プローブデータのオープンデータ化が進んでいる理由とは?背景・課題と活用のポイントを解説

プローブデータ
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近年、国や自治体を中心にプローブデータのオープンデータ化が加速しています。交通計画や都市開発の現場において、データに基づいた客観的な分析が不可欠となるなか、無償で利用できるオープンデータは魅力的な選択肢です。一方で、実務での活用には特有の制約があり、特徴を正しく把握しておく必要があります。本記事では、オープンデータ化の背景や課題を整理して解説します。

目次

  • プローブデータとは
    • プローブデータのオープンデータ化が進められている
    • 民間データとの違いは無償・公開範囲・粒度にある
  • なぜプローブデータのオープンデータ化が進められているのか
    • 交通課題が複雑化し、従来の調査だけでは限界がある
    • データ活用を前提とした政策設計への転換
  • 現在公開されているおもなプローブ系オープンデータ
    • ETC2.0由来のオープンデータ
    • その他の関連オープンデータ
  • プローブデータのオープンデータ化における課題
    • 鮮度・網羅性の制約がある
    • データの偏りが誤解を生む可能性がある
    • 個人情報・位置情報リスクへの配慮が不可欠
  • オープンデータで「できること」「できないこと」
    • オープンデータでできること
    • オープンデータだけでは難しいこと
  • まとめ

プローブデータとは

プローブデータのイメージ

※出典:Adobe Stock
※出典:フキダシデザイン
※出典:icooon mono
※出典:PIXTA

プローブデータとは、車両やスマートフォン、IoT機器などの移動体から取得される位置・移動履歴データの総称です。おもに「いつ・どこを・どのくらいの速度で移動したか」を把握でき、交通状況の把握や人流分析、都市計画などの分野で活用されています。

従来のアンケートや定点観測調査と比較して、データの連続性が高く、広域を面として捉えた実態把握に強みがある点が特徴です。

プローブデータのオープンデータ化が進められている

国や自治体は、交通政策や都市政策への活用促進を目的として、プローブデータの公開を進めています。これらのデータは加工・匿名化された形で提供され、個人を特定できないよう安全に設計されているのが特徴です。

研究機関や自治体、民間企業が幅広く利用できる基盤として整備されており、多くのユーザーが分析しやすい形式で公開されるケースが一般的です。まずはデータに触れてもらい、新たな知見や価値を創出することが期待されています(※1)

(※1)参考:ETC2.0 プローブデータのオープン化に向けた基礎調査|国土交通省

民間データとの違いは無償・公開範囲・粒度にある

オープンデータの大きなメリットは、原則として無償で利用できる点にあります。一方で、有償の民間データと比較すると、プライバシー保護やデータ容量の観点から空間的・時間的な粒度が粗く調整されている場合がほとんどです。公開範囲も限定的なため、詳細な行動分析やミクロな視点での検証には向きません。

しかし、公的な根拠として公平性が高く、誰でも再現可能な分析を行える点はオープンデータならではの強みといえます。

なぜプローブデータのオープンデータ化が進められているのか

社会課題の複雑化により、かつての経験だけに頼った政策判断は限界を迎えています。これからのエビデンスに基づく政策形成には、客観的な現状把握が不可欠です。

行政だけでなく、民間や研究機関がオープンなデータを活用して連携し、共に課題解決に取り組むためのデータ活用体制の構築が求められています。

交通課題が複雑化し、従来の調査だけでは限界がある

従来の定点調査や人手による交通量調査では、時間帯による細かな変動やエリアごとの差を完全に捉えきることは困難でした。渋滞や事故の要因が多様化するなか、災害や大規模イベント、工事といった突発的な変化に対しても、迅速な実態把握が難しくなっています。

全国を面的かつ時系列で把握できるデータ基盤への必要性が高まったことで、プローブデータの価値が再評価されています。

データ活用を前提とした政策設計への転換

国土交通省が推進するEBPM(証拠に基づく政策立案)のように、データ活用を前提とした政策設計への転換が進んでいます。これは官民が持つ交通データを連携させ、再利用可能な形で共有する考え方に基づいています。

