位置情報データを活用した人流データ分析とは?データの種類や取得方法を解説
位置情報データを分析すると、「どこに・いつ・どれくらい人が集まり、どう動いたか」を客観的に把握できます。小売の商圏分析や観光の混雑対策、都市開発の効果検証など、活用範囲は広がっています。
本記事では、人流データ分析の基本からデータの種類・取得方法、実務で失敗しないためのポイントまで整理しながら解説します。
目次
- 位置情報データを活用した分析=人流データ分析
- 人流データ分析とは
- 【具体例】人流データ分析の活用シーン
- 人流データ分析が重要視されている背景
- 人流データの種類
- カウントデータ(通行量)
- 滞留データ(混雑・密度)
- ODデータ(流入元・流出先)
- 移動軌跡データ(回遊・ルート)
- 人流データの取得方法
- 直接計測1 カメラ画像による人流データ
- 直接計測2 センサー(LiDARなど)による人流データ
- デバイス由来1 基地局・GPS・スマートフォンアプリの位置情報
- デバイス由来2 Wi-Fiパケットセンサー
- デバイス由来3 Bluetoothビーコン
- 人流データ分析を成功させるポイント
- 精度の高いデータを集める
- 母数が十分なデータを確保する
- プライバシーに配慮されたデータを選ぶ
- まとめ
位置情報データを活用した分析=人流データ分析
スマートフォン、車両プローブ、センサーなどから得られる位置情報データをもとに「人や車の動き」を可視化する分析手法を、人流データ分析(人流データ分析)といいます。たとえば「どこに」「いつ」「どれくらい」人がいるかだけでなく「どこから来てどこへ行くか」「どのルートで回遊したか」といった移動の流れも含まれます。
人流データ分析とは
人流データ分析とは、位置情報データをもとに、「人がどこに・いつ・どれくらい集まり、どう移動しているか」を可視化・分析する手法です。人流データ分析により、以下のことが把握できます。
- エリアの通行量(人が多い/少ない)
- 滞在の傾向(混雑・密度・ピーク時間)
- 流入元・流出先(どこから来て、どこへ移動したか)
- 回遊ルート(どの道・どの施設を経由しているか)
- 曜日・時間帯・イベント有無による変化
【具体例】人流データ分析の活用シーン
人流データ分析は、現状を客観的に把握し、施策の改善につなげる場面で幅広く活用されています。主な活用例は次のとおりです。
| 観光地 | どの時間帯にどこへ人が集中しているのかを把握できます。混雑のピークがわかれば、分散施策や情報発信を効果的に行えます。 |
|---|---|
| 商業施設 | 来訪者数の増減や館内の回遊・滞在傾向を分析できます。入口ごとの流入量や立ち寄り方の違いがわかるため、売り場配置やイベント導線の見直しに役立ちます。 |
| 自治体/都市開発 | 再開発や公共空間整備の前後で、通行量や滞在の変化を比較できます。施策の効果を定量的に評価しやすくなります。 |
| イベント運営 | 来場者数の推計や混雑箇所の把握に活用できます。入退場動線の最適化や警備配置の見直し、安全対策の強化にもつながります。 |
| 交通分野 | 移動が集中する地点を把握できるため、渋滞対策や交通計画の検討に生かせます。 |
| 防災対策 | 避難所周辺の滞留状況や移動経路を把握することで、迅速な情報提供や救援活動の支援につながります。 |
人流データ分析が重要視されている背景
人流データ分析が注目される背景には、社会の変化があります。第一に、人の動きが多様化し、従来の統計だけでは追いにくくなったことです。人口統計や来訪者アンケートだけでは、「今どうなっているか」を把握しにくい場合があります。
第二に、リアルタイムに近い変化を捉えるニーズが増えたことが挙げられます。イベント、天候、キャンペーンなどの影響は短期間で表れます。変化を素早く把握できれば、当日の運用改善や、次回施策の精度向上につながります。第三に、位置情報データの精度が向上し、人の動きをより正確に捉えられるようになった点も大きな要因です。
以上の要因から活用領域が広がり、人流データは根拠ある意思決定や効果検証に使われるようになっています。施策の説明責任が求められる場面ほど、定量的な裏付けを用意できる価値は高まるでしょう。
人流データの種類
人流データは、用途に応じて大きく4つに分かれます。何を知りたいかによって必要なデータが変わるため、実務においては先に種類を整理しておくことが大切です。
たとえば「混雑を減らしたい」のに回遊データだけを見てしまうと、必要な示唆を取りこぼします。逆に「回遊を増やしたい」のに通行量だけを見ても、改善ポイントが見えにくいケースがあります。
ここからは、国土交通省の資料(※1)をもとに、人流データの種類を解説します。
(※1)参考:地域課題解決のための人流データ利活用の手引き 改訂版 v1.2 令和6年3月|国土交通省不動産・建設経済局情報活用推進課
カウントデータ(通行量)
カウントデータは、特定地点を通過した人数をカウントするデータです。人が多い場所の把握や通行量の増減比較に用います。
