全日本モトクロス選手権2001年シーズンの開幕戦は、普賢岳噴火から10年が経過し復興目覚しい長崎県島原市の尽力により、この地方の言葉で「元気を出す」を意味する「がまだすカップ」と銘打って開催された。
コースは雲仙岳災害記念館の建設予定地である安徳海岸埋立地に特設され、3連ジャンプや2ヵ所のフープスなどアウトドアスーパークロスといった趣きだが、4速全開のコーナーもありハイスピードでスリリングな展開が期待された。また島原半島地域の活性化と観光復興イベントとの意味合いもあり、入場は無料となり約28,000人の観客がコースの周辺でライダーへ声援を送った。
この21世紀初の全日本モトクロスに臨むHRCライダーは昨年と同じメンバーだが、マシンは3人3様でそれぞれ異なっている。ディフェンディングチャンピオンの高濱龍一郎は、新型フレームに新型2ストエンジンを組み合わせたRC250M。ゼッケン2番を付ける熱田孝高は、従来型マシンのフレームと2ストエンジンを熟成したRC250M。そして小田切一剛は、注目の4ストマシンCRF450Rを駆る。
朝から小雨が降る天候となったが、比較的大粒のサンド路面は水はけがよく、水溜りはわずか。路面コンディションはウエットながら、タイヤグリップには悪影響はなかった。
●250ヒート1
新世紀初の決勝は波瀾のスタートとなった。ゆるいS字の1コーナーへ、好スタートを決めて4番手で進入した高濱が前輪を滑らせて転倒。最後尾からの追い上げを強いられる。ホールショットは、今年からT.E.スポーツ所属となりCR250Rを駆る榎本。それに大河原、高木、成田、熱田らが続く。小田切は8番手で1周目を終える。2周目に2番手走行中の高木が3連ジャンプでミスし、コースアウト。トップ争いは大河原、榎本、熱田というオーダーに変わった。
熱田は4周目に榎本を捉え2番手につけると、トップを走行する大河原との差を詰めて行く。9周目、熱田はハイスピードフープスで大河原に並びかけ、次の左コーナーでパスしトップに浮上。一方、小田切も序々に順位を上げて5番手を走行していたが、11周目に小石がスプロケットに挟まりエンジンがストップ。転倒は免れたものの、13位で再スタートと順位を落とす。
その後快調にトップを走行する熱田は、2番手大河原に対しジワジワとリードを広げ、最終的には5秒半のマージンを持って優勝。小田切は10位まで順位を回復し、高濱は途中で何度も転倒するサバイバルな展開となったが、15位でゴールし貴重な1ポイントをゲットした。
●250ヒート2
ヒート2のスターティングゲートに、高濱の姿はなかった。ヒート1の1コーナー転倒で右ヒジの皮膚が大きく裂けており、ゴール後に急遽病院で治療を施したが、そこでドクターストップが入り、ヒート2は残念ながらDNSとなった。
雨は止まず、コーナーのアウト側に泥が積もり、コンディションが悪化したヒート2。スタートから大河原と成田、熱田がトップ争いを演じる。1周目を終えた時点で成田が3秒リードと一歩抜け出し、2番手争いが熱田と大河原で争われるが、4周目に大河原がフープスで転倒。これで熱田は前を行く成田に集中できるようになる。大河原の転倒により、熱田の後ろは榎本と中山裕となり、この二人は7周目から接近し始め、T.E.スポーツのチームメイト同士の3番手争いに発展する。
熱田は後半に勝負をかけるつもりで体力を温存したため、トップ争いは最大11秒以上離れていたが、7周目からは逆に成田を1周数秒ずつ引き寄せる。激しい追走の後、12周目に熱田が成田をパスしトップに出る。その後、成田もあきらめずに熱田を追い続けるが、熱田がそのまま両ヒート制覇のチェッカーを受け、最高の形でシーズンをスタートさせた。
小田切はスタート12番手からしぶとく追い上げ、5番手で最終ラップに入った。まずは4番手の榎本を料理すると、さらに前方を行く3番手の中山を追う。3連ジャンプを超えて最後のストレートにあるフープスで勝負に出て並びかけ、ゴール直前の最終コーナーでは中山のインに飛び込み、クリーンパスで3位をゲット。ケガ続きの2年間という長いトンネルを抜け出してつかんだ小田切の表彰台は、ニューマシンCRF450Rのデビューを飾っただけでなく、自身の完全復活をアピールするものでもあった。
●125ヒート1
小島がホールショットを取ったが1周目のフープスで転倒し、代わってトップに立った瀬川も転倒。2周目以降は田島がレースをリード。ディフェンディングチャンピオンのHondaライダーである佐合が2番手につける。加賀の接近により、5周目から激しくなった2番手争いは9周目に加賀が佐合を抜いて決着。その後12周目にスタートで出遅れて追い上げて来た芹沢が、佐合を抜いて表彰台をゲットした。
●125ヒート2
加賀がホールショットを取るが、2周目に3連ジャンプで転倒し順位を落とす。この後小島がトップに出るがフープスで転倒。序盤のトップ争いが一段落し、レースリーダーは渡辺学に代わり、2番手に佐合、3番手は芹沢というオーダーに落ち着く。トップ3はそのまま順位を入れ替えることなく、渡辺は2番手以下に十分な間隔を保ったままゴール。安定した走りを見せた佐合が総合2位となった。
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