NSXを愛し続ける仲間たち
NSXには魂が宿っている
岡田 私の親戚に歯科医がおりまして、欧州のスポーツカーを持っているのですが、持っていることが自慢なわけです。だからこわれやすいなどと言っていあまり走らない。 ところが、NSXのオーナーのみなさんは、年に一度のお祭りであるfiestaでさえも喜々とした表情で走っています。本当にみなさん走るのが好きなんだなあと感じましたし、私もいつかは…という気持ちになりますね。 残念ながら、今は出張の際に会社のNSXに乗るのみですが(笑)。ところで今では営業マンがNSXを受注すると、2年ぶりだとか、3年ぶりということが多くなっています。でも逆に今、NSXの受注が販売の第一線では勲章になっているんです。NSXの受注をいただくと、“よかったね、またひとつ勲章が増えたね”と。
NSXは、オーナーを孤独にするのではなく、たとえば入庫ではご家族まで営業所にいらっしゃることが多かったりと、周囲のみんなから好かれているスポーツカーなんだなと思います。信号待ちをするNSXに子供達が注ぐ視線も、他のスポーツカーに対するものとは違って温かいんですよ。何でなのかな…と思いながら10年携わってきましたが、先程お話が出たように顔が見えるスポーツカーたる所以かなと思いますね。
市川 ただ製品をつくっているわけじゃないというHondaの情熱とすごさをNSXには感じますね。福田さんなどつくり手のこだわりもあると思います。機械ではない、情熱を持った人間がつくるよさですね。
福田 NSXの生産がはじまる前、鈴鹿の工場にいてたまたまサーキットへ足を運んだとき、赤いNSXが展示されていたのを見ました。 いいなあと思っていたらそのうちに“NSXをつくってみませんか?”という公募の広告が工場内の掲示板にあったのですぐさま応募しました。運良く選ばれて以来、今でもNSXの組み立てに関わっています。 鈴鹿工場だと1日2,000台レベルですが、NSXをつくる高根沢工場は1日50台がいいとこです。どれくらい違うかというと、ひとりの持ち分が鈴鹿では5〜6点の部品組み付けであったのに対し、NSXは当初で10〜20倍。現在に至っては100人分くらいの仕事をひとりが受け持ち、長い時間をかけてやっています。だからとてもやりがいがあり、質を向上させる工夫などにもより積極的に取り組めるのです。 たとえばアルミのナットなどは、量産品の感覚で締めるとネジ山が潰れてしまいますので、1本1本仮づけしてから締めるようにしています。こうした細かい配慮を重ねながら、手づくり感覚でNSXをつくっているわけです。 また、基本的にラインがなく台車で移動する方式ですので、工場見学を催すとお客様がすぐ脇まで来て、覗き込んだり話しかけたりします。ですから、NSXのことを勉強していないと答えられないんです。まだ十分とは言えませんが、つくりながらそのクルマの生い立ちや技術まで勉強したこともはじめての経験です。
上原 情熱を持った人間が、意志をもって組み上げるのですから魂が宿るんだと思います。非科学的な言い方ですが、精度も含め何かが違うと思いますね。つくりまで全部含めてすべてがNSXなわけです。
山根 学生と付き合っていると、“先生どうして欧州のスポーツカーにしないんですか”って聞かれることもあるんですが、よくよく話していくと彼らは結構クルマのことを調べていて、実はNSXが好きなんだという学生が多いんです。僕は若い人たちの間にもNSXファンは多いと見ているんです。
黒澤 僕が関わっているビデオでもいつか乗りたいクルマのアンケートをとっていますが、いまだに若い人たちの将来買いたいクルマはNSXがトップですから。
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NSXは、人と世の中を活性化させる
花木 私もスポーツカーには憧れていましたけど、縁遠い存在だと決めつけていました。でも、雑誌でNSXのことを知るうちに、誰もが運転しやすいスポーツカーだということを知り思い切って買ってみようと。 実際に乗ってみて一番驚いたのは視界の広さですね。この視界のよさでスポーツカーに対する抵抗感が一気になくなりました。文字どおり扉が開けられたという感じです。欧州車にも憧れていましたが、まず運転ができないでしょうし、存在的に距離感を感じます。もちろん、維持費が掛かるということも大きいですね。
市川 そうですね。NSXは普通に乗っている分は乗用車と変わらないですよね。
岡田 メンテナンスについては面白い話がありまして、当初NSXだから料金を高くすべきなのかと考えたわけです。それはとあるスポーツカーだと、特別に高い料金を設定しないとお客様から逆に苦情が出るということも耳にしていましたから。 でもNSXの場合は、他のHonda車と同じようにメンテナンスできるし、部品代は高いかも知れませんが工賃に関して差をつける理由は何らなかったわけです。むしろどんどん走っていただくには安い方がいいわけですし、同じにしようと。その辺りがHondaらしいですよね。
山根 それと、リフレッシュプランがあるのはいいですよね。料金的にもそんなに高くないと思います。すごい安心感です、生まれ故郷に一度里帰りさせてからまた長く乗れるのですから。
美濃 あれは素晴しいシステムです。メーカーがそこまでやるという例はないですよね。
花木 Hondaらしいですよね。いいことはやろうという意志を感じます。
岡田 アルミボディですから他では治せないですから。例えば事故を起こしたとしても、高根沢でないと…。それが品質のよさにつながり、中古車の価格も安定させているのだと思います。
リフレッシュやられた方の評判はいいですね。新車に戻ったみたいだと。
稲田 今では3カ月待ちぐらいの人気です。この前、オールリフレッシュされた方もいらっしゃいます。新しいNSXも検討されたのですが、7年乗って愛着があって手放せないと。それなら、ボディ色もインテリアも新しくして気分を一新して乗ってみようというわけです。そう考えるオーナーの方も多いですね。 インテグラとかシビック、S2000でもミーティングをやっていますが、若い方のほとんどがいつかはNSXに乗りたいという目標をもたれています。NSXはそれほど若い層にもインパクトを与えているんだということを、そうした会の生の声であらためて思い知らされますね。 もう、何とか試乗させて欲しいという声がすごいんですよ。この前のfiestaのように機会を見つけて実行していますが、追い付かないような状況です。 また、余談ですが、NSXという明確な目標がありますから、若い人などは仕事を一生懸命やって10年後には乗ろうとする方も多く、さまざまな人のエネルギー源にもなっていますね。
美濃 じゃあ、NSXは若い人たちを活性化させるから、社会的な経済効果もあるわけですね。
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NSX Press vol.26 2001年3月発行