Report rd.12
特別な意味をもつ「500マイル」レースとホンダ・エンジン

今回新たに採用されたリアウイングは、空気抵抗を増やし、年々高まるスピードを落とすことになった。
シーズンのメインイベントともいうべきUS500も、今年で3回目を迎えた。1909年から始まったシリーズの歴史の中でも、このようなスーパースピードウェイにおける500マイルのレースは特別なステータスをもつ。参戦するドライバー、チーム関係者、マニュファクチャラーらにとっての憧れであり、500マイルレースに勝って初めてこの世界で認められる存在になるといっていい。
なぜ500マイルレースが特別なのか、その答えは簡単だ。世界で最も速いスピードが出るスーパースピードウェイで、500マイル(800キロ)という長丁場を戦うのである。1周の平均時速が360キロを越え、最高速が395キロにも達する中で、ドライバーはマシンが巻き起こす乱気流に神経をすり減らしながらバトルをする。過酷なのはマシン、エンジンにおいても同じであり、パワーと信頼性の両立といった面では、他のレースの何倍も高いハードルをクリアしなければいけないのだ。
ホンダが初めて500マイルレースに挑戦したのは1994年のインディ500である。初めてのスーパースピードウェイで思うようにスピードが出せず、当時エンジンを供給していたチームが決勝でホンダ・エンジンを使わないという判断を下したのだった。結局、ホンダは決勝に駒を進めることなくインディアナポリスを後にしたのだが、このときの屈辱が、現在のホンダを作ったと言っても過言ではない。
翌年のインディ500で、シーズンを戦うエンジン中トップの予選3番手を得て(インディ500だけの専用エンジンが予選1番手と2番手に入った)、フロントロウを獲得。レースはトップを走りながらも、ペースカーを追い越してしまうという痛恨のミスで優勝を逃してしまったのだが、その後に行われたミシガンでは、参戦以来初のポールポジションを獲得。1996年に行われた初のUS500では、ジミー・バッサーがポール to ウインを達成し、ついにホンダ初の500マイル優勝を記録したのだ。
ホンダ・エンジンはその後、このミシガンで2連勝し、今までに3度500マイルレースを制覇。今回は最終ラップで大逆転されてしまったが、そんなに簡単に勝てるレースでないことは、ホンダ自身が一番よく知っていると言えるのではないだろうか。
|