山根 和明 氏
月刊『つり人』 編集長
山根 和明 氏
1994年つり人社入社。2006年より月刊『つり人』編集長を務める。渓流釣り、アユ釣り、磯釣り、沖釣り、コイ釣りなどなど四季折々の釣りを楽しむ。コイ釣りニュースタイルマガジン『Carp Fishing』、渓流釣り専門誌『渓流』、トラウトルアー専門誌『鱒の森』編集長を兼務。

オススメの「初日の出」釣行

入社してから10年ほど、年末年始は伊豆大島で磯釣り三昧でした。東京の都心から南へおよそ120km。高速船利用で100分。これだけしか離れていないのに、海の豊かさは別次元です。冬季はメジナイサキブダイイシダイアオリイカがメインターゲットになりますが、マダイシマアジ、スマガツオ、ヒラマサなどなど、なにが来るか分かりません。
歌謡曲でも唄われている風光明媚な波浮港
歌謡曲でも唄われている風光明媚な波浮港
この豊穣の海に魅了されたのは言うまでもありませんが、さらにもう一つ、私を惹きつけたのは、初日の出の美しさです。冬季の大島では、季節風である西風が吹く日が多く、そんな日は、風を避けて島の東側でサオをだします。風が強いことに加え、元日の早朝は全国的に交通量も少なく、工場等も休業が多いためか、大気は澄み渡っており、それまで見たこともないような堂々たるご来光が水平線から燃え上がります。そんなわけで、年末年始は初日の出を拝みがてらの大島釣行が、恒例となったのです。

年末年始はメジナのベストシーズン

これがオナガメジナ。魚体の大きさからは想像できない力で釣りザオを絞り込みます
これがオナガメジナ。魚体の大きさからは想像できない力で釣りザオを絞り込みます
冬場の海釣りは、季節風の影響を強く受けます。場所によっては、1ヶ月のうちに数える程度しか釣りができないなんてこともあります。正月休みに遠征計画を立てたはいいが、行ってみたらほとんど釣りができなかった、なんてことも珍しくありません。しかし、伊豆大島に関していえば、島のほぼ中央部にそびえている三原山が、風除けになってくれます。そのため、台風でも来ないかぎり、風裏の場所で釣りを楽しめるというわけです。
島民から「バームクーヘン」という名で親しまれている「地層大切断面」。三原山の噴火史を物語る地層の断面。100~150年程度に1回という大噴火によって降り積もった堆積物が何層にも重なり美しい縞模様をつくっています
島民から「バームクーヘン」という名で親しまれている「地層大切断面」。三原山の噴火史を物語る地層の断面。100~150年程度に1回という大噴火によって降り積もった堆積物が何層にも重なり美しい縞模様をつくっています
こんなマダイが釣れることも。釣り人は福島県在住の伊藤一美さん。大島に魅せられたひとりで、福島県から10年以上も大島詣でを続けています
こんなマダイが釣れることも。釣り人は福島県在住の伊藤一美さん。大島に魅せられたひとりで、福島県から10年以上も大島詣でを続けています
また、年により変動はありますが、年末年始にかけての大島周りの水温は、だいたい16~18℃で安定します。これは冬の磯釣りの花形ターゲットであるメジナが最も釣りやすい水温といわれています。磯からねらうメジナはオナガメジナ、クチブトメジナの2種がいますが、いずれも40cm超を釣り人は第一の目標にします。クチブトメジナとオナガメジナの釣期は異なりますが、12~1月の大島では両方がねらえます。

釣り人を魅了する魔性の魚

メジナ釣りの面白さは、一度パターンを見つけると、立て続けにヒットする点にあると思います。反面、パターンをつかみ損ねるとアタリが遠のきます。並んで釣っていても、片方は入れ食い状態で、片方はアタリ皆無なんてことも珍しくありません。また、引きの強さは同じ磯釣りの花形ターゲットであるクロダイよりも3倍引くなどともいわれます。岩礁帯に生息しているため、ハリ掛かりすると、一目散に根に潜り込もうとするわけですが、このときにハリスが岩礁に触れ、切られてしまうことが多いんです。ハリ掛かりさせるまでのゲーム性、ハリ掛かりさせてからのスリル満点のファイト、これがメジナ釣りの魅力だと言い切ってもいいでしょう。
私の好きなメジナの食べ方はしゃぶしゃぶ。ぜひ一度、お試しあれ
私の好きなメジナの食べ方はしゃぶしゃぶ。ぜひ一度、お試しあれ
冬のメジナは海藻類を主食にしているため、磯魚にありがちな磯臭さがありません。脂が程よく乗った白身の弾力のある身は、刺身でよし、焼いてよし、煮てよし、揚げてよしとどんな調理法でも美味しくいただけます。そのため、「正月の魚を釣ってくる」という大義名分で、年の瀬に遠征釣行を組まれる方も多いです。
今回ご紹介したエリア
東京都/伊豆大島のメジナ釣りMAP
アクセス
航路利用と空路利用があるが、オススメは航路。航路で最もポピュラーなのは東京都港区の竹芝桟橋から高速船利用。片道100分ほどの航海。他の出船場所や発着時間などの詳細は東海汽船のホームページを参照。
※このコンテンツは2010年12月の情報をもとに作成しております。