路面性状調査とは?目的・やり方・課題をわかりやすく解説
道路舗装は、車両の走行や経年劣化によって少しずつ傷んでいきます。こうした劣化を把握し、安全性を維持するために行われるのが「路面性状調査」です。ひび割れやわだち掘れ、平たん性(IRI)などを定量的に数値化し、補修の判断や維持管理計画の基礎データとして用います。
本記事では、調査の基本的な考え方から測定項目、実務での活用目的、さらに運用上の課題までをわかりやすく解説します。
目次
- 路面性状調査とは
- 路面性状調査の測定項目
- 路面性状調査の重要性
- 路面性状調査の目的
- 道路の安全性確保
- 補修・維持管理の効率化
- 維持管理コストの最適化
- 路面性状調査の方法
- 1. 調査対象路線・計測条件を設定する
- 2. 事前踏査で調査区間と計測ルートを確認する
- 3. 路面性状を計測する
- 4. 計測結果を整理・評価する
- 5. 帳票・データとしてとりまとめる
- 路面性状調査における課題
- 調査の負荷がかかる
- コストの負担が大きい
- 実態に即した優先順位付けが難しい
- まとめ
路面性状調査とは
路面性状調査とは、道路舗装の状態を客観的なデータとして把握するための調査です。ひび割れやわだち掘れ、路面の凹凸といった劣化状況を数値で示し、道路の維持管理や補修計画に活用する資料として取得します。
道路は、日々の交通による荷重や気温・降雨などの影響を受けながら、時間の経過とともに少しずつ劣化が進んでいきます。そのため、道路法および関連する省令では、道路管理者に対して定期的な点検の実施が求められており、そのなかで舗装の状態を確認する調査として路面性状調査が位置づけられています(※1)。
調査によって得られたデータは、単に現状を記録するだけのものではありません。どの路線を優先して補修すべきか、どの程度の対策が必要かを判断する材料となり、限られた予算で効率よく維持管理を進めるための重要な根拠として活用されます。
(※1)参考:定期点検(法定点検)について(橋梁、トンネル、シェッド・大型カルバート)|国土交通省、車両用ビッグデータを活用した路面性状調査|国土交通省
路面性状調査の測定項目
※出典:Canva
路面性状調査では、舗装の劣化状態を評価するために複数の指標が用いられます。代表的な測定項目は、次のとおりです。
| ひび割れ | ひび割れ 舗装表面に発生したクラックの量や広がりを示す指標です。ひび割れは雨水の浸入を招き、舗装内部の劣化を進める原因となるため、重要な評価項目とされています。 |
|---|---|
| わだち掘れ | 車両の繰り返し走行によって路面に生じる凹みの程度を表します。わだちが深くなると雨水がたまりやすくなり、走行安全性や排水性能に影響を及ぼします。 |
| 平たん性(IRI) | 路面の縦方向の凹凸を数値化した指標で、走行時の振動や乗り心地と密接に関係します。平たん性(IRI)は国際的に用いられている評価基準であり、舗装の機能的な状態を把握する上で重要な指標です。 |
これらのデータは単独で用いられるだけでなく、交通量や舗装の種類、過去の補修履歴などの情報と組み合わせることで、より実態に即した維持管理の判断に活用されます。
路面性状調査の重要性
路面性状調査の重要性が高まっている背景に、道路インフラの急速な老朽化があります。国土交通省の資料によると、高度経済成長期に集中的に整備された道路施設の多くが更新時期を迎えつつあり、今後は劣化の進行が一気に顕在化すると指摘されています(※2)。
道路の老朽化が進むと、ひび割れや沈下、わだち掘れなどの損傷が増加し、通行機能の低下や事故リスクの高まりにつながります。さらに損傷を放置した場合、補修の頻度や規模が大きくなり、通行止めや大規模修繕といった社会的影響を伴う事態に発展する可能性もあります。
こうした状況のなかで、路面の状態を客観的なデータとして把握し、計画的な維持管理を行うための基盤として、路面性状調査が一層重要になっています。
(※2)参考:老朽化の現状・老朽化対策の課題|国土交通省、車両用ビッグデータを活用した路面性状調査|国土交通省
路面性状調査の目的
路面性状調査によって得られたデータは、事故防止や補修計画の立案、予算の適切な配分など、さまざまな場面で活用されます。ここでは、おもな目的を見ていきましょう。
道路の安全性確保
