プローブデータとは?仕組み・取得できる情報・活用例まで業務視点でわかりやすく解説
近年、交通量の把握や渋滞対策、道路整備などの分野において、「プローブデータ」の活用が進んでいます。従来の調査手法の代替または補完する目的で注目されていますが、具体的にどのような仕組みで取得され、業務においてどう活用できるのかまで把握しきれていない人も多くいます。
この記事では、プローブデータの基本的な仕組みから、実際に取得できる情報の種類、そして自治体や企業での具体的な活用例について、業務視点でわかりやすく解説します。プローブデータを活用するメリットや、導入時に検討すべきポイントについても触れているため、ぜひ参考にしてください。
目次
- プローブデータとは
- プローブデータの仕組み
- プローブデータで取得できる情報
- プローブデータが注目されている背景
- プローブデータとして収集するデータ
- リアルタイムプローブで取得されるデータ例
- 蓄積型プローブで取得されるデータ例
- 走行履歴データ
- オートパーキングメモリーデータ
- 地点データ
- 燃費管理データ
- 通信履歴データ
- プローブデータの活用例
- 道路交通の最適化
- 物流・配送業務の効率化
- 都市計画・エリア開発
- 生活道路の交通安全対策
- まとめ
プローブデータとは
プローブデータとは、自動車やスマートフォンなどの端末を、移動するセンサー(プローブ)として捉え、その走行履歴や移動情報を収集・蓄積したデータのことです。
従来の交通調査では、特定の地点で人手や機器を用いて定点観測を行います。一方、プローブデータは、実際に走行している車両や端末から得られるデータを活用するため、広範囲かつ詳細な交通状況を把握できるのが特徴です。具体的には、いつ・どの場所を・どのくらいの速度で移動したかといった情報が含まれており、これらを分析することで、道路の混雑状況や通行実績、危険箇所の特定などが可能になります。机上の推計ではなく、実態に基づくデータを取得できるため、より精度の高い分析や計画立案に役立ちます。
プローブデータの仕組み
※出典:フキダシデザイン
※出典:icooon mono
※出典:PIXTA
プローブデータは次の流れで収集・処理されます。
- データの取得:GPS機能を搭載したカーナビゲーションシステムやスマートフォン、ETC2.0車載器などから、位置情報(緯度・経度)、時刻、速度などのデータが取得されます。
- データの送信:取得されたデータは、通信ネットワークを通じてデータセンター(サーバー)に送信・蓄積されます。
- データの加工・分析:集められた膨大なデータは、個人の特定につながらないよう、統計処理や匿名化などが行われます。そのうえで、交通情報や分析用データとして加工されます。
このように、個々の車両や端末から得られるデータを集合知として扱うことで、社会全体の交通流動を可視化する仕組みになっています。
プローブデータで取得できる情報
プローブデータからは、多岐にわたる情報が取得できます。おもに以下の情報が挙げられます。
- 基本的な移動情報:走行位置、走行速度、走行時刻、走行方向など
- 車両挙動に関する情報:急ブレーキ、急加速、急ハンドルなどの運転操作
- 行動傾向に関する情報:通行ルート、滞在時間、立ち寄り地点、迂回行動など
- 道路環境に関する情報:ワイパーの稼働状況(降雨の有無など)、ABSの作動状況(スリップ・急制動などの可能性)
これらの情報を組み合わせることで、単なる交通量だけでなく、「どの道路が、いつ、どのように使われているか」という道路利用の実態を詳細に分析することが可能です。
プローブデータが注目されている背景
近年、プローブデータの活用が急速に進んでいる背景には、いくつかの要因があります。まず、従来の「道路交通センサス(全国道路・街路交通情勢調査)」などの人手による調査や、感知器による定点観測だけでは、複雑化する交通課題に対応しきれなくなっている点が挙げられます。調査員不足やコストの問題に加え、特定の時期や地点に限られたデータしか得られないという課題がありました。
一方、通信技術の発展やETC2.0の普及により、走行車両から直接データを収集する基盤ができました。その結果、時間や場所を問わず、連続的かつ広範囲なデータを効率的に収集できるようになったのです。
また、国や自治体が主導する交通政策や防災計画において、客観的なデータに基づく意思決定(EBPM:Evidence-Based Policy Making)が求められるようになったことも、プローブデータへの注目度を高めています。民間企業が提供する高品質なプローブデータも充実してきており、官公庁だけでなく、物流やエリアマーケティングなど幅広い分野での利用が広がっています。
プローブデータとして収集するデータ
プローブデータと一口にいっても、その性質によって「リアルタイム型」と「蓄積型」の2つに大きく分類され、それぞれ取得できるデータの種類や活用目的が異なります。
リアルタイムプローブで取得されるデータ例
リアルタイムプローブは、走行中の車両から随時送信されるデータです。即時性が高く、交通状況の把握に適しています。おもに通信機能を持つカーナビゲーションシステムなどから収集され、VICS(道路交通情報通信システム)などの交通情報サービスを通じて、ドライバーに渋滞情報や所要時間を提供するために活用されます。取得される情報は以下の5種類が一般的です。
- 所要時間
- 平均速度
- 車両の位置情報
- 走行速度
- センサーの状態
リアルタイム性を重視するため、データ容量を抑えたシンプルな項目が中心となります。
蓄積型プローブで取得されるデータ例
蓄積型プローブは、車両内に一時的に記録された走行データを、一定のタイミングでまとめてサーバーに送信するタイプです。または、リアルタイムデータを蓄積・保存したものを指す場合もあります。過去の走行履歴を詳細に分析するのに適しています。
