MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2002年5月号

高齢者の豊かなカーライフを応援する社会的なケアを

 4月17日、静岡県引佐郡細江町に交通教育センターレインボー〈浜名湖〉がオープンしました。
 二輪・四輪をはじめ歩行者、自転車を含む参加体験型の実践教育に加え、受講者個々の運転操作や運転に必要な身体能力データを記録してカルテ化し、受講者にフィードバックできるシステムを導入。また、安全運転教育用二輪・四輪シミュレーターを使用した科学的な教育も行ないます。
 識者の方々にその最新施設を実際に視察・体験していただき、その感想を踏まえたうえで、交通教育センターの可能性を語っていただきました。


交通教育センターレインボー〈浜名湖〉コース紹介はこちら
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小澤一彦
(テレビ静岡報道制作局制作部・キャスター)
  運転についての人間ドックの実現

 交通教育センターレインボー〈浜名湖〉を見て、運転についての「人間ドック」という印象を受けました。今後、運転に影響する性格的なものも、心理学の分野も取り入れていけるのではないかと思います。ドライバー自身が自分の性格を踏まえて、運転に対してどういうスタンスで臨めばいいのかということがわかる。そうなれば、ドライバーの人間ドックとしての完成はそう遠くはないという気がしました。
 今後是非やっていただきたいのは、クルマを運転されない方や、高齢者、子どもを招いて、クルマの制動距離や構造などを体験してもらうことです。こういうことをすれば子どもたちも小さな頃から交通安全に目を向けるのではないでしょうか。「運転者教育」「交通参加者教育」の2つの教育がそろってはじめて、交通教育センターができた意味があると思います。 ぜひ一人でも多くの方に交通教育センターレインボー〈浜名湖〉の施設を体験してもらい、安全運転に対する意識を高めてほしいですね。事故を起こす人間を一人でも減らすために具体的に取り組むための限りなく実行力のある施設になりうると期待しています。
既存の枠を超えた教育手法に期待   ph
長江啓泰
(日本大学名誉教授)

 既存の枠を越えてほしいものの一つが教育手法です。交通安全教育のこれまでの課題は、数量化の問題と、1つの決まったものさしで測ってきたことです。つまり、同じ試験をやって60点以上が合格という手法です。しかし、社会や団体で行動するときは、互いに助け合いながらどこかで誰かが我慢することが必要になってきます。そのなかで人に迷惑かけない運転とは何かをきちんとアドバイスできれば、安心して運転できるでしょう。また、一人ひとりの運転に関する研修項目をデータ化することによって、アドバイスの奥行きが広がり、工夫の幅ができることは教育面では画期的だと思います。
 テクニックを磨くことを主眼においた従来の教育におけるインストラクターの重要な要件は、お手本をもとに教えることでした。交通教育センターレインボー〈浜名湖〉のように、ドライバーの心の中に少し入っていく場合は、教えるインストラクターではないはずです。従来型の交通安全教育から脱却するには、何をすべきかを明確にして、それにはどうすればいいのかを知恵を集めて、新しい境地を開拓することが必要です。さらに安全な運転を追い求めていくために、今後どうしたらいいのかという答えを見つけられるような交通教育センターになってほしいですね。
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宮下 誠
(レインボーモータースクール)
  地域のコミュニケーションの場をめざす

 交通教育センターレインボー〈浜名湖〉では、最新鋭の設備を有効活用しつつ、Hondaが永年培ってきた安全教育のノウハウを融合させて、その上に新たなものを築いていきたいと思っています。 そして、大事なことは、やはり一人ひとりのインストラクターがこれまで試行錯誤した中で身につけた物を現場で活かしていくことです。
 地域になくてはならない存在。つまり、子どもから高齢者、その地域で活動している方々に交通安全教育だけではなくて、地域の交流の場としても使っていただける、「我が街にHondaの交通教育センターあり」と言われるような存在をめざしています。他の8つの地域でも「この交通教育センターがなくては困る」と言っていただける活動をめざしてきました。「交通教育センター」という言葉どおりの活動だけにとどまらない、地域とのコミュニケーションができたらと思っています。また、今までの教育の検証を行なうという新しい取り組みをするとともに、交通安全教育の教育システムが明確になっていない現実に対し、糸口になる提案ができる交通教育センターづくりをしたいと思います。
 

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