路面の劣化が進むと、車両の走行安定性が低下し、事故のリスクが高まります。ひび割れや段差はハンドル操作に影響を与えるだけでなく、雨天時にはスリップやハイドロプレーニングの原因となることもあります。
歩行者や自転車利用者にとっても、路面の凹凸や損傷は転倒事故につながる可能性のある危険な状態です。路面性状調査を通じて劣化箇所を早期に把握し、適切に補修を行うことは、道路利用者全体の安全性向上に寄与します。
補修・維持管理の効率化
道路の劣化状況を数値で把握することで、緊急対応に追われるのではなく、優先順位をつけた補修計画を立てやすくなります。補修の必要性を客観的に示せるため、関係部署との調整や予算の確保も進めやすくなります。結果として、限られた人員や資源を効率的に配分できるようになります。
維持管理コストの最適化
舗装の劣化を早期に把握し、適切なタイミングで補修を行うことは、長期的なコスト削減につながります。小規模な段階で対策を講じることで、大規模な更新工事を避けられる可能性が高まるためです。また、必要性の低い箇所への過剰な補修を防ぐことができ、予算をより効果的に活用できます。
路面性状調査の方法
道路の老朽化が進行するなかで、国土交通省は道路点検を「制度」として位置づけ、計画的かつ継続的に実施するための枠組みを整備(※3)してきました。舗装についても、舗装点検要領などを通じて点検の進め方や評価の考え方が体系化されています。
現場での計測作業に加え、取得したデータを分析し、維持管理の判断に活用できる形にまとめるところまでが調査のプロセスです。また、調査の精度だけでなく、作業効率や安全性、後のデータ活用を見据えた運用設計も求められます。
ここでは、新潟市の例を参考に、一般的な調査の流れを整理します。
(※3)参考:路面性状調査の手引き|新潟市
1.調査対象路線・計測条件を設定する
まずは、どの道路を対象にするかを決めます。全ての道路を同じ頻度で調査することは現実的ではないため、交通量や道路の重要度、過去の補修履歴などを踏まえながら、優先順位をつけて対象を選定します。
次に、どの車線を計測するかを決めます。たとえば、片側一車線の道路では、路面状態が悪化しやすい方向の車線を計測対象とする運用が見られます。一方で、片側二車線以上の場合は、車線ごとに交通状況や補修履歴が異なり、損傷の出方も変わるため、両方向・全車線を計測する考え方が基本になります。
あわせて、計測の前提条件もそろえておきます。走行速度、使用機器、評価単位などを事前に決めておくことで、年度をまたいだ比較や、路線間比較がしやすくなります。
2.事前踏査で調査区間と計測ルートを確認する
計測に先立ち、現地の状況を確認する事前踏査を行います。事前踏査では、調査区間の起終点や管理境界、距離標、橋梁や交差点などの構造物の位置を確認し、具体的な計測ルートを決定します。交通状況や道路幅員、周辺環境を把握しておけば、安全に調査を実施するための準備が整います。
また、事前踏査は計測漏れや作業の手戻りを防ぐことにもつながります。区間の始点・終点や境界をここで明確にしておけば、後で地図に落とし込むときの修正が減り、集計や資料作成がスムーズになります。
3.路面性状を計測する
調査の中心となるのが、路面の状態を計測する工程です。ひび割れ、わだち掘れ、平たん性(IRI)などの項目ごとに、専用の機器や手法を用いてデータを取得します。
計測方法には、車上や徒歩による目視調査、専用の路面性状測定車を用いる方法、簡易機器を用いた測定などがあります。道路の条件や調査目的に応じて、適切な方法を選択します。
実務では、一定の区間長(例:20m)ごとに路面状態を評価し、同時に路面画像や位置情報を取得します。これにより、後のデータ整理や地図上での可視化が容易になります。
4.計測結果を整理・評価する
計測によって得られたデータは、そのままでは維持管理の判断に使いにくいため、一定の基準に基づいて整理・評価します。
一般的には、舗装の状態を「健全」「機能維持段階」「修繕段階」などの診断区分に分類し、ひび割れやわだち掘れ、平たん性(IRI)を段階評価として整理します。こうした区分に落とし込むことで、路線ごとの状態を比較しやすくなり、補修の優先順位を検討しやすくなります。
5.帳票・データとしてとりまとめる
最後に、調査結果を帳票やデータベースとして整理します。ひび割れやわだち掘れ、平たん性(IRI)の数値、位置情報などを一定区間ごとに一覧化し、路面写真とあわせて管理できる形にまとめます。
