Behind the ScenesVolume15

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.15

Behind the Scenes -ピット裏から見る景色- Vol.15

こんにちは!Honda F1の岡田です。日本GPがすぐそこに迫っていますが、これを読んでくださっている皆さんは、少なくとも今週末に日本でF1があることを知ってもらえたらうれしいなと思っています。

―今でも変わらぬ「鈴鹿スペシャル」

前回も書きましたが、私はHonda F1に第二期と言われる1991年から関わっています。当時私は新人で、日本ではF1全盛期。すごい盛り上がりでしたね。いつの時代もHondaは日本GPに非常に力を入れて臨んでいましたが、エンジンレギュレーションが今ほど厳しくなかった当時、毎年、「鈴鹿スペシャル」と呼ばれる特別仕様のエンジンを投入していました。

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これは今も同じですが、自分たちの母国でのグランプリですからね。チームの一員である私たち全員、それはそれは気合が入ります。ですので、当然ながら自分の仕事にミスは許されません。私はECUという部品を担当していて、検査をすると色マジックでマークを付けたものですが、あらゆる項目をチェックしすぎてECUがすごい色になったのをよく覚えています。

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印象的だったのは1992年、第二期最後の日本GPでしょうか。当時は若手でファクトリー勤務だったので日曜は休日で、ファクトリーがあった和光の自宅で観戦していました。セナとの最後のレースになるのがわかっていたので、みんな本当に気合が入っていたのに、セナは3周目であっさりリタイア。翌日会社で詳細が分かったのですが、これまで起こったことがないような簡単なトラブルが原因で、それを聞いて本当にがっかりしました。

―現地での応援が、すごく力になっています!

仕事として日本GPに行ったのは、2000年代、第三期と呼ばれる時代になってからです。印象に残っているのは、仕事を終えてサーキットを歩いていたら、日本人のフェラーリ応援団と思われる方々とすれ違って、その皆さんに「エールを送ります!」と言ってすごく熱い声援をいただいたことですね。とてもうれしかった一方で、Hondaの応援団ではなかったという点では半分ガックリというところでした(笑)

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あとは、昨年、2018年のToro Rosso色に真っ青に染まったHonda応援席も驚きましたね。私は今年もToro Rossoの担当をしていますが、彼らの地元のイタリアGPでさえ、Toro Rossoのシャツを着たファンがこんなにいることはないので、チームメンバー全員が本当に驚き、喜んでいたんですよ!今年はToro Rossoとは2年目、Red Bullとは初めての日本GPですが、どんな光景を目にできるのか楽しみにしています。もしも僕を見かけたら、ぜひ声をかけてくださいね。

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―常勝だった第二期と現在の違い

私は今回のプロジェクトに最初から関わっていますが、特に最初の3年間は苦しい思い出が多かったです。高電圧系、つまりMGU-Hの信頼性を走行中に監視するのも私の仕事の一つなのですが、当時は本当にMGU-Hのトラブルが多く出ていました。レース中に、MGU-Hが壊れた際にチーム側にマシンを止める指示を出すのも自分の役目だったので歯がゆかったですし、一緒に働いているチーム側のエンジニアの悔しさも身に染みて感じていました。

それだけに、HondaJetのエンジン部門の協力により飛躍的に信頼性が向上したことは本当にうれしく感じていますし、彼らにはとても感謝しています。パフォーマンス面でも、ICE(内燃機関)の進歩による向上だけでなく、MGU-HやMGU-Kが着実に進化して貢献できていることは本当によかったと思っています。

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今年は初勝利を含め、表彰台なども多く取れていますが、常勝だった第二期は常に勝つことが命題とされていました。そのため、「一つたりともミスが許されない」という緊張感がいつもHonda内に満ちていました。互いに強い責任感を持ち、自分たち自身に対して非常に厳しい時代でしたね。今もそれに似た空気にはなってきていますが、やはり当時に比べるとまだそこまでのレベルではないと感じます。

一方で、守る立場でなく追いかける立場の楽しさや高揚感が、今のHondaにはあふれているとも感じます。

―Hマークをつけたドライバーを鈴鹿の表彰台へ

今回は、第三期以降にプロジェクトを休止していたブランク期間の影響、それに現代のパワーユニットシステムの複雑さゆえに、開発陣が「これが自分たちのスタンダードだ」と思える技術を確立するまでに非常に時間がかかってしまっていました。それだけに、目に見える結果を残せていることがうれしいですし、やっとここまで来ることができたという想いです。

ここまで来たからには、HondaのHマークを胸に付けたドライバーが鈴鹿の表彰台に上る姿を見てみたいという想いはありますし、それが今年であればこんなにうれしいことはありません。

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一方で、ここ数レースのライバルの走りを見るとそう簡単ではないとは思っています。それでも、この4年間、日本のファンの皆さんには鈴鹿で残念な思いをさせてしまっていますし、何とか皆さんと一緒に喜べる結果を残したいという想いを胸に、日本GPに臨みます。

皆さん、応援をよろしくお願いいたします!

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