MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2002年8月号

子どもたちへの交通安全教育の広がり

 Hondaでは小学生への交通安全教育プログラム「あやとりぃ」の授業をはじめ、地域の学校と連携した交通教育センターでの参加体験型教育「交通安全教室」、「親子でバイクを楽しむ会」など、子どもを対象としたさまざまな活動を行なっています。Hondaが提案する子どもたちへの交通安全教育の方向性についてご紹介します。
 
[茂木町交通安全教室]
アクティブセーフティトレーニングパークもてぎ
手づくりのクルマで知るルール・感動
小学生対象のコンポーネンツカーを使った交通安全教室。7月1日は茂木町立茂木小学校の小学6年生が参加しました。
 栃木県茂木町では、アクティブセーフティトレーニングパークもてぎ(以下ASTP)で、町内すべての小・中学校の小学4年生から中学3年生を対象に「茂木町交通安全教室」を実施しています。同町教育委員会学校教育課課長の馬籠伸さんは、「小さい頃から体系的に交通安全を学んで知識を得ることが大事という考えに基づいて、中学生を対象に自転車教室などを実施していましたが、1996年にASTPができたのを契機に、翌年からASTPを『交通安全発信基地』と位置づけ交通安全教室を行なっています」。カリキュラムはASTPと協議を重ねて決めています。「楽しみながら交通安全を学び、事故にあわないための行動や、事故にあったときの対策について体験しています」と、同じく学校教育課の河又一郎さん。
 この交通安全教室の特徴は、「コンポーネンツカー(組立式の電動カート)を使った講習は子どもたちに人気」(小学校教諭)という感想のように、子どもたちに興味を持たせる工夫と、「シートベルトをしないときの急ブレーキ体験によって、シートベルトの必要性を肌で感じていた。家族にも呼びかけると心強い決意を述べる子も」(中学校教諭)といった発言にあるように、体験を重視する実践的な教育の組み合わせにあるようです。
 馬籠さんは、「今後も時代の変化に応じたカリキュラムをASTPと一緒に作り出して、充実させたい。小中学生のうちから危険を安全に体験し、自分で身を守ることの大切さを知って、事故防止のための知識を得ることはその後の安全意識や行動に大きく影響します。また、子どもたちは学校などで起きたことを家庭で話しているので、この体験や知識を家庭から地域へと広く普及させていきたい」と、抱負を語ります。

[親子でバイクを楽しむ会]
鈴鹿サーキット交通教育センター
挑戦を繰り返し、いつのまにか大きくなる
ミニトライアル(オフロード走行)。坂道のアップダウンの練習をします。
 「親子でバイクを楽しむ会」は、お父さん、お母さんが先生になって一緒に体験しながら、バイクの操作方法、楽しさ、ルールやマナーの大切さを親から子へ教えていくスクールです。1995年に交通教育センターレインボー〈埼玉〉で始まり、今では(※)全国6カ所の会場で展開しています。バイクの正しい乗り方を楽しみながら体験する「ファーストステージ(基本編)」、バイクの特性を理解することで安全マインドを育成する「セカンドステージ(応用編)」、課題にチャレンジすることでバイクをさらに楽しむ「サードステージ(総合編)」の3つのクラスで構成されています。
 7月6日(土)、鈴鹿サーキット交通教育センターで開催された「親子でバイクを楽しむ会 サードステージ」には8組の親子が参加しました。
 小学5年生の邊見(へんみ)詩帆さんは、京都から父親の均さんと参加しました。1年生のときから参加しているそうです。
「子どもたちにはバイクを操ることの難しさを体験させておきたかった。将来、バイクの免許を取らなくても、このカリキュラムを体験していることが、きっと役に立つと思うんですよ。親がバイクに乗っているので、子どもたちにも『本物』を見せてあげたかった。詩帆にはいつも『思いっきりやれ』と言っています」と均さん。
 滋賀県から小学5年生の崎山亜鈴士(あれじ)君と参加した父親の明生さんは息子の成長に目を見張ります。「亜鈴士が1年生の夏、フォーミュラーニッポンを観に来た時、この会のパンフレットを見て以来、毎月のように参加しています。ファーストステージのときは大きい石につまずいたり。でも次第に自分で考えて走るようになって、ブレーキングコントロールの能力が身についてきました。今、注意しているのは発進のときに周囲を必ず確認しなさいということ。いつか免許を取ったときも、これは基本中の基本ですから。子どもたちとのかけがえのない時間、それが大切です」と話します。