さらに、地図上に診断区分を色分けして表示した評価図を作成することで、どの区間の劣化が進んでいるのかを直感的に把握できるようになります。
こうして整理されたデータは、単年度の記録にとどまらず、過去の結果と比較する材料となります。劣化の進行を把握することは、中長期的な維持管理計画の検討にもつながります。
路面性状調査における課題
路面性状調査は、道路の維持管理に欠かせない基礎情報を得るための重要な取り組みです。しかし、実務においてはいくつかの課題もあります。ここでは、現場で特に注意しておきたい課題について、詳しく解説します。
調査の負荷がかかる
路面性状調査が必要な道路はとても多く、点検だけでも多大な時間と労力を要します。特に目視による点検では、広い道路網を巡回しながら状態を確認する必要があり、現場担当者の負担は小さくありません。
さらに、調査後には報告書の作成やデータ整理、評価区分への判定といった内業作業が続きます。こうした工程は手作業が多く、調査よりも整理・評価の方が時間を要するケースもあるほどです。
また、目視点検では判断基準のばらつきが生じやすく、担当者の経験や調査条件によって評価結果が異なる可能性もあります。こうした点は、データの一貫性という観点でも課題といえます。
コストの負担が大きい
専用の路面性状測定車を用いれば、高精度かつ効率的な調査が可能になります。しかし、こうした機器は高価である上、運用にも継続的な費用がかかります。
調査の実施にあたっては、測定車の導入費だけでなく、専門オペレーターの人件費や機器の保守費、データ解析費などが発生します。そのため、道路が広範囲にわたる自治体では、全ての路線を定期的に測定しようとすると、コストがかかりすぎてしまいます。
また、狭い生活道路や住宅街では大型の測定車が進入できない場合もあり、調査手法が限定されることがあります。その結果、路線によって調査精度や把握状況に差が生じる可能性もあります。
実態に即した優先順位付けが難しい
路面性状調査では、ひび割れやわだち掘れなど、道路の「劣化の程度」を数値として把握できます。しかし、路面性状調査の結果はあくまで舗装の状態を示すものであり、交通量や利用実態と直接結びついているわけではありません。
たとえば、同じ程度のひび割れが発生している道路でも、1日に数万台が通行する幹線道路と、通行量の少ない生活道路とでは、社会的な影響が大きく異なります。つまり、劣化度と道路の重要度を総合的に評価するための判断材料が不足し、戦略的な補修計画を立てにくい課題が残るわけです。
実際の補修優先度は、「どれだけ使われているか」という視点も踏まえて判断する必要があります。
まとめ
路面性状調査は、道路の劣化状況を客観的に把握し、適切な維持管理につなげるための基盤となる取り組みです。一方、実務の現場においては、調査の負担やコスト、データ整理の手間、さらには実態に即した優先順位付けの難しさといった課題も顕在化しています。
こうした背景から、近年では定期調査で得られる「点の情報」に加え、車両の走行データなどを活用して道路の利用実態を継続的に把握する取り組みが注目されています。
たとえば、Honda車両の走行データをもとにした交通・人流データサービスであるHDDS(Honda Drive Data Service)では、道路ごとの通行頻度や車両の動きを統計的に把握できます。車載センサー由来の高精度データとリアルタイム性により、変化を早期に検知できるのも強みです。
HDDSを活用した道路状況の把握について詳しく知りたい人は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
このコラムの執筆者

- 増田真吾
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自動車ライター
自動車整備士・自動車検査員- 国産車ディーラー、ガソリンスタンド、車検工場で約15年間整備士として勤務
- 国内最大手の中古車買取販売会社本部にて保証判定部署に転職し、保証認否および提携工場からの技術相談業務に従事
- 40歳手前で自動車関連記事の執筆を開始しフリーランスとして独立
- 2022年に自動車関連企業やサービスをきっかけとして、WEB制作やSNS支援、YouTube制作を行う「株式会社グラフィカ・ワン」を設立
- 現在は複数のライターと主にチームとして記事執筆担当
- 大手カー用品店、レーシングチーム、eモータースポーツなど様々なプロジェクトに参画中