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チーム創設2年目、望外の快進撃

2007/SUPER AGURI Honda SA07(スーパーアグリ・ホンダ SA07[4輪/レーサー])

鈴木亜久里+佐藤琢磨+Honda 参戦2年目で王者をパスする快走

Text/Toshiyuki Endo  Photos/Hidenobu Tanaka, Honda

2007/SUPER AGURI Honda SA07(スーパーアグリ・ホンダ SA07[4輪/レーサー])

2007年F1世界選手権出場車 No.22 佐藤琢磨

翼端板形状も含め、フロントの形状はRA106と共通性がもっとも高い部分。本家HRF1に先んじて採用していたブリヂストンのロゴがセンターに描かれる。

翼端板形状も含め、フロントの形状はRA106と共通性がもっとも高い部分。本家HRF1に先んじて採用していたブリヂストンのロゴがセンターに描かれる。

前述した開発資金力の問題を考えれば、このスペインGPがシーズンハイライトとなってもおかしくはない状況だったが、スーパーアグリのドライバー・チームスタッフ一丸となっての頑張りは、さらなる見せ場を呼び込んだ。その舞台は第6戦カナダGPである。予選、琢磨はQ1を突破してQ2でも11位と、あと一歩でQ3進出に迫る健闘を見せた。さらに決勝では1周目に10位へ、序盤のうちに9位へと順位を上げる。この日のレースはセーフティカー出動が相次ぐ乱戦となり、22台が出走したものの失格車も2台出るなどして完走は12台のみというサバイバル戦になっていくのだが、そのなかで琢磨は懸命に走行を続けていった。終盤、その順位は8位となり、チーム2度目の入賞が期待されるところまで到達。ところが、今回の活躍はそれにとどまるものではなかった。

70周レースの66周目に7位へと上がった琢磨は、68周目、前年にルノーで2年連続チャンピオンとなり、この年はマクラーレン・メルセデスに移籍していたフェルナンド・アロンソを、カーナンバー1をパスして、6位に上がったのである。2スペックのタイヤをレース中に両方使わなければならないルールとセーフティカー連発の流れが絡まったアヤで、最終盤のアロンソはタイヤの条件的に不利な状況だった、という事情はあったにしても、最終シケイン手前のブレーキングでアウトから王者をパスしたシーンはまさに名場面であり、スーパーアグリの、Hondaの、そして日本のF1史に残る名場面であったと評せよう。

このカナダGP決勝、琢磨の6位入賞もさることながら、デビッドソンも頑張っていた。乱戦ゆえのピット時期のズレ等によるものとはいえ、36周目には3位という通過順位を記録しているのだ。残念ながら、コースに侵入してきた小動物と接触するという不運があり最終結果は11位だったが、彼の力走も光った一戦だった。スーパーアグリのシーズンハイライトシーンは、歓喜のスペインGPからわずか2戦で塗り替えられたのである(もちろんスペインの感動も消えたわけではない)。

2007年は2年目の2.4リッターV8規定シーズン。RA807E型エンジンはHRF1と同じ仕様。回転数はこの年から上限1万9000rpmと規定された。

2007年は2年目の2.4リッターV8規定シーズン。RA807E型エンジンはHRF1と同じ仕様。回転数はこの年から上限1万9000rpmと規定された。

しかしながら、さすがにここまで、だった。やはり財政面の厳しさからくる開発力の問題はいかんともし難く、シーズンが中盤戦に入り後半戦へと進んでいくにつれて、スーパーアグリの相対的な戦闘力は下がっていった。この頃はF1マシンのあちこちに空力的付加物が生えていた時代で、シーズン中の進化やコース対応等による変貌の度も小さくはなかったが、SA07に関していえば、他チームに比べて変貌度は控えめ(にならざるを得なかった)。第7戦以降、再びの入賞機会は巡ってこなかった。

それでもデビッドソンがアメリカGPで11位、ヨーロッパGPで12位、琢磨も最終戦ブラジルGPで12位という結果を残すなどしていることは、ドライバーとチームの頑張りの証左であった。同時に、成長力こそ資金的理由で伴わなかったもののSA07が好素性のマシンであり、高い安定性を有していたことを示す事実でもあっただろう。スーパーアグリの最終的なコンストラクターズランキングは、シーズン失格扱いで11位となったマクラーレン以外の10チーム中9位。終盤までHRF1より上位につけるなどしており、最終的にスパイカーF1(現フォースインディア)を食ったという事実も、まさしく奇跡的であった。

スーパーアグリの挑戦は翌08年途中で終焉するが、10年以降に参戦を開始した後発チームと比べても、新興プライベートチームであったスーパーアグリの07年の活躍は特筆ものといえよう。プライベーターでも、ここまでできる──琢磨のスーパーアグリ・ホンダ SA07がアロンソのマクラーレン・メルセデス MP4-22を抜いた瞬間、あれは日本人ドライバーが日本籍プライベートチームのマシンと日本製のエンジンで成した、世界に誇れる偉業成就の瞬間ともいえた。

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SUPER AGURI Honda SA07

2007/SUPER AGURI Honda SA07[4輪/レーサー]

2007/SUPER AGURI Honda SA07[4輪/レーサー]

SPEC

シャシー

型番 SUPER AGURI Honda SA07
デザイナー ピーター・マックール
車体構造 カーボンファイバーモノコック
全長×全幅×全高 4680×1800×950mm
ホイールベース 3135mm
トレッド(前/後) 1460/1420mm
サスペンション(前後) プッシュロッドオペレーテッドトーションバー&ダンパー
タイヤ(前/後) ブリヂストン製
燃料タンク ATL製
トランスミッション ホンダ製7速セミオートマチック
車体重量

エンジン

型式 RA807E
形式 水冷90度V型8気筒NA
排気量 2400cc
ボア×ストローク
圧縮比
最高出力 700ps以上
燃料供給方式 Honda PGM-FI
スロットル形式 電子油圧制御

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