MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2002年10月号

特集

 第6回を迎えたセーフティジャパンインストラクター競技大会は、国内インストラクター98名に加え、過去最高の8カ国16名の海外選手が参加、最大規模の大会となりました。この競技大会に参加した海外インストラクターの思い、また、各国における交通安全活動の展開状況などを紹介します。

インド (ヒーローHonda)
二輪販売店店頭から広がる安全活動

写真上/二輪販売店のセーフティコーナー 写真下/安全運転講習会の様子(ともにインド)
 ヒーローHonda(本社・ニューデリー市)では、「4S」(セールス、サービス、スぺアパーツ、セーフティ)と名づけた販売とタイアップした安全運転普及活動を導入。1999年から始めて、61カ所の二輪販売店ですでに展開。99年10月からは、交通警察、運輸局との連繋も開始しました。
 その具体的な活動の一つが二輪販売店内に設置されている「セーフティコーナー」です。ビデオや本などを使って安全アドバイスを実施しています。興味を持って頂いたお客様には実技講習会をご案内。このプログラムに昨年は5000人近いお客様が参加しました。
 二輪車事故は、昨年報告されただけで40万件。多いのは歩行者と二輪車の事故。自転車と二輪車の事故も多く、昨年は交通事故でおよそ7万6000人が亡くなっています。こうした中で、ヒーローHondaは二輪メーカーとしてインド国内で唯一、安全運転普及活動に取り組んでいます。同社のブリジモハン・ラル会長は「マーケットリーダーであるメーカーは、バイクを売るだけでなく、社会的な義務がある。安全教育がその1つだ」と語っています。

タイ (A.P.Honda)
伝えていきたいのは「セーフティマインド」

写真上/二輪パイロンスラローム
写真下/四輪縦列駐車・車庫入れ
 A.P.Hondaは、1999年から2001年まで2年かけて、タイ国内のバイクの事故分析をチュラロンコン大学と共同で実施しました。それによると、死亡事故原因の7割近くが飲酒運転と、飲酒運転が最も深刻な問題になっています。
 そこでA.P.Hondaは昨年9月から今年5月まで、警察、運輸局、厚生省や他の二輪車メーカーとともに、パイロット事業として飲酒運転撲滅キャンペーンを実施しました。その結果、前年同時期と比べて、負傷者が17%減少(528人減)、死亡者は38%減少(26人減)となりました。これを受け、アラック・ポンプラパー安全運転普及本部事務局長は、大都市でも、改めて飲酒運転撲滅キャンペーンに取り組みたいといいます。
 A.P.Hondaが力を入れているもう一つの活動は、学校の先生を安全運転インストラクターとして養成する事業です。事故分析調査と同じくA.P.Hondaの調査から、バンコク首都圏で88%、地方でも76%の人が二輪車運転について正式な教育を受けたことがなく、自己流で運転していることが事故発生の大きな要因の1つということが判明しました。
 養成事業はまず文部省とタイアップして、A.P.Hondaの周辺の学校を対象に、パイロット事業として2001年にスタートさせました。アラックさんは「養成研修で強調しているのは、命を守るのはテクニックよりセーフティマインドであるということ。それを広く伝えていきたい」と、力強く語っています。

シンガポール
アジアでの安全運転普及活動の中枢として活躍

写真上/四輪フィギア
写真下/二輪競技に臨む海外選手
 シンガポールは、1985年にHondaが同国初の教習所、シンガポール・セーフティ・ドライビング・センター(SSDC)を開設。現在は2番目に開設した教習所、ブキ・バト・ドライビング・センター(BBDC)とともに、Hondaの安全運転普及活動の中枢として、さまざまな活動を活発に展開しています。

●SSDC
海外での企業研修も先駆的な取り組みにチャレンジ

 今年7月、教習にドライビングシミュレーターを導入しました。シンガポールにはAT車の教習がありません。一方、販売台数の8割以上がAT車といわれており、ほとんどのドライバーがAT車の操作を知らない状態で運転を始めていることになります。そこでSSDCでは、教習の一貫としてシミュレーターを使ってAT車の操作方法を指導、今後は路上で体験できない危険予測の訓練も導入していきたいそうです。
 海外研修・指導活動では、中国の交通警察の研修を昨年6月からスタートさせました。また、インドへインストラクターを派遣して、企業の二輪安全運転指導者養成講習を2度実施しました。この他にもマレーシア交通警察、Hondaアトラス・カーズ・パキスタンのインストラクター養成研修など幅広い教育を行なっています。
 もう1つ警察などで検討されているのが二輪の高速道路教習。すでにSSDCでは、将来を見据えて卒業生に対し、無料で高速道路トレーニングを行なっています。教育課長のジェームス・リャウさんによると、シンガポールでは今、若いライダーの事故が問題になっているので、BBDCとともに交通警察に協力して、交通状況や交通法規の改善策を検討しているそうです。

●BBDC
セーフティコーディネーター研修を実施


 シンガポールの四輪販売会社の営業、サービススタッフを対象に、お客様に対する納車時の店頭指導を行なう「セーフティコーディネーター」の講習会を海外として初めて行ないました。シンガポールでもABSやエアバッグの普及率が高まり、お客様が安全に高い関心をもつようになってきたという声が、販売店からも出てきたことが背景にあるといいます。
 地域の安全教育活動では、小学校を中心に「ロードセーフティトーク」を今年8月までに17回行なっています。プログラムは交通警察が作成、BBDCはその手伝いをしました。教材をマンガにしてスクリーンに映して説明し、最終的にクイズ形式で子どもたちと対話するもので、子どもたちは、積極的にクイズに参加するなど反応がよいそうです。また、図書館で年8回、中学校で年7回の安全講話も実施しています。

 今号では、「第6回セーフティジャパンインストラクター競技大会」の模様、および海外選手のコメントなどを紹介しています。

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