
目次
丸山さんが2馬力ボートでのシロギス釣りに訪れたのは、千葉県館山市の船形漁港。目の前に広がる館山湾は、栄養豊富な東京湾から出ていく流れと太平洋を北上する黒潮とがぶつかって、多くの魚が集まる場所である。湾内には広大な砂浜があり、シロギスの魚影も非常に濃い。
この日は風もなく波も穏やかな絶好のボート釣り日和に恵まれたが、まだ残暑が厳しく準備するだけで汗が滴るほどだった。それでも沖に出てしまえば風は爽やか。そして自在な動力を得られる2馬力ボートなら、大海原を独り占めしているかのような開放感に浸れる。この感覚が忘れられず2馬力ボートに魅了される釣り人が多いのだ。
「まずは浅場や川の流れ込みがある場所から探ってみましょう」
丸山さんは魚探を見ながらポイントを絞り、最初に水深4~5mのエリアから探り始めた。軽く仕掛けを投げて着底させ、オモリが砂煙を立てるようにズルズルと引いてシロギスのアタリを待つ。
シロギスは群れで行動する習性があり、ひとたび居場所を探り当てれば続々とアタリが出て数釣りが楽しめる。シロギス釣りの醍醐味といえる部分だが、2馬力ボートの機動力が、この点でも非常に有利なのはいうまでもない。宝探しのような感覚で居場所を予想し、それを探り当てた時は、思わず「よし」と声が出る。
この日は出航時間が潮の流れの緩い干潮のタイミング。すぐに連続ヒットとはいかないが、海の釣りではよくあることなので焦る必要はない。「魚の食いがまだ渋いですね。ひとまず大きく移動してみましょう」と丸山さん。最初にサオをだしたエリアから、船形漁港を挟んで大きく北側への移動を決めた。こういった思い切ったポイント移動も、たとえば手漕ぎボートでは難しいが、2馬力エンジンの動力があれば「思い立ったら即実行」できる。
移動した先のポイントは、海底に岩礁などが点在していた。こうした場所は、シロギス以外の魚にとっても付き場になっている可能性がある。すると、岩礁に仕掛けが引っ掛からないように注意しながら探っていったところで、「ビビビビッ!」とシャープな反応が伝わってきた。
水面近くまで浮いてからも、元気に泳ぎ回ったのは、“チャリコ”と呼ばれるマダイの幼魚だ。サイズこそ大物ではないものの、エサ釣りはこういったゲストが頻繁にアタリを送ってくれ、飽きることがないのが楽しい。
その後、岩礁のポイントはチャリコがかなり元気だったこともあり、本命のシロギスの群れを求めて再び移動。最初に探ったエリアのさらに沖側、水深8~9mのラインを流し釣りで探ることにした。
すると、この見立てが正解だったようで、ついにシロギスが立て続けにヒットし始めた!
広い海からポイントを絞り込んだ釣り人の経験と勘、スピーディな移動を可能にする2馬力エンジンの存在。その2つの要素が噛み合い、ボートからの手前船頭で、シロギスの引き味を堪能することができた。自分の判断の積み重ねで釣れた魚には、他では味わえないうれしさがある。
次ページからはタックルや釣り方といった、ボートからのシロギス釣りの具体的な方法を紹介していこう。