交通量調査や道路計画の策定、安全対策の検討など、深い分析が必要な業務においては、この蓄積型プローブデータが主として利用されます。取得できるデータは多岐にわたり、詳細な項目が含まれます。
走行履歴データ
いつ、どのルートを、どれくらいの速度で走行したかという基本的な履歴情報です。これに加えて、前後・左右の加速度(Gセンサー)データを組み合わせることで、車両の挙動も把握できます。多数の車両データを重ね合わせることで、道路ごとの平均速度や混雑度を可視化できます。
オートパーキングメモリーデータ
車両が駐車場として認識・利用した場所の位置情報や、進入方向などの記録です。実際に利用された駐車場のデータであるため、施設やエリアへの来訪実態を把握するのに役立ちます。
地点データ
カーナビで目的地として設定された地点や、立ち寄った地点の履歴情報です。実際に人が訪れた可能性が高い場所を特定できるため、観光地分析や商圏分析などに応用されます。
設定・利用データ
カーナビや車載機器の各種設定情報や、機能の利用履歴です。どのような機能が頻繁に使われているか、どのような設定で走行しているかといった、ドライバーの利用傾向を把握する手がかりとなります。
燃費管理データ
走行距離や走行状況に基づく燃費情報です。エコドライブの推進や、車両のメンテナンス管理、環境負荷の低減に向けた分析に活用されます。
通信履歴データ
車載器によるコンテンツ取得や通信利用の履歴です。通信インフラの利用状況把握や、コネクテッドサービスの品質向上などに役立てられます。
プローブデータの活用例
プローブデータは、その特性を活かしてさまざまな分野で実用化されています。ここでは、業務視点での主要な活用例を紹介します。
道路交通の最適化
最も代表的な活用例は、渋滞対策や道路整備への応用です。プローブデータを用いることで、渋滞が発生している具体的な箇所や時間帯、その要因を詳細に特定できます。
たとえば、特定の交差点での右折待ち車両が渋滞の原因であることがわかれば、右折レーンの延伸や信号サイクルの調整といった具体的な対策を立案できます。また、対策実施後の効果検証も、同じ指標で行うことができます。
物流・配送業務の効率化
物流業界では、配送ルートの最適化に活用されています。過去の走行実績データから、時間帯ごとの正確な所要時間を算出し、より効率的な配送計画を作成します。渋滞を回避するルートを選択することで、配送時間の短縮や燃料コストの削減、ドライバーの労働時間短縮にもつながります。
防災・災害時の避難誘導
災害発生時には、通行可能な道路の把握に役立ちます。災害直後に車両が通行した実績(通れた道マップなど)を可視化することで、緊急車両のルート選定や、支援物資の輸送計画、住民への避難ルート案内に活用されます。リアルタイムに近いデータを用いることで、刻々と変化する状況に柔軟に対応できます。
都市計画・エリア開発
まちづくりや都市計画の分野でも重要性が増しています。新しい道路が開通したことによる交通流の変化や、商業施設の開業に伴う人の流れの変化を分析します。また、観光地においては、観光客の周遊ルートや滞在時間を把握し、観光振興策の立案に役立てる事例もあります。
生活道路の交通安全対策
事故の未然防止にも貢献しています。急ブレーキ(急減速)が多発している地点を「ヒヤリハット箇所」として特定し、事故が起きる前に路面標示や看板設置などの対策を講じることができます。人身事故データだけでは見えてこない、潜在的な危険箇所をあぶり出せるのが強みです。
まとめ
本記事では、プローブデータの仕組みから取得できる情報、具体的な活用例までを解説しました。
プローブデータは、車両や端末の移動履歴をもとに、交通量、移動速度、通行傾向、道路の使われ方などを、実態に近い形で把握できる有用なデータです。渋滞対策、道路整備、都市計画、防災・減災といったインフラ・交通分野を中心に、その活用はますます広がっています。
一方で、業務でプローブデータを活用する際には、データの質を見極めることが重要です。判断に使えるデータとして活用するためには、以下の条件を満たしているかを確認する必要があります。
- 全国規模で安定したデータ量が確保されていること(母数・網羅性)
- 道路単位・時間帯単位で分析できる精度を備えていること
- 継続的に、リアルタイムに近い頻度で更新されていること
- 特定の利用者や車両に偏らないデータ構成であること
- 個人情報の取り扱いに配慮した形で、安全に利用できること
こうした要件を満たすプローブデータ基盤として、近年注目されているのがHonda Drive Data Service(HDDS)です。
HDDSは、日本全国を走行するHonda車のプローブデータを活用したサービスです。GPSだけでなく車載センサー情報を用いて補正された高精度な位置情報と、大規模なデータ量(母数)を備えています。統計処理されたデータのみを扱うため、プライバシーリスクを抑えつつ、通行頻度や走行傾向を道路単位で詳細に把握することが可能です。
業務でのデータ活用をご検討の際は、ぜひ一度お問い合わせください。
このコラムの執筆者

- 佐藤耕一
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自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。のちライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、SDV・EV関連動向を中心に取材・執筆・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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