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つかみかけた栄冠を今年こそ REVENGE FOR INDY500

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  • 街全体が沸きに沸く濃密な3WEEKS What's インディ500
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街全体が沸きに沸く濃密な3WEEKS What's インディ500

30万人以上が観戦に訪れる
歴史あるレース

インディアナポリス500マイルレース、通称インディ500は、一つの場所で開催され続けているレースとしては、世界で最も長い歴史を持っています。初開催は1911年で、レースは2度の大戦中を除いて毎年行われてきました。今年は97度目の開催です。F1世界選手権やル・マン24時間耐久レースも歴史の面ではインディにかないません。

インディ500は観客動員数の多さでも世界ナンバーワンの座に君臨し続けています。全長2.5マイル(約4km)のコースは、バックストレッチを除いて背の高いグランドスタンドに囲まれていて、迫力があります。観客席の総数は一切公表されませんが、インフィールドに陣取る大勢のファンも含めれば、毎年の決勝日に集まるファンは優に30万人を超えています。それだけの人々が、毎年500マイルの長距離レースを同時体験するのです。

インディ500は約1カ月に及ぶイベントです。5月初旬にプラクティスが始まり、決勝レースは5月末です。この間には丸1週間にわたるプラクティスと、2日間の予選が行われます。以前は、予選が2つの週末を使って行われ、その間のウイークデイにも練習を重ねていいスケジュールとなっていましたが、参戦チームの費用負担を減らすため、近年になってレースの日程が圧縮されました。それでも、一つの週末にプラクティスから決勝レースまでを行うほかのレースとは明らかに異なり、インディ500は、今年も3週間という長期にわたって開催されます。

決勝を戦う33台に残るまでの
過酷な道のり

今年も、予選の前にプラクティスの期間として7日間が用意され、そのほぼすべての日に正午から夕方6時までという長時間にわたる走行が許されます。そして予選は週末の2日間を使い、インディ500特有のルールに従って、33のグリッドが決定されます。

予選初日はポールデイと呼ばれます。ポールポジション(PP)の決定を主なテーマとする一日です。最速ドライバーが栄えあるPPを手にできるのですが、インディ500の予選では一周の速さを競うのではなく、4周連続のスピードで争われます。ウイングをギリギリまで寝かせ、空気抵抗を減らしたマシンを使い、時速360kmを超えるスピードで行う4周の連続走行は、とてもデリケートです。ドライバーたちは高度なドライビングスキルを要求される上、ほかのレースとは比較にならない集中力も求められます。空気抵抗を減らすためにマシンを路面に押しつける力(ダウンフォース)を減らしたセッティングでは、気温、路面温度、風向きとその変化、風の強さ、湿度、タイヤの摩耗など、刻々と変化する状況によってマシンのハンドリングが影響を受けるため、変化を敏感に感じてドライビングを修正していかなければいけません。超のつくハイスピードでの走行には度胸も必要ですが、それ以上に冷静さ、マシンの状態を感じ取る能力、それに対応するだけの経験による裏付けも求められます。

インディ500の予選には、“1日で3度のアタックをしてよい”というルールがあります。通常のレースなら一発勝負ですが、インディ500では一度アタックを終えても、その記録を放棄することで、より速いタイムを出すべくアタックができるわけです。

ポールデイは午前11時に予選が始まり、まずはくじ引きで決定した順番の通りに、出場者全員が一度目のアタックを行いますが、そのあとには、アタックをやり直したいドライバーたちが予選を続けます。そして、午後4時30分からは、その時点までの最速9人だけによるPP争いが行われます。これに選ばれた9人は、午後4時30分以前に行ったアタックの回数に関係なく、時間切れとなる午後6時までに、さらに3度までのアタックが認められます。

翌日曜日は、正午から午後6時までを使って残りのグリッドを決めるのですが、いったん33台のグリッドが埋まれば、そこからはバンプアウト合戦がスタートします。33台の中で最も遅いスピードの保持者は“オン・ザ・バブル”と呼ばれ、少しでも速いスピードを記録するドライバーが現れると、“オン・ザ・バブル”の選手は33個のグリッドから弾き出されるのです。これをバンプアウトと呼びます。この日も各エントリーが行えるアタックは3度まで。バンプアウトされる心配がないほど速い予選アタックを行える選手はいいのですが、そうでない場合は予選終了間際に、ライバルたちに逆転のチャンスを与えないギリギリのタイミングでコースインし、最後のグリッドを手に入れるという戦い方も考えられます。ただし、それを実現するためにはルールを熟知し、非常に冷静な状況判断能力を持ち、時には運も必要です。

予選終了の銃声が響き、33のグリッドが決定すると、翌月曜日から木曜日まではコース上を走行することが一切できません。ファイナルプラクティスが金曜日に開催され、土曜日は市内を巡るパレードが行われるからです。そして走行開始から3度目の日曜日。決勝レースが盛大に行われます。

勝者の証は
シャンパンではなくミルク

インディ500は毎年5月末、メモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)の週末に開催されます。ピットストップを6回以上も行う長距離レースはドライバーだけでなく、マシンにとっても、チームのクルーたちにとっても過酷な戦いです。

4周連続の予選アタック、2日間にまたがる予選、バンプアウト合戦など、100年以上もの長い歴史を刻んできたインディ500には、数多の伝統、しきたりがあります。中でもユニークなのは、約1カ月にわたる死闘の末に勝者となったドライバーが、ビクトリーレーンで牛乳を飲むというものです。

インディ500の優勝者は、栄誉とともに巨額の賞金を手にします。100年の歴史を持つ500マイルレースであるインディ500は、現代に残るアメリカンドリームなのです。