加減速時の車体安定性を追求し、ホイールベースを1,460mmに設定するとともに、エンジン出力を効率的に路面に伝える622.7mmの長めのスイングアームを採用したことで、乗車状態で前・後輪の分担荷重を50:50とし、過度なピッチングの抑制とサーキットで充分なバンク角が確保できる位置に搭載している。また、キャスター角を24°00′、トレールを102mmに設定し、安定感の向上を図ったうえで、バランスと重心の見直しによりピッチングを抑え俊敏性の向上を追求している。ハンドルポジションは、ライダーの操作を入力しやすい角度に設定することで、スポーツ走行での操作フィーリングに貢献している。ステップポジションは、より後方かつ上方とすることで、深いバンクのコーナリング姿勢での操作性を追求している。
フレームボディーはサーキット走行での操作時や加減速時の安定性、限界域での接地感の向上を図るため、より高精度な剛性チューニングを可能とした薄肉GDC(重力金型鋳造)製法を採用。最低2mmの肉厚で成形したアルミ製ダイヤモンドフレームは、高い縦剛性、ねじれ剛性とあわせ、横剛性を抑えることで高出力を受け止め、かつ減速時の荷重に耐える剛性と安定感の高い操縦性に寄与している。また、エンジンを計6箇所で締結することで、フレームボディーの剛性バランスを緻密に調節。フレームボディーとの剛性バランスを図るとともに、上方からフレームにラジアルマウントしタンク後方部の幅を抑え、高い空力性能とコンパクトなライディングポジションを追求している。
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シートレールはコンパクト化を追求しアルミ丸断面パイプを採用。フレームボディーとの剛性バランスを図るとともに、上方からフレームにラジアルマウントすることでタンク後方部の幅を抑え、空力性能の向上とコンパクトなライディングポジションを追求している。
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フレーム剛性とのバランスと軽量化を追求し、リアサスペンションにプロリンクを採用。あわせて、リアショック上部のマウントは、ブラケットを介してクランクケース背面に装着する構造*とした。これにより、フレームボディー上側のクロスメンバーを省略するだけでなく、フロントまわりに対するリアからの応力の影響を分離し、高速時の安定性と高いトラクションフィーリングに寄与している。
*特許出願中
エンジンマウント、プロリンク構成
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スイングアームはRC213V-Sと同じアルミプレス製とし、全18ピースの部位ごとに異なる板厚設定で
構成*。さらにスイングアームの剛性バランスを見直すことで、リアタイヤの接地性とコーナリング性能を追求している。
*特許出願中
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リアタイヤのサイズは、サーキット用、公道用、それぞれのタイヤ装着時の車体姿勢変化を抑えるため、200/55ZR17M/Cを採用。加えて、リアホイールは、サーキットで求められるブレーキングやコーナリングに必要な剛性を確保している。
フロントは制動力の向上を図り、厚さ5mmのφ330mmディスクブレーキをダブルで装備し、サーキット走行での高い制動力を追求している。またフロントにはBrembo STYLEMAを、リアにはRC213V-Sと同様のBrembo製キャリパーを採用し、路面追従性と高いコントロール性を追求している。
*Brembo STYLEMAはイタリア Brembo S.p.A.の登録商標です。
サスペンションはフロントにキャビテーションを抑えるための加圧ダンピングシステムを採用した、ÖHLINS製電子制御NPXフロントフォークを搭載。より安定した減衰力制御やサーキット走行でのギャップ吸収力、前輪の接地感向上に貢献している。リアにはÖHLINS製電子制御TTX36リアサスペンションを採用。さらに第2世代ÖHLINS Smart ECシステムの採用により、ライダーの好みに応じた調整を行うÖHLINS Object Based Tuning interface(OBTi)をより細かく設定可能に。3つの個別モードを設け、異なるサーキット用の設定を用意し、ライダーが任意に切り替えられるようにしている。
*ÖHLINS Smart ECはスウェーデン ÖHLINS RACING ABの登録商標です。
CBR1000RR-R FIREBLADEには、フロントにNISSIN(日立Astemo株式会社)製対向4ポッドラジアルマウントキャリパーを採用し、2022年モデルではキャリパーピストンの変更により、サーキット走行時のコントロール性に寄与している。リアはディスク、キャリパーともにSPと同一の装備としている。これによりサーキット走行で求められる制動力とコントロール性を獲得している。
CBR1000RR-R FIREBLADEのフロントには、ショーワ(日立Astemo株式会社)製のBPFを、リアにはBFRC-liteを採用し、バネ下重量軽減に寄与している。
*BPF、BFRC-liteは日立Astemo株式会社の登録商標です。
レーススタート時に機能するスタート制御モードを採用。スロットルを大きく開けてもエンジン回転を6,000/7,000/8,000/9,000rpmに制限することで、ライダーがクラッチ操作に集中できるよう、配慮している。さらに、サーキットを含めた様々な走行シチュエーションに応じ、パワー“P”、エンジンブレーキ“EB”、 HSTC“T”、ウイリー挙動緩和制御“W”などのライディングモード切り替えが可能。さらにCBR1000RR-R FIREBLADE SPでは電子制御サスペンション“S”の制御レベルも加え、一括切り替え可能なライディングモードを搭載。これにより各パラメーターの制御レベル組み合わせで構成される3種類のライディングモード全ての個別設定が可能に。
■制御技術一覧
サーキット走行でのステアリング操作に対する応答性、耐キックバック性の向上と軽量化を目指し、
ショーワ(日立Astemo株式会社)のロッド式電子制御ステアリングダンパーを装備。車輪速センサー信号、6軸IMUからの車体姿勢情報に基づきステアリングダンパーの減衰特性を制御するとともに、3段階の減衰特性レベルを選択可能としている。これにより、サーキットを含む様々なシチュエーションでハンドリングの安定感と、操舵特性に寄与している。
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リアタイヤのリフト抑制やバンク角に対応する制御を行うスポーツモデル専用のABS(アンチロック・ブレーキ・システム)に、走行シーンに合わせたABSレベル切り替えシステムを採用。主に公道向けとなる制動時のピッチングを抑えながら高い減速度を持つSPORTモードと、サーキットを想定した速度域において、より減速度を重視したTRACKモードの2つを設定している。
※ABSはライダーのブレーキ操作を補助するシステムです。ABSを装備していない車両と同様に、コーナー等の手前では十分な減速が必要であり、無理な運転までは対応できません。運転するときは急なブレーキ操作を避け、安全運転をお願いします。ABS作動時は、キックバック(揺り戻し)によってシステム作動を知らせます。
BOSCH製6軸IMU(Inertial Measurement Unit)を採用し、正確なピッチングとロールおよびヨーの検知が可能に。車体挙動の制御を高精度なものとしている。