MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2001年10月号


セーフティジャパンインストラクター競技大会

ph
1997年、45名の参でスタートしたセーフティジャパンインストラクター競技大会(上)。第5回を迎える今年は7カ国109名が参加(下)。
ph

「第5回セーフティジャパンインストラクター競技大会」が9月6日から8日の3日間、鈴鹿サーキット交通教育センターで開催されました。この競技大会は、Hondaの安全運転インストラクターの指導力と運転技術の向上および世界トップクラスのインストラクターづくりをすることを目的に1997年より毎年実施されています。ここでは、この競技大会が世界と日本の交通安全教育にもたらしたものについて、識者の提言などから探ります。

 「セーフティジャパンインストラクター競技大会」は、1997年に国内交通教育センター、製作所、研究所などのインストラクター45名の参加で始まりました。翌98年の第2回では新たに二輪ディストの安全運転インストラクター、スポーツライディングスクールインストラクター、四輪販売会社のセーフティコーディネーターなどが加わり、さらにシンガポール、タイ、台湾の海外交通教育センターからも参加して、選手は一挙に88名に。第3回ではライディングアドバイザーも参加、選手を所属の分野ごとにAからEまでの5つのグループに分けて、各グループごとで優勝を競うなどほぼ現在の形を整えています。
 ちなみにグループAは国内交通教育センター、Bは製作所、研究所、ホンダ学園など、Cは二輪ディスト、スポーツライディングスクールインストラクター、ライディングアドバイザー他、Dは四輪販売会社セーフティコーディネーター、Eが海外交通教育センターです。
 競技内容は二輪競技と四輪競技が中心ですが、第4回からグループAの国内交通教育センターのインストラクターについては、お客様への的確で分かりやすい説明能力を競う種目(指導力)が追加されました。

ph■自国の安全運転教育の参考に■
ウドン・ワジャットさん(タイ警察)
チャチャイ・プミポンさん(タイ王室警察 モーターサイクルインストラクター)
 109人よる大規模な競技大会、そして運転技術の高さに大変驚いています。技術の高い選手の競技の模様をビデオに録画しました。自国に戻って練習に活用し、インストラクターのレベルアップに励みたいと思います。

■セーフティジャパンインストラクター競技大会の意義■
有馬行夫さん(ジャーナリスト)
ph  この競技大会の意義として、第1に日本初の交通安全教育のノウハウを世界に発信できないかと考えた時に、その1つの表れがこの競技大会だということです。今年は海外の参加国6ヵ国を合わせて7ヵ国が参加しました。将来的には海外で開催するなど、もっと夢のある広がりのある競技大会になることを期待します。
 第2に交通教育センターをはじめ、各事業所で交通安全教育の指導者を作り、企業内に組織として取り組む姿勢はあらゆる企業が見習うべきところであり、その模範の姿としてこの競技大会があるということです。
 世界から選手が集まっているのだから、活躍の場は大です。ここで得たものをたとえば生涯教育の地域における指導者として活用するなど地域貢献に活かしてほしい。Hondaには児童向けの交通安全教材「あやとりぃ」や「親子でバイクを楽しむ会」などの教育ソフトがあるのですから、一企業の競技大会ではなく広がりのある競技大会として捉えるべきです。

セーフティジャパンインストラクター競技大会はクルマづくりの高度な哲学、
世界に向けて発信すべきです
小口氏
小口泰平
(芝浦工業大学教授・前学長)

 クルマづくりが、単にクルマの開発・生産・販売というもので完結する時代は20世紀の後半で終わりました。21世紀を迎え、人々にとって快適で豊かなモビリティ社会を実現するためのモノづくり、クルマづくりがメーカーに託されています。この大会を視察して、それを具現化しているのがHondaであると実感しました。
 つまり、それは3つのフェーズ(段階)の統合によるものです。
 第1にハードウェア。高性能で扱いやすく、かつ安全を追求するモノづくりのフェーズ。衝突安全やABSなどの技術が含まれます。
 第2にソフトウェア。情報化社会やITSなどの安全の知識を普及させる、クルマと一緒に安全を売っていくためのソフトウェアが重要になってきます。
 第3にユーズウェア。一人ひとりのドライバーの安全運転意識を高めるお手伝いをする、それがホンダ安全運転普及本部の担う大きな役割なのですが、安全運転のインストラクターを育成し、高質化する。その人たちが安全なクルマ社会の核となり、お客様の立場で考え、安全を人から人へ手渡しで伝えていく。これはクルマづくりの高度な哲学です。この競技大会は高度な哲学の実践の場であり、世界でも例を見ないプロジェクトだと思います。

安全運転教育のグローバルスタンダード

 今回、7カ国が参加していると聞いています。海外の選手が参加している四輪の低μ路走行を見ていると、応援団が熱心に声援を送る中、実に嬉々として競技に臨んでいるんです。海外選手と話をしたのですが、この競技大会に参加することが一つのステイタスであり、帰国すると信頼を得るという。第一、競技に参加すること自体が非常に楽しいというのです。ここには私たちが失いかけている素朴かつ真剣な思いがあります。
 将来的にはこの競技大会を国際競技大会に発展させてほしいと考えています。ホンダ安全運転普及本部は世界17カ国に拡大し、交通教育センターも12カ国、20センターあると聞いています。
 また、この大会には先ほどの3つのフェーズ、つまりハードウェア、ソフトウェア、ユーズウェアを担う研究所や製作所、販売の現場に立つ人々も参加しています。今こそ、日本の安全運転教育のスタンダードをグローバルスタンダードとして国際化する時だと思います。
 あえて言うならば、Hondaがここまで伸びてきたのはHondaにはフィロソフィーがあったからです。「クルマづくりの高度な哲学」の実践の場を世界に向けて今こそ発信すべきときなのです。


このページのトップに戻る目次へ

 
  安全運転普及活動コンテンツINDEX