Round 04アゼルバイジャンアゼルバイジャンGP

現場レポート

2018.05.01(火)

2018 アゼルバイジャンGP 現場レポート

第4戦 アゼルバイジャンGP 現場レポート

「予選の結果は厳しいものでしたが、ここでのレースは何が起こるか分からない。決勝に向けて全力を尽くします」予選後、Honda F1 テクニカルディレクターの田辺豊治は17番手とノータイムに低迷した結果を踏まえながらも、レースへの意気込みを語った。

予想通り、バクーならではの波乱の展開となったレースで、Red Bull Toro Rosso Hondaの2台は生き残り、完走を果たした。ブレンドン・ハートレーは10位入賞。F1で自身初となるポイントを獲得した。ハートレー自身の喜びとともに、チームにとってもこれまでの苦労が少し報われ、今後の励みになる成果だった。

第4戦アゼルバイジャンGPの舞台であるバクーの市街地コースは、シリーズの中でも特徴的で難易度の高いサーキットである。全長約6kmの中に、グランプリコースの中でも1、2を争う2kmの長いストレートがあるほか、ほぼ直角の低速コーナーが多く、市街地コースの特徴である路面のうねりや非常にタイトなコース幅の要所があり、ドライバーにとっても、マシンにとってもギリギリのチャレンジを要求するコースとなっている。

加えて今年は、例年よりもおよそ2カ月早い開催となったことで、気温、路面温度が従来よりも上がらないコンディションとなった。このことが、すべてのドライバー、チームを、タイヤの温度管理という面で悩ませ、市街地路面と相まってグリップ不足を引き起こしている。

Red Bull Toro Rosso Hondaにとっては、この難しい状況の中で、前戦での不振をばん回しなければならないという課題があった。

「前戦を終えての解析で、ある程度原因の特定はできているのですが、それをこのコースで検証し確認することはとても難しいことです。さまざまなトライも含め、できるだけのことを進めるしかありません」と田辺。ドライバーの経験も大きい要素となるコースで、ピエール・ガスリーはGP2での走行経験はあるが、ハートレーにとっては初めてのコースで、マシン、ドライバーともに手探りの状態で走行が始まった。

前戦同様に、プラクティスでのパフォーマンスは低迷した。チームは空力を中心にさまざまなセットアップを試したが、「マシンのバランスとグリップがなかなか向上せず、いい感触を得られていない」とガスリーはコメント。予選に向けてさらなる改善が必要だった。

そうして迎えた予選では、チームにアンラッキーが襲いかかる。1回目のアタックでガスリーはまずまずのタイムを出したものの、セッション序盤のコンディションはあまりよくなく、路面が改善する2回目に賭けるしかない。ハートレーは、コースインしたもののイエローフラッグが相次ぎ、アタックには至らずピットに戻った。

勝負はセッション終盤の2回目のアタックに託されたが、ハートレーはアタック中にバリアと接触しパンクを喫する。スローダウンしたハートレーが、タイムアタック中のガスリーのラインを阻み、ガスリーはギリギリで避けたがコースオフ。チームメート同士の激突という、あわや大事故の状況だった。

「今までレースをしてきて一番怖い瞬間だった。時速320㎞でぶつかるところだった」とガスリー。「完全に僕の判断ミスだった。ピエールには申し訳ないことをした」とハートレー。激突を免れたことは、チームにとって今回最大のラッキーだったかもしれない。

予選でタイムアタックが不発に終わったRed Bull Toro Rosso Hondaは、ガスリーが17番手、ハートレーが19番手からの決勝スタートとなった。予想通り、レースは波乱の展開となる。オープニングラップからクラッシュが発生し、セーフティカー(SC)が導入。好スタートを決めたガスリーは4周後のレース再開時点では7番手にまでポジションを上げた。しかし、ストレートで度々後続に抜かれ、13周目にピットインする時点では13番手まで順位を下げていた。

レースが小康状態となった中盤から終盤にかけて、Red Bull Toro Rosso Hondaの2台は14、15番手を走行していたが、残り10周あまりとなった時点で、レースは大波乱の様相を呈した。上位を走るレッドブルの2台がメインストレートで接触し、これによりSCが導入される。SC中にハースがクラッシュするアクシデントも起こり、SC先導は7周と長引いた、この間にガスリー、ハートレーはともにウルトラソフトタイヤへ交換し、最後の戦いに備える。残り5周でレースが再開した後も波乱は続き、上位の脱落が相次いだ。目まぐるしい展開の中、11番手から入賞を狙って追撃していたガスリーにもアクシデントが襲った。前を行くハースのマグヌッセンがストレートで無謀なブロックを仕掛け、ガスリーは逃げ場を失いマシンにダメージを負ってしまう。それでもガスリーは残りのレースを走り切り12位完走を果たした。このアクシデントで、ハートレーが10番手にポジションを上げ、チェッカーフラッグを受ける。ガスリーの脱落は残念だったが、ハートレーの入賞がそれを補うかたちとなり、大波乱のレースは幕を閉じた。

「この展開の中、2台が生き残って完走を果たし、入賞したことはよかったと思います。しかし、ストレートスピードが伸びず、苦戦した部分がありました。パワーで劣っていることは分かっていますが、加えてエネルギーマネジメントについて、セットアップ面とレース中のオペレーション面での差が大きく出たとも感じています。課題は多く、まだまだやることがたくさんあるという状況です」とレース後、田辺は語った。マシンについても「週末を通して、期待したレベルにはなかった」とチーム代表のフランツ・トストが語るように、前戦からの問題解決には至らないパフォーマンスに終わった。

シーズン序盤の4戦が終わり、F1はホームグラウンドであるヨーロッパに戻る。次戦スペインGPは、例年シーズン第2幕の始まりとも、実質的な開幕戦とも言われる戦いとなる。それまでの2週間、Toro RossoもHondaも、問題の解決とさらなるパフォーマンス向上へ、休む間も無く準備を進め、戦いに挑み続ける。

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