。

データの品質と現実とのずれ

デジタルツインの精度は、土台となる収集データの品質や量に大きく左右されます。データの不足や偏り、更新の遅れがあると、現実とのずれが生じ、シミュレーションや予測の精度が低下する可能性があります。また、対象外のエリアや特定の条件下では結果が異なる場合もあるため、モデルの適用範囲を明確にしておくことが重要です。導入後も実測値とシミュレーション結果を定期的に比較検証し、データやモデルを継続的に更新することで、精度と信頼性を維持できます。

データ連携・標準化と運用コスト

デジタルツインでは、IoTセンサーや設備、GIS(地理情報システム)、CAD、業務システムなど、さまざまな場所からデータを集めて活用します。しかし、システムごとにデータ形式や記録方法、座標系、単位などが異なるため統合には時間やコストがかかります。そのため、ルールを統一し、APIやデータ統合ツールを活用して異なるシステム同士でも情報をやり取りできる環境を整えることが重要です。

また導入後も、センサーなどのIoT機器の保守点検はもちろん、データ分析を担うAIシステムの構築やメンテナンスなども必要になります。データの管理ルールを制定し、導入後も運用できる人材を育成していくことで、品質を継続的に維持する体制を整えられます。デジタルツインの導入には、初期コストだけでなく、導入後の運用コストも念頭に置きましょう。

プライバシー・セキュリティ・利用権限

デジタルツインに活用されるデータには、さまざまな情報が含まれています。そのため、プライバシーへの配慮や、セキュリティの確保が不可欠です。位置情報や施設情報の扱いでは、匿名化・統計化や厳格なアクセス制御が重要です。データの取得目的、第三者提供、成果公表の条件を事前に確認しましょう。

システムによる自動化が進んでも、安全確保の観点から、重要な判断は必ず人が行うようにしましょう。また、経営者だけではなく、全社的なデータリテラシーの向上を常に行い、プライバシーやセキュリティの扱いに関する感度を上げておくことも大切です。

まとめ

デジタルツインにおけるHDDSデータ基盤の活用図

デジタルツインは、現実空間から収集したデータを仮想空間に再現し、分析やシミュレーションの結果を現実の改善へ生かす仕組みです。導入効果を高めるには、目的に応じたデータを収集するだけでなく、データの継続的な更新や検証、運用体制の整備が欠かせません。

特に都市・交通分野では、建物や道路を再現した3D都市モデルなどの静的データに加え、交通量や車両位置などの動的データを組み合わせることで、より現実に近いシミュレーションが可能になります。

Hondaが提供しているHDDS(Honda Drive Data Service)では、Hondaの走行データ(プローブデータ)を提供し、交通課題の解決に活用いただける取り組みを行っています。

任意の道路の交通頻度や駐車頻度、急減速発生地点などの交通統計・分析データをご提供しています。都市交通の現状把握や施策の効果検証に活用できます。

なお、HDDS自体はデジタルツイン基盤ではありません。導入をご検討の際は、ご要件をお知らせいただければ、必要なシステムとの連携方法や実装の可否についてご案内いたします。

このコラムの執筆者

執筆者写真
増田真吾
自動車ライター
自動車整備士・自動車検査員
  • 国産車ディーラー、ガソリンスタンド、車検工場で約15年間整備士として勤務
  • 国内最大手の中古車買取販売会社本部にて保証判定部署に転職し、保証認否および提携工場からの技術相談業務に従事
  • 40歳手前で自動車関連記事の執筆を開始しフリーランスとして独立
  • 2022年に自動車関連企業やサービスをきっかけとして、WEB制作やSNS支援、YouTube制作を行う「株式会社グラフィカ・ワン」を設立
  • 現在は複数のライターと主にチームとして記事執筆担当
  • 大手カー用品店、レーシングチーム、eモータースポーツなど様々なプロジェクトに参画中
増田 しんご【車系ライター/エディター/コンテンツクリエイター】 - X(Twitter)
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