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『最後の王者を目指して』青山博一の挑戦〜前編〜

所属チームの解散と4年振りのHonda復帰

実は、当の青山博一自身が、今シーズンの開幕前にはチャンピオン争いができるという期待を抱いてはいなかった。

「正直なところ、今年は難しいだろうなと思っていました。(昨年まで所属していた)KTMが解散を発表したのが遅かったこともあり、去年のシーズンが終わった段階でシートはまったく決まっていなかった。決定したのはものすごく遅い段階で、最小限の人数とモノでやろう、という方向でチームを立ち上げることになった。すべてが準備された恵まれた環境というわけではなく、なんとか走れる場所を与えてもらった、という状態。だから、トップ争いをしていくのは厳しいだろうなというのは、当時でも充分に想像できることでした。それでも多くのライダーがシートを失っていくような状況だったので、走れるだけでもありがたいと思って、この環境を与えてくれた多くの方々に感謝しながら、可能な限りいい結果を出したい、と思っていました」

この言葉には、若干の補足が必要だろう。昨年まで青山の所属していたKTMワークスチームが250ccクラスからの撤退を表明したのは、ちょうど昨年の今ごろ。シーズンが大詰めを迎えた10月中旬の第17戦マレーシアGPでの出来事だった。前戦のオーストラリアGPでは、2009年に向けた契約更改の大筋合意に達していただけに、この突然の撤退表明は青山にとってもまさに寝耳に水のニュースだった。今から移籍先を探そうにも、ほとんどのチームはすでに来季に向けた体制を固めている。また、世界同時不況の波はグランプリパドックにもひたひたと押し寄せており、いたるところでスポンサーの撤退やチーム縮小という動きが顕在化し始めていた。

残り2戦でグランプリ生活が終わってしまうかもしれない、という覚悟を胸にレースに挑んだ青山は、気迫のこもった走りでポールポジションを獲得。決勝レースを2位で終え、改めてその存在感を大きくアピールした。だが、2週間後の最終戦が終了しても、翌09年に向けた見通しは未定のままだった。

ようやく、スコット・レーシングチーム・250ccから250ccクラスに継続参戦という形で正式に決着したのは、年末も押し迫った12月。スペアマシンのない一台体制という最小限の陣容だった。2004年に「Honda Racing スカラーシップ」1期生としてロードレース世界選手権250ccクラスに参戦を開始し、06年からKTMへ移籍した青山にとって、4年ぶりのHondaへの復帰になる。

開幕直前の3月下旬、スペイン・ヘレスで行われたIRTA(※国際レーシングチーム協会)主催の公式テストでは、マシンの理解とベースセットアップに集中した。3日間のテストを終え、青山は着実に手応えをつかみつつあった。

「初日より2日目、2日目より3日目、とベースを向上させていくことができました。ラップタイムは満足できないけれど、目標を確実にクリアしたので収穫はあったし、ポジティブな内容のテストだったと思います。Hondaの感覚を取り戻すというよりも、HondaからKTMへと乗ってきた自分の経験を積み重ねたうえで、今のHondaの特性やクセをつかんで、新しい感覚を作っていきたいですね。今シーズンはアプリリア勢が16台で、特に昨年のチャンピオン争いをしたシモンセリとバウティスタが強そうだけど、今の自分に与えられた環境を生かしながら、上のカテゴリーにステップアップできるシーズンにするために全力でがんばりたいと思います」

ヘレス・IRTAテスト
ヘレス・IRTAテスト

アプリリア勢、中でもシモンセリとバウティスタが優勢というシーズン予測は、青山に限らずとも、この当時ならおそらく衆目の一致するところだっただろう。

このような状態で迎えた開幕戦カタールGPだったが、優勝候補と目されたシモンセリは転倒リタイア。青山とバウティスタは集団に飲まれてトップから引き離されながらも最終ラップまで激しいバトルを続け、青山が4位、バウティスタは7位で終えた。

第2戦は青山のホームGPとなる日本、栃木県のツインリンクもてぎ。過去に2回優勝を飾っている地元コースだけに、青山自身はもちろん、ファンや関係者の期待も大きい。しかし、決勝レースで優勝を飾ったのはスペイン人選手のバウティスタ。青山はレース中盤でトップに立ったものの、次第に追いつめられて先頭を奪われ、最後は2位でチェッカーを受けた。ランキングでも、開幕2戦目とはいえバウティスタに続く2位につけた。

第2戦日本GP
第2戦日本GP

「決勝に合わせてチームがベストのセッティングを出してくれたし、ファンの人たちも全力で応援してくれた。だから、自分も全力で走らなければと思い、最後にタイヤのライフが厳しくなっても、いけるところまでいこうと思った。バウティスタが余裕を持って走っているのはわかっていたけれど、中盤までリードしていたのに2位という結果はやはり悔しいですね。ランキングでも1ポイント差で2位だし、次のスペインGP・ヘレスもこの流れをキープしたい。Hondaのマシンは開発が終了しているけれど、パッケージとしてはポテンシャルが高く、すばらしいマシンだと思います」

開発が終了したマシンでチャンピオン争いへ浮上