
開幕戦で参戦56戦目に初優勝を獲得し、
そのまま4勝を挙げて見事チャンピオンに輝いたバッサー | | ホンダの快進撃はなおも続く。第9戦、この年初めてのロードコースとなったポートランドではアレックス・ザナルディがCARTで初優勝を遂げ、次のクリーブランドではド・フェランがホンダ・エンジンで初優勝。カナダのトロントを舞台とする第11戦はフェルナンデスがCART参戦4年目にしてうれしい初優勝を遂げるなど、ホンダドライバーの6人中5人が優勝を獲得することになる。前年のリベイロ同様、バッサー、ザナルディ、フェルナンデスの3人がCARTでの初優勝をホンダとともに記録した。 シーズン2度目の500マイルとなったミシガンでは、リベイロが初の500マイル優勝を獲得してホンダはこの年の500マイルレースを完全制覇。ホンダの工場があるオハイオ州、大勢の関係者が集まったミド‐オハイオのレースはザナルディが2勝目を上げ、レースもいよいよ残り3戦となったロードアメリカで、誰かが2位以上でゴールすればホンダのマニュファクチャラーズタイトルが決まるという状況だ。しかし、そのレースではザナルディがポールポジションからスタートしたが3位で終わり、タイトル決定は次のバンクーバーへと持ち越す。 そして迎えたカナダでの2戦目、バンクーバー。ド・フェランが4位に入ったことでホンダはついにマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得し、ルーキーオブザイヤーにはザナルディが輝いてホンダは最終戦を待たずして2つのタイトルを手中にする。レースはアンドレッティが優勝、ホンダ・エンジンを手に入れる事ができなかったアンドレッティだったが、これでランキング2位に浮上し、ポイントリーダーのバッサーにあと14点差まで迫ってきた。ランキング3位はアル・アンサーJr.と、大ベテランの二人が今年初優勝を遂げたばかりのバッサーにプレッシャーをかける。 とうとう迎えた最終戦、ラグナ・セカ。バッサーは5位以内でゴールすれば初のチャンピオンが決まる中、ポールを獲得したのは僚友のザナルディで、今季6度目の予選トップ。ホンダにとって8連続のポールポジションであり、この年の通算12回目のポールだ。午後12時5分、グリーンフラッグでレースはスタートし、ザナルディと予選2位のブライアン・ハータによる大バトルが展開する。 二人の勝負に決着がついたのは最終ラップ、ラグナセカの名所であるコークスクリューで、ハータの一瞬の隙を突いたザナルディが縁石に乗り上げ、暴れるマシンをねじ伏せてそのままハータをパス。劇的なシーズンを締めくくるに相応しいレースで、ホンダは今季11勝を達成。バッサーも追いすがるアンドレッティやアンサーJr.を最後まで振り切って4位でフィニッシュし、見事初のチャンピオンを獲得したのである。同時にホンダはパーフェクトともいえる3冠を獲得。これ以上ないという成績で3年目のシーズンを終えることができたのだ。 「この1週間、ほとんど眠れませんでした。この勝利は、我々のプロジェクトに関わってくれたすべての人のお陰であり、みなさんに心からありがとうと言いたい。昨年果たせなかった500マイルのレースを2度も制覇できたことは、嬉しい以外のなにものでもありません。アメリカをはじめ各国のドライバーがみな勝ってくれて、世界中で勝利を喜ぶことができ、ホンダのチャレンジングスピリットを理解していただくことができたと思います。我々は今、やっと一人前になることができたのです」と、朝香はレースの終了後に語る。辛酸を嘗めた末にたどり着いた初めての栄冠、今までにない、最高の笑顔がそこにあった。

苦難を乗り越えて手にしたマニュファクチャラーズ・タイトル。
3年目でホンダは頂点を極めた | | |