2003年3月8日 土曜日(公式予選2日目)
サーキットに到着したジェンソンは、パドックへの回転ドアの前でドライバーひとりひとりに挨拶をしていたミッキーマウスに迎えられた。ジェンソンの直前に到着したバリチェロがミッキーを抱きしめる。控えめなジェンソンも相好をくずし、握手をしながら「ミッキーーーーーー!」と叫んだりした。
午前中は比較的スムーズに進んだ。今シーズンから採用された新しいルールによると、土曜日の午後の予選と決勝の間に再給油は許されておらず、予選および決勝をその一度の給油でまかなわなければならない。そのため、2回の45分セッションは、いずれも燃料搭載量を多目にしてセットアップに集中した。土曜日午前中の2度のフリー走行が、従来日曜日の朝におこなわれていたフリー走行30分に取って代わった形となる。
ジェンソンは最終的に15週目にピットインする計算で給油量を決定した。また、硬めのブリヂストンタイヤを選び、スピードよりも「持ち」を選んだ。
全マシンによる15分間のウォームアップ走行のあと、予選が始まり、全員が静かに出番を待っている。ジェンソンは16番手、デビッド・クルサードの直後、ミハエル・シューマッハの直前、豪華な顔ぶれだ。
ジェンソンは超満員に膨れ上がったグランドスタンドの前で確実なラップを重ね、ジャックに0.2秒遅れでスターティング・グリッド8番手につける。
「8番グリッドはスタート位置としては比較的いいところだと思う。マシンが少しぶれ気味だったせいもあって、理想とは程遠いラップだった。他のドライバーも同様だと思うけど、もっと速く走れたはずだ。」
ジェンソンは語った。
いくつものプレスとの仕事を終え、夕方早目にホテルへ戻り、静かに夕食をとる。そこには華やかなF1レーサーの姿はなく、翌日のレースに向けて心身を整えようと努めるその姿は、非常におだやかで粛々としたものだった。
|