位置情報データとは?仕組み・取得方法・活用例から注意点まで徹底解説

位置情報データ
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位置情報データとは、人やモノ、車などが「いつ・どこにいたか」を示すデータです。近年はマーケティングだけでなく、観光政策、防災対策、都市計画、交通分析など幅広い分野で活用が進んでいます。

本記事では、位置情報データの仕組みや取得方法、活用例を詳しく解説します。実務に導入するときの注意点についても触れるため、参考にしてください。

目次

  • 位置情報データとは
    • 位置情報データの仕組み
    • 位置情報データの取得方法
    • 位置情報データから読み取れる情報
  • 位置情報データの活用方法
    • 小売・飲食|競合店舗からの流入分析や、来店検知によるクーポン配信
    • 観光・自治体|観光客の周遊ルート分析、イベント時の混雑緩和対策
    • 不動産・まちづくり|人流に基づく商業施設の賃料設定や土地開発
    • 防災・インフラ|災害時の帰宅困難者予測や道路の利用状況把握
  • 位置情報データを使うときの注意点
    • 目的に合った測位技術を選ぶ
    • 個人情報・プライバシーに配慮する
    • 精度・網羅性・更新頻度が十分なデータが求められる
  • まとめ

位置情報データとは

位置情報データとは、人・モノ・車などの存在位置を緯度・経度と時刻の組み合わせで記録したデータを指します。つまり、「いつ・どこにいたか」を客観的に示す情報です。

位置情報データは、マーケティング用途だけのものではありません。商圏分析や広告配信だけでなく、観光客の周遊分析、防災時の滞留把握、交通量分析、都市計画など、社会インフラ分野にも活用されています。

ただし、位置情報といっても取得方法や精度、カバー範囲、データの粒度は大きく異なります。まずはその仕組みから整理しましょう。

位置情報データの仕組み

位置情報データは「緯度・経度」と「時刻」の組み合わせで表されます。スマートフォンなどが位置を知るときに使う代表的な仕組みがGPSです。

GPSの仕組み
※出典:Canva

GPSでは、少なくとも4つの衛星から届く電波を使って現在地を計算します。衛星は正確な時計を搭載しており、端末は「電波が届くまでの時間」から衛星との距離を割り出します。

複数の衛星との距離情報を組み合わせて位置を特定しますが、スマートフォンなどの端末には原子時計のような高精度な時計は搭載されていません。そのため、端末側の時計にはわずかな誤差があります。

この誤差を補正するためにも、4つ以上の衛星を使うことで、「位置」と「時間のずれ」を同時に計算し、正確な測位が可能になります。

現在はGPSだけでなく、日本の準天頂衛星システム「みちびき(QZSS)」など複数の衛星測位システムを併用し、より安定した測位精度が実現されています。

位置情報データの取得方法

位置情報データの取得方法は複数あり、用途に応じて使い分けられています。代表的な手法には、GPS(衛星測位)、基地局測位、Wi-Fi測位、Bluetoothビーコンなどがあります。

位置情報データの様々な取得方法
※出典:Canva

GPS(衛星測位)

GPSは、上空の衛星から届く電波を使って位置を特定する方法です。屋外での測位に強く、広いエリアをカバーできます。一般的には数メートル程度の精度が出ることが多く、移動経路や広域の人流把握に向いています。

一方で、屋内や地下、ビルが密集した場所では衛星の電波が届きにくく、精度が低下したり取得できなかったりする場合があります。

基地局測位(携帯電話の電波)

基地局測位は、スマートフォンが接続している携帯電話の基地局の位置情報をもとに、現在地を推定する方法です。GPSのように衛星を直接使うわけではなく、「どの基地局と通信しているか」や「複数の基地局との電波強度」から位置を割り出します。屋内や地下でも取得しやすいのが特徴です。

ただし、基地局は広いエリアをカバーしているため、精度はGPSより粗くなりやすく、数十〜数百メートル単位になることもあります。市区町村単位や大まかなエリア分析には向いていますが、店舗レベルの分析には不向きなケースがあります。