たとえば、商業施設の前面道路で通行量が増えているのか、曜日・時間帯で人の流れがどう変わるのかを把握できます。キャンペーン実施期間と通常期間を比較すれば、集客施策の影響を測る材料にもなるでしょう。
ただし、狭い道路や局所地点ではサンプルが不足しやすいケースがあります。通行量が少ない地点ほど、日によるブレが大きく見えることがあるため、評価期間の設定や、近隣地点とのあわせ見が必要です。
滞留データ(混雑・密度)
滞留データは、一定時間その場所に滞在している人数や密度を示すデータです。混雑対策やピーク時間を可視化したいときに用います。
たとえばイベント会場では、混雑が発生するエリアやピーク時間を特定できます。これにより、入退場動線の見直しや警備配置の最適化といった安全対策につなげやすくなるでしょう。観光地では、滞在時間の長いスポットを把握できるため、混雑分散の誘導施策や案内サインの設計に役立ちます。
注意点は、計測手段によって滞留判定の基準が異なる点です。たとえば「何分以上同じエリアにいたら滞留とみなすか」はデータ提供者の仕様により違います。比較する場合は、同一条件での比較かどうかを確認することが大切です。
ODデータ(流入元・流出先)
ODデータは、Origin(発地)からDestination(着地)への移動を捉えるデータです。来訪者がどこから来て、どこへ流れるかを分析するときに用います。
たとえば小売や飲食の分野では、来店客がどの地域から訪れているのかを分析することで、広告配信エリアの最適化や出店候補地の検討に役立ちます。交通分野においては、通勤・通学の移動パターンや交通結節点への流れを把握し、交通政策の立案に活用できます。
ただし、ODデータの粒度は提供者によって異なる点に注意しましょう。市区町村単位なのか、メッシュ単位なのかによって分析できる内容は変わるため、目的に応じたデータを選定する必要があります。
移動軌跡データ(回遊・ルート)
移動軌跡データは、移動の経路や回遊の流れを捉えるデータです。おもに、回遊行動や動線の分析を目的として活用されます。
たとえば観光地では、観光客がどのスポットをどの順番で巡っているのかを把握できます。立ち寄りやすいルートや、途中で離脱されやすいポイントが見えるため、回遊促進の施策や案内導線の改善につなげやすくなるでしょう。都市開発の分野においては、人の移動経路を分析することで、歩行者動線や施設配置の設計に活用できます。
注意点は、位置情報の取得頻度が低いと軌跡が粗くなることです。点と点の間が長いと、どの道を通ったかの推定が難しくなり、ルート分析の精度が落ちます。回遊・経路を扱う場合は、取得頻度や補正方法も確認しておきたいポイントです。
人流データの取得方法
人流データは、取得方法によって「精度」「取れる範囲」「属性の持ち方」が大きく変わります。実務では、目的に応じて取得手段を選ぶことが重要です。たとえば、施設内の混雑を見たいのか、広域の流入元を見たいのかで、適した取得方法は変わります。
【直接計測1】カメラ画像による人流データ
カメラ画像・動画から人を検知して、カウントや滞留データを作成する方法です。設置地点における人数の把握に強く、施設入口や通路など、観測したいポイントが明確な場合に適しています。年代・性別などを推定できるケースもあり、属性分析に活用されることもあります。
一方で、天候・夜間・逆光など、環境の影響を受けやすい点に注意が必要です。また、顔認識など個人識別に該当する運用を行う場合は個人情報としての扱いが必要になり、法務・運用設計のハードルが上がります。
【直接計測2】センサー(LiDARなど)による人流データ
LiDAR(ライダー:レーザー光を使って物体までの距離を測るセンサーのこと)などのセンサーで通過・滞留・移動方向を検知し、データ化する方法です。屋外・屋内の両方で利用でき、高精度でデータを計測できます。また、個人情報に触れにくい設計にしやすいのも特徴です。
ただし、対象は設置範囲内に限られます。死角や遮蔽物に弱い側面があるため、設置設計が重要です。広域の流入元把握よりも、特定空間の混雑把握や動線分析に向いています。
【デバイス由来1】基地局・GPS・スマートフォンアプリの位置情報
スマートフォンや端末の位置情報をもとに人流を推計する方法です。広域をカバーしやすく、ODや回遊など「移動の流れ」を扱いやすい点が強みです。商圏分析や観光回遊分析など、エリアをまたぐ分析に適しています。
一方で、屋内や地下では精度が落ちやすくなります。また、取得対象が特定アプリユーザーに偏る場合は、ユーザー構成の偏りを前提に解釈する必要があります。データ仕様や母数の安定性を確認し、分析結果を正しく捉えることが大切です。
【デバイス由来2】Wi-Fiパケットセンサー
スマートフォンが発するWi-Fi電波を受信して台数を推計する方法です。屋内でも比較的捉えやすく、施設内の混雑把握に向いています。設置地点の付近で「どれくらい人がいるか」を把握したい場合に利用されます。
