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つかみかけた栄冠を今年こそ REVENGE FOR INDY500

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独自の進化を続けるオープンホイールレース インディーカー・シリース解説

シリーズの原点はインディ500にあり

インディカーはインディ500を走るために生まれ、インディ500を中心とするアメリカのチャンピオンシップでも使われるようになったレーシングカーです。

インディ500は1911年に始まった世界で最も歴史のあるレースで、その魅力はなんといっても圧倒的なスピードにあります。全長2.5マイル(約4km)に左コーナーが4つ配されただけの、純粋にスピードを追求したレーシングコースでは、コーナーにつけられた9.12度の傾斜(バンク)の助けもあり、常に時代の先頭をいくスピードでレースが行われてきました。1977年には一周の平均時速が321.869kmの大台に乗り、1996年に樹立されたコースレコードでは時速382kmに達しました。そのあとにマシンのレギュレーションが変わってスピードは下がったものの、ポールポジションの平均時速は2010年から昨年まで3年連続で226mph(約363.712km)を上回っています。

スピードの出るコースでありながら、外周がコンクリートの壁と金網で覆われ、コースのアウト側にエスケープゾーンが一切ないのも、インディアナポリス・モーター・スピードウェイの大きな特徴です。ドライバーがマシンのコントロールを失った、あるいはトラブルの発生したマシンは、高速で壁に激突する可能性が高いわけです。

ほかのオープンホイールレースとの違い

インディカーが大柄で、驚くほど丈夫に作られ、重量が重いのは、アメリカならではのオーバルレースを戦うためです。

ヨーロッパで1950年に始まったF1世界選手権や、1973年に始まった日本の最高峰フォーミュラカー・シリーズ(現在のスーパーフォーミュラ)の場合は、アスファルトや芝生、あるいはグラベルのエスケープゾーンが備えられたロードコース型のコースで走るためのマシンとして、より俊敏な動きが求められます。そのため、ドライバーを含めたマシンの最低重量はF1が642kg、スーパーフォーミュラは670kgと、インディカーの700.812kg、もしくは714.42kg(オーバルコースとロードコースの2パターン)に比べて明らかに軽く作られています。

インディカーではストリートサーキットでのレースも数多く開催されています。インディカーのサスペンションや、サイドポンツーンなどのボディワークは、オーバル、そしてストリートでのアクシデント時には壊れながら衝撃を吸収し、ドライバーを守るよう設計されています。同時に、屈強なマシンはマシン同士の接触でも簡単には壊れません。インディカードライバーたちは、あえてマシンを接触させるようなことはありませんが、狭いコースでギリギリの戦いになれば、小突き合いやつばぜり合いは避けられません。そのため、壊れにくいマシンは、インディカーにとって、レースをより盛り上げることにつながっています。

インディカーは12年から排気量2.2リッターのV6ターボエンジンが使われています。燃料はガソリンが15%、エタノールが85%のE85です。ターボのブースト圧がコースによって異なりますが、パワーは最低でも550馬力、最大だと700馬力に届きます。オーバルコースでのインディカーは、エンジンパワーが抑制されるにもかかわらず、最高速は時速370kmに達します。それに対してF1のエンジンは、ガソリンを燃やす排気量2.4リッターの自然吸気V型8気筒で、パワーはおよそ750馬力です。より軽いマシンと、よりパワフルなエンジンの組み合わせによって、F1マシンは高い運動性能を誇りますが、トップスピードはインディカーよりやや遅く、時速362km程度になると考えられています。スーパーフォーミュラのエンジンは排気量が3.5リッターでF1やインディカーよりも大きいですが、自然吸気V型8気筒のパワーは、3カテゴリーで最も低い600馬力程度。最高速は時速300km程度だと予想されます。

シリーズ制覇のために求められる資質

F1はヨーロッパからアジア、南米、中近東まで世界中のサーキットを巡る世界選手権で、その下にはGP2、GP3といったカテゴリーが設定されています。スーパーフォーミュラは日本で生まれ、アジアへとフィールドを広げつつあるカテゴリーで、ポジションでいえば、GP2と同様にF1のすぐ下に位置しています。一方、インディカーはアメリカで生まれ、長い時間をかけて独自の世界を育んできました。近年ではストリートやロードコースでのレースが多く開催されていますが、今でもシリーズの目玉はインディ500であり、オーバルレースの重要度も高いです。オーバルと一口に言いますが、全長1マイル以下のショートオーバルと、1.5マイル以上のビッグオーバルでは、キャラクターが全く異なります。インディカーでチャンピオンになるには、どんなコースでも速く走れる才能の多様さ、順応性の高さ、そして、スピードやアクシデントを恐れない度胸が求められるのです。