Wi-Fi測位

Wi-Fi測位は、周囲にあるWi-Fiアクセスポイントの情報を使って位置を推定する方法です。端末が検知したWi-Fiの識別情報(SSIDやBSSID)と、あらかじめ登録されたWi-Fi位置データベースを照合することで、現在地を特定します。都市部や商業施設内ではWi-Fiが多く設置されているため、屋内測位に強いのが特徴です。

ただし、Wi-Fi環境が整っていない場所では利用できません。また、アクセスポイントの移動や廃止などにより、データベースが更新されていないと精度が落ちることもあります。

ビーコン(Bluetooth)

ビーコンは、Bluetoothを使って近距離で位置を検知する仕組みです。店舗や施設内に発信機を設置し、スマートフォンがその電波を受信することで、「その場所に来た」という情報を取得します。数メートル単位の細かな行動を把握したいときに向いています。

ただし、ビーコンは電波を発信するだけの装置であり、電波を検知してデータとして活用するには、スマートフォン側に専用アプリの組み込みが必要です。ビーコン機器の設置やアプリの開発管理が必要となるため、導入コストや運用負担が発生する点に注意しましょう。

位置情報データから読み取れる情報

位置情報データからは、人や車の動きのパターンが見えてきます。来訪、滞在、移動、回遊といった行動の流れを把握でき、エリア別の滞在人口や時間帯別の混雑状況、移動ルートの傾向などを可視化できます。また、競合店舗や観光地、イベント会場などとの流入・流出関係を分析することも可能です。

ただし、多くの位置情報データはサンプルに基づく推計であり、「表示人数=実人数」ではない点に注意しましょう。

位置情報データの活用方法

位置情報データの価値は、「客観的な根拠」を持てることです。この価値を生かし、さまざまな分野で活用されています。代表的な活用例を見ていきましょう。

小売・飲食|競合店舗からの流入分析や、来店検知によるクーポン配信

小売・飲食業界では、位置情報データを商圏分析や競合比較に役立てる動きが広がっています。どのエリアから来店しているのか、競合店舗を訪れた後に自店へ流入しているのかといった傾向を把握することで、出店判断や販促施策の改善につなげられます(※1)

さらに、ジオフェンスを組み合わせれば来店検知が可能になり、クーポン配信や広告効果の検証まで、施策の実行から効果検証、改善までを一連のデータで支えられます。

観光・自治体|観光客の周遊ルート分析、イベント時の混雑緩和対策

観光分野では、位置情報データをもとに来訪者の移動や滞在傾向を読み解く取り組みが進んでいます。どこから訪れ、どのルートを回遊し、どこで離脱しているのかを把握することで、周遊施策の改善や観光動線の設計に反映できます。

イベント開催時には混雑エリアやピーク時間帯を把握し、分散施策や誘導計画の検討にも役立ちます。政策や補助事業の効果検証においても、客観的な根拠として活用されています。

不動産・まちづくり|人流に基づく商業施設の賃料設定や土地開発

不動産やまちづくりの分野では、位置情報データが立地評価の裏付けとして用いられています。昼夜人口の差や休日の増減といった人流の変化を把握することで、商業施設のポテンシャルや賃料設定の妥当性を数字で判断できるようになります。

再開発エリアでは、整備前後の人の流れを比較し、事業効果の検証や次の施策づくりにも役立てられています。

防災・インフラ|災害時の帰宅困難者予測や道路の利用状況把握

防災分野では、位置情報データを用いた人の動向把握が進んでいます。災害発生時にどのエリアに人が滞留しやすいのか、どの方向へ移動が発生するかを推計することで、帰宅困難者への対応や避難導線の設計に役立てられます。

また、車両由来のデータを活用すれば道路の利用状況や通行傾向も把握でき、交通施策やインフラ整備の優先順位付けにも応用できます(※2)

