MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2002年10月号


OPINION


 第6回セーフティジャパンインストラクター競技大会で、「安全であり続けるためのスキルとは」を講演した広島国際大学の小川和久さんは、長く危険予測、危険認知の研究をしてきました。その小川さんが「危険を予期する認知過程は、ドライバーの動機づけの下位に属する」と述べた論文に出会ったのは今から5〜6年前のこと。
 「運転技術があり、頭の中で危険を認知しても、仲間からの賞賛、かっこよさの顕示、時間的プレッシャーなど自分の感情をコントロールできなければ、危険行動を起こしてしまう。私自身、果たして危険予測だけで事故は防げるのかという疑問を抱いていた頃だっただけに衝撃的でした」。
 この自分自身をコントロールする「セルフコントロール」の訓練の必要性は昔から言われていました。しかし、方法論がありません。小川さんは、方法論やプログラムを開発する前に、ある調査を行ないました。
 
冷静な自己評価が行動変容を生む

ph
「第6回セーフティジャパンインストラクター競技大会」での安全講話の模様。
 その調査とは、さまざまな年齢層を対象にいろいろな運転場面における心理と行動について質問したものです。その結果、怒りや焦りといった要因がスピード超過などの違反行動として表れる。特に若者に顕著なことがわかりました。こうした客観的な資料をセルフコントロールの訓練に活用できないか。そこで参考になったのが、フィンランドで教育効果が見出されているミラーリング法です。
 ミラーリング法とは、指導者が提示する客観的な事例や材料をもとに、ディスカッションなどを通じて受講者が主体的に考える教育のこと。「結論だけを一方的に押しつける教育は、受講者の意志を無視し、考え方や行動の選択肢を減らすことになる。納得できない受講者は反発したり、逆方向の行動をとりかねません。そこで、客観的資料をもとに、冷静に自己評価することで、自分を見る目が厳しくなる。これまでの過信や行動を見つめ直す、いわゆる自己理解が生じるのです。こうした心の動きをねらいとする手法がセルフコントロールの訓練にも応用できるのではと考えたのです」。
 
 今号では、小川さんが力を注いでいる小学生対象の交通安全教育についてもご紹介します。


このページのトップに戻る目次へ

 

 
  安全運転普及活動コンテンツINDEX