単に「行政がデータを保有する」段階から、広く「社会で使われるデータ」へと価値を変えることが、オープンデータ化の真の狙いといえるでしょう。

現在公開されているおもなプローブ系オープンデータ

現在、国や自治体によって複数のプローブ系データが整備・公開されています。これらは交通や移動に関する情報を中心に提供されており、他のオープンデータと組み合わせることで分析の幅を大きく広げられます。

ETC2.0由来のオープンデータ

ETC2.0由来のオープンデータのイメージ

※出典:Canva

高速道路や主要幹線道路の走行履歴をもとにしたETC2.0データは、代表的なオープンデータの1つです。区間ごとの平均速度や混雑傾向を把握できるため、渋滞対策の検討や道路整備の優先順位付けに広く活用されています。

プライバシー保護のために加工・集計された統計値として公開されている点に留意が必要ですが、マクロな交通流分析においては有効なリソースとなります。

その他の関連オープンデータ

プローブデータと親和性が高いデータとして、人口統計や土地利用、施設情報などのオープンデータがあります。さらに、交通事故データや公共交通の運行データなども公開が進んでいます。

プローブデータ単体では見えにくい「なぜその動きが起きたか」という背景要因を補完するために、これらの周辺データを組み合わせた多角的な分析が主流です。

プローブデータのオープンデータ化における課題

オープンデータ化においては、公開のしやすさとデータ価値のバランスが常に課題となります。利用者の誤解を防ぐための適切な設計と、データ特性に関する丁寧な説明が不可欠です。

鮮度・網羅性の制約がある

オープンデータの多くは、リアルタイム性が限定的です。最新の状況を即座に反映することは難しいため、過去の傾向分析や長期的な課題抽出がおもな用途となります。

また、全車両や全人口を網羅しているわけではないため、あくまで抽出されたサンプルに基づく「傾向」として扱う必要があります。

データの偏りが誤解を生む可能性がある

データの取得元となる機器の利用者層や地域によって、データに偏りが生じることがあります。表示された数値をそのまま絶対的な事実として扱うと、実態を見誤る恐れがあるため注意が必要です。

データがどのような前提条件や取得方法に基づいているかを正しく理解した上で、分析を行う姿勢が求められます。

個人情報・位置情報リスクへの配慮が不可欠

プローブデータは個人の移動履歴という機微な情報を含むため、厳格な匿名化や集計処理が施されています。データ活用を推進する一方で、利用ガイドラインを遵守し、プライバシー保護と活用の両立を継続的に図ることが重要なテーマとなっています。

オープンデータで「できること」「できないこと」

オープンデータのできること・できないこと

※出典:Canva

データの活用範囲を正しく理解することは、データ活用の第一歩です。期待値を適切に調整することで、実務でのミスマッチを防ぐことができます。

オープンデータでできること

オープンデータは、交通や人流の大まかな傾向把握や、課題に対する仮説の立案に適しています。また、自治体の施策を説明する資料の根拠データとしての活用にも向いています。

民間データの導入を検討する前の予備的な検証や、導入の必要性を判断するための検討材料としても有用なツールとなります。

オープンデータだけでは難しいこと

一方で、個別施設や店舗単位の精緻な分析、秒〜分単位のリアルタイムな意思決定、高度な需要予測など、高頻度・高粒度なデータを求める業務には不向きです。

より詳細な意思決定や精度の高いビジネス予測を行うには、オープンデータを補完する有償データなどの活用が必要になります。

まとめ

プローブデータは交通実態の把握に不可欠なものとして、国や自治体での活用が進んでいます。オープンデータ化により利用環境が整う一方、鮮度や粒度には制約があるため、用途に応じた使い分けが重要です。まずはオープンデータで現状把握を行い、実務での深い分析には補完的なデータ基盤を選ぶ視点が求められます。

Honda Drive Data Service(HDDS)は、全国規模で蓄積された一般車両の走行データから、交通変化を高頻度かつ安定的に把握できるサービスです。オープンデータでは届かない詳細な分析領域を強力にサポートし、確かなエビデンスに基づく施策立案を可能にします。

このコラムの執筆者

執筆者写真
佐藤耕一
自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT業界に転じて自動車メーカー向けビジネス開発に従事。のちライターとして独立。自動車メディアとIT業界での経験を活かし、SDV・EV関連動向を中心に取材・執筆・動画制作・レポート/コンサル活動を行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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