ロードレース世界選手権(MotoGP)の開催70年目の節目となった2018年は、史上最多となる19戦でタイトルが争われた。Repsol Honda Teamのマルク・マルケスは、開幕戦ではアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)と優勝争いを展開し、わずか0.027秒届かず2位。その後マルケスは、第3戦アメリカズGP、スペインGP、フランスGPにかけて3連勝を挙げると、第8戦オランダGPをポールトゥウイン、続くドイツGPでは125cc、Moto2時代を含めて大会9連覇を成し遂げた。マルケスが勝利を逃した第10戦チェコGPや第13戦サンマリノGPでは、ドヴィツィオーゾがマルケスらとのバトルを制した。とはいえ、マルケスはどちらのレースも表彰台を獲得し、ドヴィツィオーゾとのポイント差を大きく詰められることはなかった。第14戦アラゴンGPをマルケスが勝利、初開催となった第15戦タイGPもマルケスが制して、ライダーズタイトル獲得に王手をかけて、日本GPを迎えた。マルケスは、ランキング総合2位のドヴィツィオーゾに対し77ポイント差、総合3位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)には99ポイント差をつけており、日本GP終了後に75ポイント以上の差を守ればチャンピオン獲得という状況だった。
日本GPの舞台となるツインリンクもてぎは、Hondaのホームサーキット。多くのHondaファンが見守る中、タイトルを決めるべく臨んだマルケスだったが、フリー走行、予選でドヴィツィオーゾがトップタイムを記録し、マルケスの前に立ちはだかる。しかもマルケスはフリー走行4で転倒を喫した影響もあり、6番グリッドから決勝に挑むこととなった。
晴天の中始まった日本GP決勝は、マルケスが好スタートを決めてオープニングラップで2番手に浮上すると、早くも17年の大会同様、マルケスとドヴィツィオーゾとの一騎打ちの様相を呈していく。逃げきろうとするドヴィツィオーゾと、背後からプレッシャーをかけ続けるマルケス。カル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)も3番手で前の2人を追いかけながら、ラップを重ねていく。レースが大きく動いたのは終盤だった。ペースを上げたマルケスが21周目についにトップに浮上すると、焦りが出たのか、ラスト2周でドヴィツィオーゾが転倒。これで長きにわたる戦いの勝敗が決し、ライバル不在のレースを走りきったマルケスが3年連続5回目のチャンピオンを決めた。さらにクラッチローが2位に入り、Hondaのホームグランプリで、Honda勢がシーズン初の1-2フィニッシュを飾った。ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、予選11番手から8番手争いを繰り広げ、シングルフィニッシュとなる8位。MotoGPクラスでは11年、12年、15年の日本GP勝者であり、ペドロサは得意とするコースだけに、自分の結果に残念と語っていた。
日本勢では、MotoGPクラスのフル参戦初年度の中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)、ワイルドカードで中須賀克行(ヤマハ)が出場。日本GP開幕を前に、中上の19年の継続参戦が発表された。母国のファンの前で、中上は予選Q1を2番手で通過し、Q2を経て12番グリッドを獲得。決勝では接触によるコースアウトで順位を落とすも、そこから追い上げて15位入賞を飾った。中須賀は中上の前を守りきり、14位でポイントを獲得した。
Moto2クラスは、ランキングトップのフランチェスコ・バニャイア(SKY Racing Team VR46)と、総合2位のミゲル・オリベイラ(Red bull KTM Ajo)がチャンピオン争いの一騎打ちの状況で、日本GPを迎えた。日本勢では、長島哲太(IDEMITSU Honda Team Asia)が前戦のタイGPでベストリザルトの8位に入り、ホームでの自己ベスト更新に気合をみせていた。
予選では、バニャイアがポールポジション、長島は自己最高位の8番手を獲得。一方オリベイラは予選9番手に終わった。翌日の決勝では、バニャイアと予選2番手のファビオ・クアルタラロ(MB Conveyors - Speed Up)が優勝争いを展開し、クアルタラロがトップでチェッカーを受けた。しかし、レース終了後の車検でテクニカル違反(空気圧不足)があったことから、クアルタラロは失格。繰り上がりでバニャイアが優勝、2位にロレンソ・バルダッサーリ(Pons HP40)、オリベイラは3位となった。長島は、変更したセッティングがうまく機能せず、12位、チームメートのカイルール・イダム・パウィは22位だった。Moto2タイトル争いは、バニャイアがリードを広げて、続くオーストラリアGPをタイトル王手で挑むことにつながった。