ただし、Wi-FiがONの端末のみが対象であり、推計は端末設定の影響を受ける点は注意が必要です。継続的な追跡が難しくなる場合がある上、軌跡データは取得しづらく、基本的には設置地点ベースの分析になりやすい点も押さえておきましょう。
【デバイス由来3】Bluetoothビーコン
Bluetoothビーコンとは、小型の無線発信機のことです。Bluetoothの電波を使い、近くにあるスマートフォンなどの端末を検知します。屋内での計測に強く、設置箇所が明確なため、スポット単位での状況把握に向いています。
一方で、BluetoothがONであることに加え、対応アプリの利用が前提となるケースが多い点には注意が必要です。対象者が限定されやすいことを理解しておきましょう。
人流データ分析を成功させるポイント
人流データ分析の成否は、どのデータを選ぶかで大きく変わります。特に重要なのは、精度・母数・プライバシーの3点です。分析結果が実務で使える根拠になるよう、活用のポイントを押さえておきましょう。
精度の高いデータを集める
位置情報には、必ず誤差が生じます。特に、屋内・地下・ビルの陰などでは誤差が大きくなりやすく、誤差が蓄積すると「どの施設に行ったか」「どの道を通ったか」といった判断が正しくできなくなる場合があります。
そのため、実務で人流データを活用する場合は、「どの程度の誤差があるのか」「どのような補正が行われているのか」など、データの精度を事前に確認しましょう。
また、目的に応じて必要な精度を決め、精度が足りない場合は分析の範囲を調整することも重要です。
母数が十分なデータを確保する
人流データは、全ての人の動きを直接測っているわけではありません。実際には、取得できた一部のユーザーのデータをもとに、全体の動きを推計しています。
そのため、データの数が少ないと結果が不安定になりやすくなります。特に人の少ない場所や短い時間帯では、日によって大きく数字が変わることもあります。また、取得できるユーザーの属性に偏りがある場合、分析結果にも影響が出る可能性があります。
実務でデータを選ぶ際は、「どのくらい広い範囲をカバーしているか」「安定してデータが取得できているか」を確認するとよいでしょう。全国規模の比較をしたいのか、特定地域の傾向を見たいのかなど、目的に応じて必要なデータ量を見極めることが求められます。
プライバシーに配慮されたデータを選ぶ
人流データを扱う際には、プライバシーへの配慮が欠かせません。人の移動に関する情報は、扱い方によっては個人を特定できる可能性があるためです。
一般に、位置情報や人流データそのものは、単体では個人情報に該当しないとされています。しかし、特定の個人に関する位置情報が継続的に蓄積されるなどして、誰の行動かを識別できる状態になると、個人情報として扱われる可能性があります。
そのため、実務で人流データを活用する際は「個人がわからない形で提供されているか」を確認しましょう。たとえば、個人単位ではなく人数として集計されているか、少人数の場合は結果が表示されない仕組みになっているかといった点が判断基準になります。
まとめ
人流データ分析は、小売・観光・都市計画・交通など幅広い分野で、施策立案と効果測定に活用されています。一方で、人流データ分析の精度は、もとになる位置情報データの品質に大きく左右されます。人流データ分析を実務で活用するためには、広いカバー範囲、安定した更新、精度の高い位置推定、そして安心して扱えるデータでなければなりません。
こうした要件に応えるのが、Honda Drive Data Service(HDDS)です。HDDSは、日本全国を網羅するHonda車両の走行データを基盤としており、GPSに依存しない高精度な位置推定により安定したデータ品質を実現しています。リアルタイムで更新されるため、人や交通の変化をタイムリーに把握できる点も特徴です。
また、個人情報を含まない統計処理済みのデータとして提供されるため、行政や企業でも安心して活用できます。通行頻度や駐車頻度の把握に加え、来客インデックスなどビジネス判断に直結する指標として活用できることから、人流・交通の現状把握だけでなく、需要の変化を捉える分析にも役立ちます。
サービスの詳細や導入に関するご相談は、以下のURLよりお気軽にお問い合わせください。
このコラムの執筆者

- 増田真吾
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自動車ライター
自動車整備士・自動車検査員- 国産車ディーラー、ガソリンスタンド、車検工場で約15年間整備士として勤務
- 国内最大手の中古車買取販売会社本部にて保証判定部署に転職し、保証認否および提携工場からの技術相談業務に従事
- 40歳手前で自動車関連記事の執筆を開始しフリーランスとして独立
- 2022年に自動車関連企業やサービスをきっかけとして、WEB制作やSNS支援、YouTube制作を行う「株式会社グラフィカ・ワン」を設立
- 現在は複数のライターと主にチームとして記事執筆担当
- 大手カー用品店、レーシングチーム、eモータースポーツなど様々なプロジェクトに参画中