(※)アクティブセーフティトレーニングパークもてぎ、交通教育センターレインボー〈埼玉・浜名湖・熊本〉、鈴鹿サーキット交通教育センター、多摩テックの6会場

[あやとりぃ 公開授業]
鈴鹿市立牧田小学校
考え、話し、体験する「あやとりぃ」の教育
「あやとりぃ」公開授業の様子。
教室にパーテーションを立て、見通しの悪い交差点を設定。子どもたちが顔を出し、どこまで顔を出すと周りが見えるか確認します。
 6月28日(金)、鈴鹿市立牧田小学校で、鈴鹿市立教育研究所主催により、同市の幼稚園、小学校、中学校の交通安全教育を担当する教師を対象とした「平成14年度交通安全教育研修講座」が開催されました。約100名が参加した今年の研修テーマは長年実践している牧田小学校での「あやとりぃ」(※)の公開授業です。
 公開授業の後は、「新しい交通安全教育の試み」と題した講義。鈴鹿警察署から鈴鹿市における子どもの事故状況の説明に続いて、牧田小学校の杉村伸一教諭から、「交通安全指導部の取り組み」が発表されました。
牧田小学校は幼稚園を併設しており、幼・小7年間を通じて、交通安全教育に取り組んでいる。
幼稚園では年4回の交通安全教室。1学期/親子交通安全教室(歩行)。2学期/「あやとりぃ ひよこ編」の授業。3学期/6年生と合同で歩き方練習と自転車教室。
低学年から自転車教育にも力を入れている。今年8月には「交通安全子供自転車全国大会」にも出場。3年生では総合的な学習の時間で「あやとりぃ」を行ない、ヒヤリマップの作成も実施。
ほとんどの子どもが地元の創徳中学校に進学することから、6年生になると親子で中学校の自転車通学のための交通安全教室を行なう。
 続いて、山本眞由美教諭が「あやとりぃ」の教育について発表。今年度から、「総合的な学習」の時間に活用し、社会科、道徳などと関連づけて幅広い取り組みが行なわれているといいます。
 「学校の近くの交差点を調べて、子どもたちは安全のために工夫されていることや、もっとこうしたら安全な交差点になることを考えてきました。しかし、クルマだけではなく、歩行者である自分たちも注意しないといけないと気づいてきました。そして、生活の中でも実際に安全な行動がとれるようになってきたようです。また、親子交通安全教室も企画し、おうちの方にもクルマを運転する立場から一緒に考えてもらうなど、家庭との連携を大切にしています。子どもと一緒に教師、大人も一緒に学んでいくこと、『あやとりぃ』ではそれが大事ではないかと思います」。
 また、後藤誠光校長は、 「『あやとりぃ』を『総合的な学習』に位置づけたので、継続的、計画的に展開できるようになりました。今年は3年生を主体に行なっていますが、高学年でも1つのワークシートを取り上げて授業ができる。ポイント、ポイントで活用できるのが魅力です。牧田小学校では、多くの人の支えがあって交通安全教育に取り組んでいます。交通安全教室にもたくさんの保護者の方々が参加してくださる。これも継続的、計画的に推進できる一因です」と話します。

(※)あやとりぃ…子どもに知識を与えるだけでなく、自ら考えることによる「気づき」を引き出し、「生きる力」を育んでいくことをめざして作成された、従来にはない全く新しい交通安全教育プログラム。「あやとりぃ」とは「あんぜんを」「やさしく」「ときあかし」「りかいしていただく」の略(鈴鹿モビリティ研究会とホンダ安全運転普及本部の共同開発)。

今号では、これらの3つの事例の模様もあわせてご紹介します。

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