位置情報データを使うときの注意点

位置情報データは便利ですが、取得手段や精度の前提を理解しないまま活用すると、誤った結論につながる可能性があります。プライバシーへの配慮が不十分な場合は、法的・社会的リスクを伴うこともあるでしょう。ここでは、実務導入時に特に注意すべきポイントを解説します。

目的に合った測位技術を選ぶ

位置情報データは、どの測位技術を用いているか、どのようなデータソースから取得しているかによって性質が大きく異なります。

たとえば、スマートフォンアプリ由来のデータは人の移動分析に強い一方、アプリ利用者に偏りが生じる可能性があります。車両走行データ由来であれば交通分析や道路利用状況の把握に適していますが、徒歩の動きは含まれません。また、施設内センサーやビーコン由来のデータは細かな滞在分析が可能ですが、設置エリアに限定されます。

同じ「位置情報データ」でも、取得方法が異なれば、得意とする分析領域や精度、カバー範囲は変わります。人流分析をしたいのか、来店検知をしたいのか、交通量を把握したいのか。目的を明確にした上で、測位手段とデータソースの両方を確認することが大切です。

個人情報・プライバシーに配慮する

位置情報は、個人の行動履歴や生活圏を推測できる情報であるため、取り扱いには十分な配慮が求められます。特定の個人を識別できる形での利用は原則として避け、統計化・匿名化されたデータを活用することが基本です。

また、取得時の同意の有無、利用目的の明確化、第三者提供の範囲など、法令やガイドラインへの適合も重要です。法的な適合に加え、社会的に受け入れられる運用設計であるかどうかも検討する必要があります。

精度・網羅性・更新頻度が十分なデータが求められる

位置情報データを意思決定に活用するには、まず用途に見合った精度が確保されているかを確認する必要があります。数メートル単位の分析が必要なのか、市区町村単位で十分なのかによって、求められる水準は変わります。

あわせて重要なのが、データの網羅性と更新頻度です。特定の地域や属性に偏ったデータでは全体像を正しく捉えられず、更新が遅ければ施策の検証やタイムリーな判断に活用しづらくなります。

精度・網羅性・更新頻度の3点を満たしているかどうかが、実務で使えるデータかを見極めるポイントになります。

まとめ

位置情報データは、人や車の動きを数字で捉えられるデータです。小売や観光、不動産、防災などさまざまな分野で活用が進んでいますが、どのデータでも同じように使えるわけではありません。取得方法や精度、更新頻度によって、できること・できないことは大きく変わります。また、プライバシーへの配慮も欠かせません。

実務で本当に使えるかどうかは、「どこまでカバーしているか」「どれくらいの精度か」「どのくらいの頻度で更新されるか」といった基本条件を満たしているかで決まります。

こうした条件を備え、全国規模で継続的に活用できるデータ基盤として注目されているのが、Honda Drive Data Service(HDDS)です。全国を走行するHonda車両のデータを基盤とし、GPSに依存しない高精度な位置推定や、準リアルタイムでの更新を実現しています。個人情報を含まないよう統計処理されたデータのため、行政や企業でも安心して活用できます。

位置情報データを安心して業務に生かしたい方は、ぜひご相談ください。

このコラムの執筆者

執筆者写真
増田真吾
自動車ライター
自動車整備士・自動車検査員
  • 国産車ディーラー、ガソリンスタンド、車検工場で約15年間整備士として勤務
  • 国内最大手の中古車買取販売会社本部にて保証判定部署に転職し、保証認否および提携工場からの技術相談業務に従事
  • 40歳手前で自動車関連記事の執筆を開始しフリーランスとして独立
  • 2022年に自動車関連企業やサービスをきっかけとして、WEB制作やSNS支援、YouTube制作を行う「株式会社グラフィカ・ワン」を設立
  • 現在は複数のライターと主にチームとして記事執筆担当
  • 大手カー用品店、レーシングチーム、eモータースポーツなど様々なプロジェクトに参画中