革新の低床・低重心プラットフォームの開発がすべてを決めた。そういっても過言ではないほど、広さ/使いやすさ/運転のしやすさ、そしてスタイリングまで一新した新型ステップワゴン。初代、2代目の面影は見受けられない。
ボディサイズは全長4630mm×全幅1695mm×全高1770mm。全幅こそ5ナンバーをキープしているが、先代よりも全長が45mm短く、全高が75mm低くなったボディはかなりコンパクトな印象。「エモーショナル・ダイナミクス」をテーマとしたカタマリのあるフォルムと相まって背の高さを感じさせない。それでいて室内は2800mmの長さ/1350mmの高さとも先代とまったく同じ寸法。くつろぎやゆとりのある広大な空間をキープしている。
また、ホイールベースを延長したにもかかわらず、クラストップの最小回転半径5.3mを実現。狭い駐車場でも取り回しのよさにもこだわった。その結果、従来のミニバンにはない走りのカタチとのびのびとした空間、そして誰にでも扱いやすいボディサイズを兼ね備えた新しいパッケージングを完成させた。
低床・低重心プラットフォームのメリットは乗降性にも大きく現れた。床面地上高は先代よりもさらに約30mm低くなった390mm。ステップ形状を持たずにクラストップレベルの低さを実現したフロアはサイドシルからワンステップで乗り降りでき、運転者はもちろんのこと、とくに小さな子供やお年寄りに優しい。フロアがドアサイドまでフラットなので3列目シートへのアクセスも無理がない。
その優れた乗降性をサポートするのが、開口部を25mm拡大したリヤスライドドア。今回からついに両側に採用となり、日常での使い勝手も向上している。さらに3列目シートへのウォークインスペースを最大120mm拡大。足元だけでなく、上半身部にも余裕が生まれた。
また、キーレスエントリーのリモコンや運転席のスイッチで自動開閉できる、パワースライドとパワーテールゲートを設定。ともに買い物などで荷物などを抱えているときなどかなり重宝する便利な機構だ。しかも半ドア防止イージークローザーや身体や腕の挟み込み防止機構など安全面にも十分配慮している点が嬉しい。週末の遊びでの楽しさよりも日常の使い勝手を重視。新型ステップワゴンは毎日の暮らしに心地いいミニバンに進化した。
ゆったり座れるソファのような快適な座り心地のシート。そのアレンジは2列目シート選びで大きく異なる。
標準装備となるのはシートバックが前に倒れ、シートクッションとともに前方へ跳ね上がるタンブルシート。その操作も簡単でシート横のリクライニングレバーか、シート後部のストラップを引くだけ。スライド量は着座状態で120mmだ。シートが跳ね上がることで、上方空間に余裕が生まれ、3列目からの乗降性は良好である。
オプションで選べるチップアップ&スライドシートは3列目シートと対座モードになる回転機構が一番の魅力。先代のような1列目の回転対座機構は廃止されたが、キャンプ場などでくつろぐには十分な広さだ。こちらの操作もシートショルダー部のレバーを引けば、チップアップとなり、そのまま180°回転させれば対座に早変わりする。スライド量は300mmと広大で使い勝手も抜群。シートはともに6:4分割となっている。
3列目シートはオーソドックスな5:5の分割跳ねあげ式を採用。フレームなどを新設計することで大幅な軽量化を実現した。これにより操作荷重は先代に比べて約30%低減し、簡単操作でスッキリ収納できる。
60mm低床化されたにもかかわらず、運転席のドラポジはミニバンらしいアップライトな姿勢で見晴らしのよさは残されている。これは先代に比べ、ヒップポイントを約20mmアップし、アイポイントの低下を15mmに抑えたこととAピラーの付け根を前方に移動させ、空間を広く取ったことによる恩恵だ。このAピラー位置の移動は同時にフロントウインドの傾斜を強め、空力性能が向上。さらに大型の三角窓を設けたことで右折時の死角を減らし、安全性も向上した。さらに横基調に薄く広がるデジタルメーターをドライバーの目から遠くし、ハンドル上から見下ろすように配置したことで、走行視界からの移動を最小限に抑え、焦点差が少なくなった。これによって運転負荷を大幅に軽減している。
また、低床化によって重心が下がり安定感が増したことで、よりステアリングの応答性を高めるためのステアリングレシオのクイック化や高速の直進安定性を生む、キャスタートレール量の拡大をも実現。さらに最適なポジションに調整できるチルト&テレスコ機能も備え、走りの質はワンランクアップした。