サーキット走行などでの高負荷・高回転時においても、安定的に性能を発揮できるよう熱対策を徹底。シリンダーヘッドやピストンに高い冷却性能を持たせ、エキゾーストバルブにはナトリウムを封入。大容量インタークーラーは走行風が最大に得られるフロントバンパー開口付近に配置した。これらにより耐ノッキング性能を高め、高出力を発揮するとともに、高過給域でのストイキ(理論空燃比)領域を広げることで高速燃費性能も高めている。
2015年10月発表 2016年3月終了モデル
この情報は2016年3月現在のものです。
歴代TYPE Rが極めてきた動力性能を異次元の領域へ。目標、最高出力228kW[310PS]、最大トルク400N・m[40.8kgf・m]。TYPE Rの新たな歴史を刻む、ターボエンジンの開発に挑んだ。
ターボエンジンによる高出力化では、過給圧を上げて吸入量を増やすことが常套手段である。だが、そのためにターボチャージャーの容量を拡大すると低回転域でのレスポンスが損なわれてしまう。2.0Lの排気量の中で小型・軽量化にも配慮しなければならない。そこで、より効率よく出力とレスポンスを高めることを目的に、ターボチャージャーは小型のモノスクロールターボとしながら、排気側にVTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)を、吸排気双方にVTC(連続可変バルブタイミング・コントロール機構)を採用。バルブオーバーラップ量を広範囲かつ緻密に制御することにより、低回転域での高トルク・ハイレスポンス、全開領域での高出力化を可能とした。また燃焼効率の向上のために多段噴射インジェクターによる直噴システムや、高タンブル吸気ポート、ピストン冠面形状の最適化などの燃焼技術も投入。高速・高負荷領域で高出力を安定して発揮できるよう冷却性能も徹底追求した。さらにターボチャージャーの後に2ベッド直下キャタライザーを配置し、「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」にも適合。これらにより、FF車として抜きん出た動力性能と時代に相応しい環境性能を両立した。
サーキット走行などでの高負荷・高回転時においても、安定的に性能を発揮できるよう熱対策を徹底。シリンダーヘッドやピストンに高い冷却性能を持たせ、エキゾーストバルブにはナトリウムを封入。大容量インタークーラーは走行風が最大に得られるフロントバンパー開口付近に配置した。これらにより耐ノッキング性能を高め、高出力を発揮するとともに、高過給域でのストイキ(理論空燃比)領域を広げることで高速燃費性能も高めている。
7,000rpmまで、鋭いレスポンスで吹け上がる高回転のターボエンジンとするために、エンジン内部の回転・往復運動部品の慣性重量低減を追求した。クーリングチャンネルを備えながらも軽量なアルミ製ピストン、コンロッドは熱間鍛造に加えて棹部を冷間鍛造して高強度化※1。この2部品によってクランクシャフトはカウンターウェイトを軽量化できたほか、アルミブロックやエキマニレス構造の採用などエンジン全体にわたる徹底した軽量化によって1.6Lターボエンジン並みの2.0Lターボ最軽量※2を達成。加速やハンドリング性能にも貢献している。
日常の中でピュアスポーツを楽しめるTYPE R本来の走りをBASEモードとしたうえで、さらにハイレスポンスな走りを引き出せるよう+Rモードを設定した。
BASEモードではリニアなトルク特性とし、伸びのある加速感を演出。ひとたびスイッチをONにして+Rモードにすれば、低回転域から強力なトルクを発生し、シートに背中を押しつけられるかのような強烈な加速感を実現。
■ モード別走行特性(追い越し加速時)
■ トランスミッション概要
果てしなく湧き上がるようなパワーをフルに活かすべく、6速マニュアルトランスミッションはすべてのギアが常にパワーバンドを捉え続け、6速で最高速に達する専用クロスレシオ設定を用いた。さらに、高G旋回時にも高いトラクションを確保するため、応答性の良いヘリカルLSD(リミテッドスリップデフ)を採用。またデュアルマス・フライホイールによって駆動系の振動・騒音を大幅に低減している。
シフトストロークをNSX-Rと同等の40mmに設定。クイックシフト化にともなって増加するシフト荷重に対しては、すべてのギアに大容量のシンクロを採用するなど大幅に低減。さらに、2-3速間、4-5速間の斜めシフトの操作性や、各部の剛性も高め、素早く、カチッと決まる優れたシフトフィールを獲得した。
■ シンクロ諸元