第16戦の日本GP開幕の時点で、Moto3クラスでは、7人のライダーにライダーズタイトル獲得の可能性が残っていた。ランキング総合首位はホルヘ・マルティン(Del Conca Gresini Moto3)、26ポイント差の2位にマルコ・ベツェッキ(KTM)、総合3位にファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Del Conca Gresini Moto3)。ランキング4位以下はポイント差が開いていた。日本勢では、鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)、鳥羽海渡(Honda Team Asia)、佐々木歩夢(Petronas Sprinta Racing)、真崎一輝(KTM)に加え、福嶋佑斗(Team Plus One)、岡崎静夏(Kohara Racing Team)の2人が、ワイルドカードで出場した。そして、Hondaがコンストラクターズタイトル獲得に王手をかけて、日本GPに挑んだ。
予選は、トップから1秒差に18台の大接戦となった。トップ3はKTM勢が占め、ベツェッキが3番手。マルティンが4番手、佐々木が13番手、ジャンアントニオは15番手につけた。決勝は、レースの中盤まで10台前後でトップグループを形成し、徐々に絞られていく。ベツェッキが優勝し、0.041秒差の2位にはロレンソ・ダラ・ポルタ(Leopard Racing)が入った。マルティンもトップグループを走っていたが、ラスト5周で転倒し、リタイアに。ライダーズタイトル争いはマルティンがわずか1ポイント差でトップを守った。コンストラクターズタイトル争いは日本GPでの決着はつかず、次戦に持ち越しとなった。日本勢では、ウォームアップランでトップタイムを記録した佐々木が最上位となる9位、鈴木が15位となり、それぞれポイントを獲得した。以下、鳥羽が17位、真崎は22位、ワイルドカードで出場の岡崎が23位、福嶋は24位だった。
順位 | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | マルク・マルケス | Honda | 42'36.438 |
2 | カル・クラッチロー | Honda | +1.573 |
3 | A.リンス | スズキ | +1.720 |
4 | V.ロッシ | ヤマハ | +6.413 |
5 | A.バウティスタ | ドゥカティ | +6.919 |
6 | J.ザルコ | ヤマハ | +8.024 |
7 | M.ビニャーレス | ヤマハ | +13.330 |
8 | ダニ・ペドロサ | Honda | +15.582 |
9 | D.ペトルッチ | ドゥカティ | +20.584 |
10 | H.シャーリン | ヤマハ | +24.985 |
順位 | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | フランチェスコ・バニャイア | KALEX | 41'04.294 |
2 | ロレンソ・バルダッサーリ | KALEX | +6.227 |
3 | ミゲル・オリベイラ | KTM | +11.553 |
4 | アレックス・マルケス | KALEX | +12.083 |
5 | ブラッド・ビンダー | KTM | +12.348 |
6 | アウグスト・フェルナンデス | KALEX | +12.701 |
7 | チャビ・ビエルゲ | KALEX | +13.652 |
8 | イケル・レクオナ | KTM | +13.811 |
9 | ルカ・マリーニ | KALEX | +15.604 |
10 | マルセル・シュローター | KALEX | +17.556 |
順位 | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | M.ベツェッキ | KTM | 39'35.653 |
2 | ロレンソ・ダラ・ポルタ | Honda | +0.041 |
3 | D.ビンダー | KTM | +0.042 |
4 | D.フォッジャ | KTM | +0.212 |
5 | J.マクフィー | KTM | +0.251 |
6 | トニ・アルボリーノ | Honda | +0.350 |
7 | エネア・バスティアニーニ | Honda | +0.404 |
8 | G.ロドリゴ | KTM | +1.561 |
9 | 佐々木歩夢 | Honda | +3.137 |
10 | J.コーンフェール | KTM | +7.965 |