第12戦インディアナポリスGPは、2番グリッドからのスタートで2位フィニッシュ。第13戦サンマリノGPでは、グランプリ通算100戦目を迎えた。記念すべき節目のレースを勝利で飾るべく、ポールポジションを獲得したものの、決勝レースは4位。そして、第14戦ポルトガルGP・エストリルは、冒頭でも紹介したとおり、またもや4位。
レース内容こそ不本意な結果だったものの、この第14戦では青山博一にとって大きな出来事があった。現在、250ccクラスなどでチームを運営するパドック・グランプリ・チーム・マネジメントのオーナー、ダニエル・エップ氏が新規に立ち上げるHondaのサテライトチームから、2010年シーズンのMotoGPクラス参戦が決定したのだ。250ccクラスのランキング2位から4位の選手たちがシーズン早々に来季のステップアップを決める一方で、第7戦以降ランキングトップを走り続ける青山は去就がなかなか判明しなかった。しかし、タイトル争いが大詰めを迎えるシーズン終盤になってシートも確定。ようやく精神的にも落ち着いたのかと思えば、意外にも本人は、「そんな気持ちは一向にない」という。
「来シーズンのMotoGPが決定したといっても、実感はまだ全然ないし、実感がないからホッとすることもないですね。今からあれこれ考えても何も始まらないけれど、思いわずらうことが1つ減ったのは確かなので、まずは今、自分がやらなければいけないことに集中し、残りのレースに専念していきたいと思います」
次のレースは、第15戦オーストラリアGP。会場は、屈指のハイスピードコースとして名高いフィリップアイランド・サーキットだ。第16戦マレーシアGPが行われるセパンサーキットは、2本のロングストレートが特徴的な近代的サーキット。高温多湿な土地柄への対応も必要になる。そして、遅くとも最終戦の舞台スペイン・バレンシアのリカルドトルモ・サーキットで、2009年のチャンピオンが決定する。
「次のフィリップアイランドは得意なコースで、好きなサーキットです。マシンも相性がいいと思うので、思いきりいきたい。セパンは暑い気候がマシンにとってに厳しいかもしれないけれど、好きなコース。好きなのはバレンシアも同じ。残り全部、好きなコースが続くので、これは僕にとっていいことだと思います。今まで自分を支えてくれたたくさんの方々に恩返しをするという意味でも、ここからの残り3戦を、勝てるか勝てないかはともかくとしても、僕が持っているベストのパフォーマンスと、マシンが持っているベストのパフォーマンスを出せるように、全力で戦っていきます」
青山博一、27歳。これまでの表彰台獲得回数は26回(優勝8回、2位8回、3位10回)。2001年以来となる日本人チャンピオンの誕生は、まだ予断を許さない状況でありながらも、しかし手を伸ばせば届く距離まで確実に迫っている。
青山博一 Hiroshi Aoyama 5歳からポケバイに乗り始め、15歳でミニバイク関東選手権チャンピオンを獲得。2000年から全日本選手権250ccクラスに参戦して、03年にシリーズチャンピオンを獲得した。翌04年からHondaの日本人若手ライダー育成制度「Honda Racing スカラーシップ」の第1期生として世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。05年の日本GPではクラス初優勝を飾って総合4位となった。2年間のスカラーシップ卒業後も250ccクラスで活躍、09年は4年ぶりにHondaライダーに復帰して、念願のシリーズタイトル獲得に挑む。