ツインリンクもてぎで世界を目撃しよう!

Section1 自然と闘うトライアルは魅力満載

小川友幸選手

解説:小川友幸選手 1976年生まれ。幼いころから自転車トライアル(BTR)を始め、1990年に世界チャンピオン(ミニメットクラス)に輝く。その後、バイクトライアルに転向し、91年に国内A級、92年に国際B級でチャンピオンを獲得。国際A級に昇格した93年は、当時の全日本に参戦していたパスカル・クトゥリエ選手に続くランキング2位となり、日本人ライダーの頂点に立つ。
95年から世界選手権に参戦し、翌年のイタリア大会で4位入賞。97年から再び全日本選手権に活動の場を移し、2007年にはHonda RTL250Fで全日本チャンピオンを獲得。昨年も世界選手権日本GPには参戦。
ほかにも、トライアルスクール、デモンストレーションなどを精力的にこなしており、日本のトライアルを代表するトップライダーの一人として活躍中。また、04年の世界選手権日本GPには開発中の「Honda RTL250F」によるテスト参戦で9位入賞、06年にはHonda RTL250Fの全日本選手権初優勝を実現するなど、Honda RTL250Fの開発ライダーも務めた。

トライアルは、普通ならバイクが走ることができない地形を乗り越えながら、その技術を減点方式で競い合うレースだ。通常のレースのように、相手と直接的にスピードを競うわけではないので、自然の地形を相手にする技術と、それを支えるフィジカルとメンタルの要素がより重要である。

この点で、見た目のすごさや派手さの裏側で、選手には非常に高いメンタル能力が求められる。トライアルは、ゴルフや走り幅跳びなどの陸上競技、体操などと同じように“自分との戦い”であり、成功しても失敗しても、すべて自分の責任なのだ。だからこそ、ほかの競技に比べて、競技中に選手同士が意外なほど和やかにしているのもトライアルの特徴だ。

小川友幸選手「難しいと思うのは、ほかの競技のように、スタートでMAXにしたテンションを、そのまま維持し続けることができないことです。ツインリンクもてぎでいえば、12のセクションがあって、それを3ラップするわけですから、36回のトライを繰り返すことになります。そのたびにテンションを上げる必要があるので、メンタル面が激しく上下するスポーツだと思います。

この点でもゴルフに似ていて、観客は好きな選手に付いていって、プレーを見てまわる点も同じですし、それと同時に、選手はたくさんの人々に見られている中で競技を繰り返す点も同じですね。

普段からメンタルトレーニングを積んでいるライダーも少なくありませんが、自分の精神状態が、今どのレベルにあるのかという認識とその調整をできる者が有利になるのです。

つまり、大会は普段の100%の力では勝てないもので、試合の緊張感という+αがあって120%、140%の力になるのだとすれば、自分が今80%にいるのか、120%にいるのかを把握して、それを必要なレベルまで調整できるようなライダーが勝つのだと思います。

そのくらい集中できるようになれば、周りがいくら騒いでいても、なにも聞こえませんし、コースの中に自分の行くべきラインが見えてくる感じがします。そういう試合は必ずといっていいほど勝てるものです」

小川選手も実際に大学教授のもとでメンタルトレーニングを行ってきた経験があるが、それは競技を通じて自分自身が経験した気づきや経験の再確認だったという。重要なことはメンタルトレーニングをしたから強くなるのではなく、“自分はそれをやった”という自信が強さにつながるということだ。これはフィジカル面やライディング面でのトレーニングでも同じで、“ここまでやった”という反復的な経験と確信が技術を裏付けていくという。

小川友幸選手「まずフィジカル面があり、あくまでもメンタル面は補足。頭で考えても身体は動かない。本能で動いて、それをメンタルでコントロールしていく。だから安定して成績を出すことは容易ではないのです。トライアルの本当の難しさはそこにあると思います」

そして、トライアル世界選手権の開幕戦となるツインリンクもてぎの日本GPでは、このメンタルの戦いを一層厳しいものとする条件が突きつけられることになった。今年は、これまでにないサバイバルな競い合いが展開されることになるはずだ。

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