MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2001年12月号

セーフティジャパンインストラクター競技大会


交通事故件数の増加、高齢運転者の交通事故増の懸念から、いま、事故形態やライフスタイルに応じた付加価値の高い新しい交通安全教育の重要性がますます高まっています。2001年の活動をもとに、2002年の安全運転普及活動の展望について、本田技研工業(株)常務取締役ホンダ安全運転普及本部長 大久保博司が語ります。

−−安全運転普及活動について、今年の取り組みについてお伺いします。

大久保 Hondaは、クルマの乗員だけでなく、歩行者の安全も視野に入れたより安全なクルマづくり、そして運転者の方への安全運転の普及・啓発活動、このハード・ソフトの両面から安全活動に取り組んできました。
 このソフト分野では“人から人へ手渡しの安全”を基本に様々な安全運転普及活動を展開してまいりました。その中で、販売店店頭での安全活動を展開するために、四輪販売会社ではセーフティコーディネーター、二輪販売店ではライディングアドバイザーを養成してまいりました。今年、セーフティコーディネーターは、全四輪販売拠点への配置を完了しました。次のステップではセーフティコーディネーターがさらに活動を活発化させていくことです。具体的には、運転に関する不安・困りごとの解消など、お客様にお役立ていただける安全アドバイスの情報提供の充実などに取り組んでいきたいと考えております。そのために、「安全」という社会的課題に積極的に取り組む四輪販売会社として『レインボーディーラー』制度を発足させ、セーフティコーディネーター活動の強化をさらに図ってまいります。

−−Hondaは今年初めて安全運転教育用の四輪ドライビングシミュレーターを開発・発表しました。シミュレーターの可能性などをうかがいます。

大久保 シミュレーターは、一般道路で遭遇する危険を安全に体験することで、危険予知予測能力を効率的に学習できる教育機器ですので、自動車教習所だけでなく、交通教育施設や企業、学校をはじめ、二輪販売店、四輪販売会社へと活用範囲を広げることで、安全な交通社会の実現に貢献できればと考えています。四輪販売会社でいえばセーフティコーディネーターの安全運転普及活動の幅をさらに広げることもできると思っています。将来的には、販売店店頭でお客様がクルマを操る楽しさや混合交通での危険予知予測が学べる形まで進化させていければと考えています。また、シミュレーターでの体験がデータ化されて、科学的に分析、評価され、お客様にその結果をフィードバックできればと思っています。お客様がご自分の苦手な部分や癖などを認識することにより、防衛運転を行ない、さらにその先の安全運転につながると考えています。

−−最近の事故状況を見ますと、死者数は減少傾向にある反面、人身事故件数、負傷者数は増加の一途をたどっています。これに対して、交通教育センターなどは、どのような安全運転普及活動をすべきなのでしょうか。

大久保 今まで私どもが長年実践してきた安全運転普及活動を再検討し、新しい時代に向けて進化させていく必要があります。そういう意味から現実の交通社会の危険をリアルに再現し、体験できるシミュレーターの持つ可能性に大きな期待を寄せいてます。来年春には静岡県浜松地区に新しい交通教育センターを開設する予定です。全国9つになる交通教育センターにが、地域の交通安全活動の核になり、シミュレーターの活用や地域の自動車教習所との連携などにより、さらにバージョンアップした交通安全教育活動を展開していきたいと思います。
 これからも、自動車教習所は、国家公安委員会が定める「交通安全教育指針」によって、地域の交通安全教育の場としての役割がますます期待されています。今年初めて、鈴鹿サーキット交通教育センターで自動車教習所の指導員の皆様を対象にした「自動車教習所指導員安全運転競技会」を開催しました。これは指導員相互の交流を通じて、互いに研鑽する場を提供することがねらいのひとつでした。大きな評価をいただいたと思っています。

−−新しい動きとして、身障者が社会生活をするうえでの障壁を少しでも取り除くことをねらって、一般ドライバー・ライダー向け小冊子『トラフィック・バリアフリー』を作り、四輪販売会社や交通教育センターを通じて啓発活動を始めました。

大久保 障害をもった方々の立場になって、交通社会のなかで私どもが何をすればいいかという観点が、これからの安全運転普及活動には欠かせないことだと考えたのです。そこで、バリアのない社会をめざして、身障者にとって交通の障壁(バリア)は何なのかを理解するという、私どもができるところから実践していこうということで始めたわけです。バリアフリーはハード面ももちろん大事ですが、まず何よりもハンデを負った人たちを受け入れ、理解するといった人と人との心のバリアフリーが大事だと思います。これからも積極的に取り組んでいく考えです。

−−アジアを中心に海外での活動も活発になっています。

大久保 当面は、ASEAN10カ国、中国に南西アジアを含めて、現地の安全運転普及活動の高まりにあわせた展開をしていきたいと考えています。それぞれの国の実情にあわせて、私どもの安全運転普及活動に対する考え方を提供することが有効であると思っています。Hondaは「存在を期待される企業」をめざして、「喜びの創造」「喜びを次世代へ」「喜びの拡大」を目標に企業活動を展開しています。この共通の課題は環境と安全です。私どもは、安全のソフト面から、アジアを中心に安全運転普及活動を広めていき、交通事故の低減に少しでもお役に立つことが、この三つの目標の実践だと思うのです。
 今後も交通社会に関わる「人」に焦点を当て、世界的な視野から事故のない安全快適な交通社会の実現をめざして、多くの方々と喜びを共有できるよう積極的な取り組みを展開したいと思います。

−−ありがとうございました。

このページのトップに戻る目次へ

 
  安全運転普及活動コンテンツINDEX