一般的に、FFで228kW[310PS]、400N・m[40.8kgf・m]の強大なパワーともなれば、駆動力の左右差によってステアリングを取られる現象であるトルクステアの影響が顕著になる。そこでフロントサスペンションは、転舵軸(ナックル)と路面からの入力軸(ストラット)という機能の異なる2つの軸を持つデュアルアクシス・ストラット式を採用。ナックルを独立させたことでキングピン軸の傾きが抑えられた結果、センターオフセットを小さくでき、トルクステアの大幅な低減を可能とした。同時に、キャスター角を大きく設定することで、高速域においても高い直進安定性を発揮するとともに、転舵時にはタイヤ接地性に優れたキャンバー特性でコーナリングの限界性能も向上。また、ロアアームとダンパーフォークをアルミ製とし、構造の最適化を図ることで軽量・高剛性化を追求※。コンプライアンスブッシュも高硬度にして、キレのあるハンドリングに貢献している。
※特許出願中
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■ フロントサスペンション構造
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■ フロントサスペンション・ジオメトリー
ベース車に採用される、シンプルな構造でスペース効率に優れるトーションビーム式を踏襲したうえで、トーションバーにパイプをつぶして成形するクラッシュドパイプを用いロール剛性を飛躍的に向上。さらにスタビライザーを不要としたことで軽量化も実現したほか、トレーリングアームのブッシュを高硬度にし、接地点横剛性を高めてトー変化を抑制。これらにより、「車軸懸架はスポーツカーに不利」という常識を覆す、高G旋回での高いスタビリティーを獲得した。
■ システム構成
ドライバー操作や車両状態を検知し、リアルタイムかつ連続的に4輪の各ダンパーの減衰力を独立して電子制御するシステム。起伏のある路面での走行においても高いタイヤ接地性を保つよう、また、ドライバーの操舵入力に対して車両が遅れなく追従し、一体感のある車両挙動となるよう4輪の各ダンパーの減衰力を調整。姿勢をフラットで安定した状態に維持することで、より繊細なマシンコントロールに貢献する。
■ 減衰力可変イメージ
ステアリングホイールの回転を直線方向の動きに変換するピニオンギアを2箇所に設置した、デュアルピニオンアシストEPSを採用。トルクセンシング部とアシスト部を分離することで、ステアリング操作およびタイヤからの入力を、アシスト機構によるロスを伴わずに伝達。それにより、微小な操作からのリニアな操舵感と正確なステアリングインフォメーションを獲得している。また、操舵角フィードバック制御ロジックを新開発し、直進時にはしっかり感があり、操舵時には応答性の良い操作感を実現。ギアボックスはラックギア支持剛性を大幅に引き上げ、アルミハウジングを高剛性化。リジッドにマウントすることで、ダイレクトなフィーリングをもたらす。