IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

カイルール・イダム・パウィ

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー 尾野弘樹

充実したデビューイヤーを終え、新たな挑戦へ

Moto3クラスのルーキー、Honda Team Asiaのカイルール・イダム・パウィは、最終戦のバレンシアGPを25位で締めくくりました。世界選手権への参戦は初めてでしたが、第2戦アルゼンチンGPで優勝を飾り、第9戦ドイツGPで2勝目を挙げたパウィは、ルーキーでありながら大きな注目を集めました。特に後半戦は、世界中から本人の経験以上に多くの期待が寄せられることにもなりました。しかし、実際の彼はグランプリの世界に足を踏み込んだばかりの18歳。パウィにとって、今年はなにもかもが初体験の連続でした。そんな彼にとって、今回の第18戦は、高いポテンシャルを持つデビューイヤーのライダーが世界レベルの試練と洗礼を受ける、典型的で総決算のレースとなりました。

最終戦バレンシアGP  会場:バレンシア・サーキット
予選:25番手  決勝:25位

金曜日の走行は、2回のフリープラクティスを終えてトップタイムから1.799秒差の32番手。バレンシア・サーキットは、全長4.005kmの比較的短いコースなので、選手たちのラップタイムは接近する傾向にあり、ほんのわずかの差でも順位は大きく開いてしまいます。しかも、ラインの自由度が小さく抜きどころの少ないレイアウトなので、ルーキーライダーにとっては難易度の高いサーキットと言えるでしょう。

セッションごとに少しずつコース攻略を進めたパウィは、土曜午後の予選で前日から1.2秒のタイムアップに成功しました。ポールポジションとのタイム差は0.902秒ですが、グリッドポジションは25番手。この事実からも、いかに選手たちのタイムが接近しているかということがよく分かります。

「昨日の走行では低速コーナーに課題を抱えていて、今日の午前中もその部分で苦労をしたのですが、午後になって問題は解決しました」と予選を終えたパウィは、穏やかな表情で語りました。

「フロントもリアも問題はほとんど解決したのですが、予選最後のピットアウトでフロントに微妙な挙動があり、限界だと思ったので、それ以上は無理にプッシュをしませんでした。この部分は、明日のウォームアップで改善したいと思います。レースシミュレーションに関しては、ユーズドタイヤでたくさん周回したところ、ラップタイムは安定しているので、心配はしていません。トップからは0.9秒差ですが、25番グリッドからのスタートなので、明日のレースではがんばってたくさんの選手をオーバーテイクし、ポイント圏内でフィニッシュしたいと思います」

カイルール・イダム・パウィ

日曜日の午前11時にスタートした決勝レースは、全24周で争われました。選手たちのタイムが接近し、抜きどころが少ないという2つの条件をクリアすることは、世界選手権ルーキーのパウィにとって、やはり簡単なものではありませんでした。

レース序盤から集団の中で激しい争いを繰り広げ、全周回の半ばを過ぎた16周目には、トップグループに匹敵するラップタイムでレース中の自己ベストタイムもマークしましたが、最後は25位でのゴールになりました。

カイルール・イダム・パウィ

レースを終えたパウィは、24周の戦いをこのように振り返りました。

「ラップタイムは悪くなかったし、上位陣と同じようなタイムで走ることもできましたが、後方からのスタートだったので、今日は追い上げていくことが難しかったです。でも、シーズン最後のレースをしっかりと完走することができました。この一年間、このチームで走ることができて、とても楽しかったです。自分にとって初体験の世界選手権という場で、多くのことを学べました。いいレースがあった一方で、結果を得られないレースもあったので、チームと岡田監督には感謝もしているし、申し訳ない気持ちもあります。この一年間、ルーキーの僕を支えてくれたスポンサーやファンの皆さん、家族、すべての方々にお礼を言いたいと思います。来年は、さらに高いレベルを目指して新しい挑戦を開始します。気持ちを引きしめてたくさんのことを吸収し、勉強をしたいと思います」