Vol.2

日々の心がけを世界につなぐ

前田 陽平 YOUHEI MAEDA

  • 2022年第40回大会 サービスエンジニアコース優秀賞
  • 南関東ブロック Honda Cars東京中央

── 優秀賞。その称号とともに表彰式会場で名前が呼ばれた瞬間、前田陽平(40)の右の拳は、喜びのあまり宙に上がっていた。毅然とした話しぶりから想像しがたいほど、自身にとって感極まる入賞だった。前田の鋭いまなざしが見つめる次の目標と、挑戦の軌跡を追う。

35歳からの挑戦

前田陽平は、自動車整備の専門学校を卒業してから、この道一筋。真面目な仕事ぶりを周囲から高く認められていたが、意外にもホンダ四輪サービス技術コンクール(以下、技コン)を目標にしてはいなかった。前田が初めて技コンを意識したのは、2017年、35歳の時。同じ年齢の同僚が全国大会の優良賞に輝くのを目にした日から、前田の中で何かが変わった。「来年は絶対に技コンに出場する」という決意を持ち、前田の挑戦は始まった。翌年、破竹の勢いで地区予選を勝ち抜くと、初出場にして全国大会優秀賞の座に輝く。
前田は謙遜しながらも語る。

「初出場で全国の優秀賞というのは、珍しいことではありません。それでも、周囲には驚かれました。店長、工場長はじめ、多くの方から賞賛の声をいただきました」
「けれども、当社では歴代の先輩方が多くの賞を取っているので、全国大会の優秀賞では周囲に与える影響が大きいとは言えません。その日からは最優秀賞を意識し業務を行うようになりました」

当たり前を再現する難しさ

日々の業務やトレーニングを通して、当日の競技に向け研鑽を積んだ。それでも、大勢の観客や審査員から間近に見られる状況では、緊張や不安に襲われ日常の業務を再現することすら難しい。技コン当日、前田は大きなミスをした。「普段通りの正しい作業を素早く行う」を徹底したにもかかわらず、緊張がゆえにシックネスゲージがうまく入らず、1問目を終えることができなかった。悔しさを抱えたまま突入した2問目。深呼吸をし、会場で応援してくれる人の姿が目に入ったとき「このまま終わらせたくない」と思った。平常心を取り戻した前田は、客観的に状況をとらえ、続く問題では落ち着いて対応することができた。

「観戦席に工場長や指導してくださった方々がいて、不甲斐ない結果を残すわけにはいかないと奮起し、落ち着いて競技に集中することができるようになりました」
1問目の未練を残したまま迎えた表彰式。自身は入賞を諦めていたという。だからこそ、自分の名前が呼ばれたときに「信じられない」と思い、ガッツポーズが上がったのだ。
「あまりのうれしさに思わず感情が出てしまいました!」

使命はHonda Carsの技術向上

前田の戦績は、優秀賞。「目標に対してまだまだの結果です」と慎みながらも、その実力で世界への晴れ舞台「Honda World Skills Contest 2023」への出場権を掴んでいる。だが、視線の向こうの次なる目標は、世界一の座を取ることだけではなさそうだ。
「技コンを通してクルマの構造や仕様を深く知るきっかけを得ました。普段の業務では使うことのない知識でも、いざというときお客様への安心感が変わってきます。賞の大きさに関係なく、大会に向けて身に付けた知識や技術があってこそ安心を与えられると思うのです。これからの私の目標は、大会で得たものを通して周りにも影響を与えていくことです」
前田が掲げる仕事のポリシーは『お客様に安心と快適なカーライフを提供すること』。技コンとは関係なく、日々の点検項目の中で優先してきた。品質や安全性を常に考慮し、自ら高い目標を定めて日々の業務に挑む。この積み重ねが戦績につながっている。だから結果に対して胡坐をかかず、先の未来を目指すのだ。技コンを通して身に付けた知識や技術を周りのサービススタッフに波及することで、Honda Cars全体の技術向上につなげていく。そんな強い使命感で業務にあたる前田がとても輝いて見えた。
「新人からベテランまで、誰でも技コンという場に出ることで、Honda Carsの技術力は向上していくと私は思っています。一人でも多くチャレンジしてほしいです!」
爽やかに語る前田の目には闘志が宿っている。世界大会でもその活躍に期待をしたい。

前田 陽平 YOUHEI MAEDA

  • 2022年第40回大会 サービスエンジニアコース優秀賞
  • 南関東ブロック Honda Cars東京中央

※掲載している内容は2023年2月取材当時のものです