IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶 ラタパーク・ウィライロー カイルール・イダム・パウィ

予選でみせた力強い走り。厳しい決勝となるも、すでに来期を見据える

Honda Team Asiaの尾野弘樹にとって、2016年最終戦のバレンシアGPは、持ち味である闘志に満ちた速さを予選で存分に発揮できた反面、それをレース結果に結びつけられない悔しいリザルトになり、悲喜こもごものレースウイークになりました。

最終戦バレンシアGP  会場:バレンシア・サーキット
予選:3番手  決勝:21位

バレンシア・サーキットはシーズン開幕前にテストを実施し、CEVレプソルインターナショナル選手権時代から走行経験のあるコースですが、「実はこのサーキットはあまり好きではないです」と、尾野は吐露します。それでも、昨年のレースでは、バレンシアGPでシーズンベストリザルトを残しています。

今年も、金曜日のFP1とFP2は目覚ましい順位ではなかったものの「初日はトップと0.9秒差で、思っていたよりも少し遅れてしまいましたが、アベレージタイムは悪くなく、マシンの状態も自分の状態もいいので、まだまだ上位を狙っていけそうです」と話した通り、決して悪い走りではありませんでした。土曜日午後の予選では、ポールポジションから0.122秒というごくわずかの差で3番グリッドを獲得しました。「シングルポジションで終えた手応えはあったのですが、3番手だとは思っていませんでした」と、尾野は自己ベストラップを記録した際の走りを笑顔で振り返りました。

尾野弘樹

「予選が終わったクールダウンラップで、コースサイドのビッグスクリーンを見て自分のポジションを探すと、思っていたよりも上の方に自分の名前がありました。第15戦日本GPでトップタイムを記録したときよりも、今回の方がうれしさは大きいですね。もともとここは得意なコースではなかったのですが、そのサーキットでしっかりといいタイムを出せたことで、苦手意識を振り払えました。予選で使ったタイヤよりも、決勝レースで使うタイヤの方がいいフィーリングなので、明日のレースは心配していません」

しかし、日曜日の午前11時に始まった決勝レースは、予想外に厳しい結果になってしまいました。尾野はスタートを決めてホールショットを奪ったものの、そこからペースを上げられずにポジションを落としていき、最後は21位でチェッカー。転倒せずにマシンをゴールまで運ぶことが精一杯の状態でした。

尾野弘樹

「フロントが進入で切れ込んで、序盤から全くペースを上げられませんでした。それに尽きます……」

悔しい思いを言葉にできないもどかしさが、表情に滲み出ていました。「今朝のウォームアップでは、サスペンションのセッティングを硬くする方向に振ったのですが、あまりグリップを得られなかったので、決勝では予選の状態に戻しました。決勝レースでは気温も路面温度も上昇して、ブレーキをハードにかけようと思うとフロントが切れこんでしまい、どうしようもありませんでした。今朝のウォームアップでラップタイムを安定させられなかったことが、結果的にはレースの敗因です」

今シーズンの尾野は、数字というかたちで好リザルトを残すことこそできませんでしたが、第15戦日本GPの予選や決勝、そして今回の予選など、高いポテンシャルを発揮して何度も強い印象を与え、記憶に残るパフォーマンスを披露してきました。それでも尾野自身は「一年を通して、苦しいレースの多いシーズンでした」と振り返ります。

尾野弘樹

「もう少し気持ちよく、自分の思い通りにレースができていれば、という思いもありますが、逆に苦しいシーズンだったからこそ、たくさんのことを学べたと思います。その点では、自分にとってプラスになることの多い一年でした」

尾野弘樹

今年の経験をさらに自分を高める糧にして、尾野弘樹は2017年もたゆまぬ努力と挑戦を続けます。