ガングリップタイプのシフトノブにより、スポーティ感が高められている。走行状態に応じ、知能的なシフト制御を行なうプロスマテックを進化させ、よりドライバーの感覚に近い変速が可能 |
 |
|
 |
ステアリングから手を放すことなしにシフト操作ができるパドルシフトを装備。いまや欠かせないアイテム |
 |
|
 |
軽量化を徹底的に追及したボディはアルミ骨格となった。その高剛性は世界トップレベルだ |
 |
|
 |
理想的なジオメトリーを見出し、SH-AWDの性能を最大限に引き出すサスペンション(左:Fr/右:Rr) |
 |
キャリパーの取り付け方法は、横からボルトを差し込む方法でなく、ディスク面と平行に取り付けるラジアルマウントを採用している |
 |
|
 |
矢印の先にあるのが遠赤外線カメラ。左右にひとつずつ配置され、視差により距離を測定する |
 |
|
 |
赤く囲まれているところに人間がいることを知らせてくれる。注意は音によっても促される |
 |
|
 |
このエンジンに組み合わされるのは、Sマチック付電子制御5速オートマチックトランスミッションである。アッパークラスのセダンに要求されるスムーズさと、ステアリングの後ろにあるパドルシフトで、スポーティな走りを両立している。ミッションからリアに動力を伝えるのがプロペラシャフトだが、ここにはHondaで初となるCFRPプロペラシャフトを採用している。CFRPといえばF1のモノコックに代表されるように、軽量・高強度を可能とする材料であるが、新型レジェンドの場合、同じものを鉄で作ったときと比べ、約5.3kgも軽くなっているという。これは大きなアドバンテージであろう。
強力なエンジンと画期的な駆動システムを駆使するのに必要不可欠となるのは高いシャシー性能だ。しかし、いいかえれば、どれかが欠けても新型レジェンドは生まれなかったということだ。これらがすべて、うまくバランスすることで、「新次元のドライビング体験」は実現する。また、新型レジェンドの走りには歴代以上の「質」も求められる。クルマそのものの出来を左右する重要なパートであるシャシーの出来。ここにはいったいどのような取り組みがなされたのだろうか。
まずモノコックを見ると、骨格の主要部分の50%に高張力鋼板を採用し、軽量化と高剛性を両立。さらに各部の構造を合理化し、重量を増やすことなく剛性の向上に努めていることがわかる。高いシャシー剛性は、サスペンションやタイヤの性能をフルに引き出すだけでなく、静粛性や乗り心地にも寄与するので、この部分にエンジニアたちは徹底的にこだわっていたことが見受けられた。そしてNSX以来の突き詰め方をしたという、オールアルミサスペンションを採用。フロントをダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクを採用したが、アーム類はすべてアルミである。さらに、エンジン本体と前後のサスペンションが取り付けられるサブフレームもアルミ製とした。アルミは軽量であるというのは常識だが、シャシーに採用すると「硬い」というフィーリングが得られる。これは決して乗り心地が悪くなる硬さのことではなく、カッチリとした硬さが得られるのである。つまり新型レジェンドは、各部の強度を高めた上で、ダンパーやタイヤにしっかりと仕事をさせ、乗り心地とコーナーリング性能を向上させるというシャシーの方向性を明確化しているといえる。
一方で、走ることと同様に重要な点は、「止まる」ということだろう。そこで新型レジェンドでは、フロントにはアルミ製対向4ポッドキャリパーをおごり、リアはコンベンショナルな1ピストンながら、こちらもアルミ製として、バネ下重量の軽減を図った。加えて、フロント・キャリパーの取り付け方法を、最近の2輪レーサーが多く採用しているラジアルマウントとしている点にも注目したい。これは取り付け剛性を高め、パッドとブレーキディスクの当たりを、より均一なものとして、ブレーキ性能を向上させる効果がある。ちょっとした工夫のように思われるが、高級車を作るということは、こういうことの積み重ねが重要であるということを付け加えておきたい。
また、特筆すべきは、Hondaの安全に対する取り組みには目覚ましいものがあるということ。アコードから始まった先進の高速道路運転支援システムHiDS。インスパイアから始まった追突軽減ブレーキCMS+E-プリテンショナー・シートベルトのプリクラッシュセーフティ。そして順次採用が拡大しているGコントロール技術など。当然、新型レジェンドもそれらをすべて採用しているが、今回新たに開発され、オプション装備されたのが「インテリジェント・ナイトビジョンシステム」だ。
これはバンパー下部に内蔵されている2機の遠赤外線カメラにより、夜間ヘッドライトを点灯していても見えにくい歩行者を、メーターフード上にあるヘッドアップディスプレイに映しだしてくれるというもの。ここまでは単なるナイトビジョンと変わりはない。しかしインテリジェント・ナイトビジョンシステムとは、映りだされた映像から歩行者を判別して、注意喚起の音を発すると同時に、歩行者の映像をオレンジ色の枠で囲み、強調表示してドライバーに知らせるという世界初のシステムなのである。仕組みは、まず2機のカメラにより動物の目と同じように距離を測定。人間かどうかの判別は頭、肩、身長といった「形」で行なっているというのだが、じつに高い精度で人間かそうでないかの判断ができるそうで、まるで第三の目を持ったようにも感じてしまう。だが、最終的にはドライバー自らの目で安全確認をしなければならない。ほかの運転支援システムと同じく、あくまでもドライバーの運転を支援するものであって、散漫な運転を行なってはいけないということは、肝に銘じておきたい。
新型レジェンドの魅力は、テストコースやサーキットだけでは図り知ることができない。とくに、そのパワーとハンドリングは速いスピードでなくても発揮され、場所や天候を選ばずに、いつでもどこでも安心して楽しむことができる。レジェンドでドライブされるときは、ぜひ、ルートの途中にワインディングも通ることをお勧めしたい。そのハンドリングから、決して緊張を強いられる速度を出さずとも、レジェンドを思い切り楽しむことができるはずだ。 |
|