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これがSH-AWDの心臓部であるリアドライブユニット。徹底した小型軽量化で遂に市販車搭載が実現した |
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左右一対になっているのが特徴的。ダイレクト電磁クラッチが、四輪の駆動力を自在にコントロールする |
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旋回時は外側後輪は前輪左右の平均軌跡よりも外側の軌跡を通るため、その分速く回転させないと十分な駆動力を伝達できない。これを可能にするのが、世界初の倍速機構だ |
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SH-AWDにより走行ラインをトレースするイメージ図。実際もオンザレール感覚に極めて近い |
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パワーウェイトレシオは、従来の7.86kg/psから5.87kg/psと飛躍的に向上した
(*テストコースでの撮影です) |
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従来の縦置きから横置きに変わったことで、マスの集中により、旋回性能に貢献する |
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両サイドに出ているマフラーは「フルデュアルエキゾーストシステム」で、排出直後から2本になっている |
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レジェンドが四輪駆動となったのは歴代初であるが、単純に四輪に駆動力を分配するものではなかったのだ。この「Super Handling All-Wheel-Drive=SH-AWD」は、前後輪に駆動力を可変配分するとともに、後輪に配分した駆動力を左右で可変するという新技術なのである。あらゆる走行状態において、四輪それぞれのタイヤの能力を最大限に引き出し、駆動力を高めるだけでなく、曲がる性能にも活用。このSH-AWDによって、クルマの運動性能をこれまでにないレベルにまで引き上げるのだ。簡単に言ってしまうと、4本の足で自由に駆け回る動物の姿をイメージするのが良さそうだ。いざ!という時には路面を選ばずに4本足で素早くダッシュ。直線はもちろん、思いのままに曲がることができるから、方向を瞬時に変えられる。ここに、「SH-AWD」の原点があるというのだ。
SH-AWDの肝となるのがリアドライブユニットだ。ちょうどT字型をしたリアディファレンシャルケースのような形をしている。中には増速機構と、ダイレクト電磁クラッチがあるのだが、SH-AWDとはこれらを用いて、どういったことを行なうシステムなのだろうか。
四輪それぞれにかかる路面に押し付けられる力は、走行状況によって変化する。例えば、左へ曲がろうとしているときには、右後ろのタイヤの伝達能力が高くなるから、ここに多くの駆動力を与えれば、スムーズに曲がっていくことができる。しかし、どのタイヤにも同じ駆動力を与えてしまった場合、右後ろのタイヤは駆動力が足りなくなってしまい、「駆動力を足そう」とアクセルを踏み込めばアンダーステアが出てしまう。逆に、「ちょっと駆動力があり過ぎる」とアクセルを緩めれば、オーバーステアとなってしまって、なかなかコントロールは難しいもの。そこで、SH-AWDはステアリングのみに頼ることなく、クルマが曲がるときに必要な駆動力を適切に分配し、ヨーモーメントをコントロールしてしまうのだ。
実際には、アクセルやステアリングの操作量とブレーキ信号を検出し、ドライバーの運転操作を判断。その後、ECUの情報で駆動量を算出。さらに、舵角センサー、横Gセンサーなど4種類ものセンサーから走行状況や路面状態を判断して、ダイレクト電磁クラッチを作動させる。これで、前後輪と後輪左右の駆動力を同時に且つ、連続的に自在にコントロールすることができる。駆動力配分はというと、前後輪の場合は、70:30から30:70の範囲で可変配分が可能。同時に後輪の駆動力は左右で100:0から0:100まで連続的にコントロールし、狙った走行ラインをまるでトレースするかのような、まさに思いのままの走りを提供してくれる。また、コーナーリング中は増速機構により外側後輪を増速させ、駆動力制御を最大限に引き出しているのだが、これも世界初の新技術。ちなみにこのようなヨーモーメントをコントロールするシステムは、手を変え品を変え数々存在するが、多くはブレーキでコントロールする「受動的」な制御で、レジェンドのSH-AWDのような駆動力配分を積極的にコントロールする「能動的」な制御は極めて少ない。
もちろん、直進時にもSH-AWDは威力を最大限に発揮。発進時や急加速時などでの荷重が後ろに移動する際、後輪への配分を増やして駆動性能を向上してくれる。また、高速道路などでのクルーズ時には、後輪への配分を減らして直進安定性を発揮しながら、低燃費にも貢献する。さらに滑りやすい路面においても安定した旋回性を確保し、「通常はFFで走行し、前輪がスリップし始めたら後輪に駆動力を伝える」という、いわゆる「スタンバイ四駆」に見られるタイムラグも皆無となり、ごく自然なフィーリングとなっているという。
新型レジェンドの走りを決定付けるのはSH-AWDだけではない。Hondaはフラッグシップに相応しいパワーユニットを用意した。新開発のV6 3.5リッターVTECエンジンがそれだ。従来モデルのVバンク角90°から60°へと狭めてコンパクト化を実現したことに加え、ヘッドカバーにマグネシウムを採用するなど、軽量化も達成。このことがシャシーデザインに多くの影響を及ぼしたことは後述したいが、なにより、最大出力221kW[300PS]/6200rpm、最大トルク353N・m[36.0kg・m]/5000rpmという圧倒的なパワーについて話したい。
国産の国内モデル初の300PSと聞くと、ついつい数字に目を奪われてしまいそうだが、実際に乗ってみてわかったことであるが、これだけのハイパワーながらそれは決して尖ったものではなく、「ゆとり」を生み出している走りであった。従来モデルに対し、吸気バルブ径3mm拡大、高圧縮比化などによって40PS、モナカ状の中空構造を採用した、共鳴切り替え機構付アルミダイカスト2ピース・インテークマニホールドで20PS、さらに床下キャタライザーの直後からパイプを2本に分けた、可変流量サイレンサー採用フルデュアルエキゾーストシステムで25PSと、合計85PS向上を達成。また、「平成17年排出ガス基準75%低減レベル」をクリアし、8.6km/L<10・15モード走行燃費消費率(国土交通省審査値)>という低燃費と相まって、ハイレベルなクリーン性能も発揮している。クリーンでハイパワー、そして軽量コンパクトと、じつにHondaらしいエンジンに仕上がっていると言えよう。
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