MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2001年6月号

安全な交通社会の構築

 2000年の交通事故負傷者数は115万5697人で前年比10.0%の大幅な増加となり、3年連続で過去最悪となりました。いま、混合交通において、ドライバー、ライダーなどの運転者同士、また自転車や歩行者との関係はどうあるべきでしょうか。交通社会におけるルールとマナーのあり方を3人のジャーナリストに語り合っていただきました。座談会で語られた3名のご意見を抜粋してご紹介します。
柏氏_ph
柏 秀樹
(モータージャーナリスト)
  現実の認識から始まって、マナーが始まる

 ドライバー・ライダーに言いたいのは、100%安全な道路環境はなく、運転には個人差があるという現実を知ってほしいということです。ところが、それさえも知ろうとしない、あるいは危険の正体を知らないから、運転も、シートベルトも、すべて「これでなんとかなるだろう」になっています。危険の実態を知れば、「こんなことすると、相手がミスするからやめよう」という配慮ができます。つまり現実の認識から始まって、マナーが始まります。
 また、周囲の環境を考えて行動することは結局、自分を守ることにつながります。そういうレベルで意識している人はマナーを守ろうという気持ち以前に自分の身を守る、人の命も守ろうとなります。それがマナーになるのだと思います。
人間が真ん中にいる
クルマ社会のあり方を考える
  清水氏_ph
清水 和夫
(プロドライバー・
モータージャーナリスト)

 確かにクルマは安全になっていますが、「安全なクルマ社会」はまだ到来していないのです。少なくとも自動車は“自動”でなくて“人動”、人間のスキルがなければ乗れないわけです。ですから、生きている、血が通っている、痛みを感じる人間が真ん中にいるクルマ社会のあり方を考えるべきです。私たちが今やらなくてはいけないことは、クルマと人間が、地球と人の社会のなかでどうしたら共存していけるのかという仕組みを考えることだと思います。
 僕のイメージですが、例えば、ITSの技術は、革新に10年、普及に10年、合計20年はかかると思います。その20年間に今の子どもたちを徹底的に教育していく。そうすれば、その子どもたちが成長して20歳代、30歳代になる2020年には今の死傷者数の115万人を半減、もしくは3分の1にまで減らすことができるのではないでしょうか。
吉岡氏_ph
吉岡 耀子
(『JAF MATE』編集長)
  家庭・学校・地域が一つになって
想像力豊かな子どもを育てる

 危険の実体を知らせ、危険を察知する能力を子どものときから開発していくことはとても大事です。通学、自転車、バイク、あるいはクルマでの外出など、成長するにつれ、交通体験が増えますが、それぞれの最初にきっちり教えるのがいいでしょう。そのためには、段階ごとに何が大事かについてのプログラムを作っておく必要があります。
 これからは危険に対する感受性がキーワードになってくると思います。先のことを想像できるから怖さも知ることになるわけで、自分で考えること、想像力を豊かにすることが大事かと思います。マナーやモラルも基本はそこにあるわけですから、これからは想像力豊かな子どもを育てていく必要があります。そのときに、やはり家庭が核になって、学校と地域と一緒になって進めるのが効果的な気がします。危険を知る力、危険から身を守る力を育てる「安全学」ができればいいと思います。


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