MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2002年6月号

これからの交通安全教育のあり方を考える

 改正道路交通法が6月より施行されました。運転免許更新の負担の軽減(更新時講習、高齢者講習)、運転免許取得者教育の認定制度などの改正を踏まえて、交通安全教育の課題、教育の方法、今後進むべき方向などについて、3名の識者の方々に話しあっていただきました。
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門田 渉
(警察庁交通局
 交通企画課
 交通安全企画官)
  運転者の属性に応じた
よりきめ細やかな教育を

 今回の改正道路交通法では、運転免許の更新時講習において、運転者の資質の向上や安全運転に必要な知識の提供を詳細に行なうために、講習を運転者の属性に応じて行なうなど、よりきめ細やかな教育の実現に向けた努力をしています。
 一方、高齢歩行者の事故をみると、免許を持っていない方の死亡事故が非常に多いことがわかります。ということは、免許取得者はその分、交通安全の行動がある程度身についているともいえるわけです。ですから、免許取得時あるいは更新時を通じた運転者教育は、受けていない人と比較すれば相当効果があがっていることは推測できます。また、自ら学習することが教育効果を高めるのに非常に重要だと思います。そうした手法のあり方も検討していければと考えているところです。
成長段階に応じた
参加体験実践型教育の必要性
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新井邦二郎
(筑波大学教授)

 小学生の段階は比較的素直で、いろいろな価値観を内在化するわけですから、こういうときには交通の大事なことをきちんと教えて伝えていくことは非常に意味があると思いますが、中学生、高校生になるとそうもいきません。そこで参加体験実践型や意見交換(シェアリング)という手法を使った指導が必要です。また教育内容についても、運転のスキルだけではなく、メンタルスキル、社会的スキルも含めて、生涯において役に立つものを取り上げて教えていく、題材も具体的なものを取り上げていく必要があります。
 また、交通安全教育に関するより高いレベルの知識を得たいときに、交通安全教育の専門施設の協力を得て、大学や大学院などでも教育の場を設け、そこで様々なかたちの教育活動ができるようになればと思います。
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太田博雄
(東北工業大学教授)
  行動変容を促すための
インセンティブづくり

 私は大学で交通心理学という講義を行なっています。それに学生がとても興味をもってくるわけです。やはりクルマを運転することに対して非常に興味があるんですね。その動機づけはかなり高いようです。一般に興味を持たないことの理由は、「情報としての新規性がないこと」と「自分に関係がないこと」の2つです。これらをクリアした内容、たとえば事故処理の方法、救急措置、法的な問題、そして自分の安全適性と適性の形成など、彼らにとっては大きな関心事です。知らないことで、かつ自分の問題であれば学生たちも興味を示すわけです。
改正道路交通法の概要(一部)
1. 運転免許の更新を受ける者の負担軽減
1)
更新時講習の内容改正
運転免許証の有効期間が、初心者や一定の違反経歴者を除いて5年になる。優良運転者については、住所地以外の公安委員会でも免許更新の申請ができる。更新時講習については、優良運転者、一般運転者、違反運転者および初回更新者に対する講習の4種類とし、それぞれの講習の内容を定める。
2)
更新時講習・高齢者講習の受講義務の免除の規定の整備
免許取得者を対象とする民間の交通安全教育のうち、一定の基準に適合した教育について、更新時講習、高齢者講習と同等の効果があるものとして認定し、その受講者には更新時講習、高齢者講習を免除する。
2.悪質・危険運転者対策等の強化
1)
欠格期間の延長
きわめて悪質・危険な運転者については1回目の取消しであっても5年間の欠格期間を指定することができる。
2)
点数の引き上げ
悪質・危険な違反行為に対する点数が引き上げられる。
3)
酒気帯び基準値の引き下げ
罰則対象となる酒気帯びのアルコール体内保有濃度の基準値が、0.25mg/lからに0.15mg/lに引き下げられる。
3.病気等に係る免許の拒否等の基準等の整備
一定の病気にかかっている者でも、運転上支障がなかったり回復したりする場合もあることから、病気等に係る欠格事由を廃止し、個別に判断することとした。
4.第二種免許制度の見直し
指定自動車教習所における教習および技能検定制度の対象に大型第二種免許および普通第二種免許を加えることとした。
5.高齢運転者等の保護
高齢者の更新時講習および高齢運転者標識は70歳以上に拡大する。肢体不自由者の運転についても、身体障害者標識を定め、この自動車に無理な割り込みや幅寄せをしてはならない。
 

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