今回の新型シビックの目玉が、シビック・ハイブリッドに搭載される新開発のハイブリッド・システム。なかでも注目したいのが3ステージi−VTECエンジン。
今回の新エンジンでは吸気側のロッカーアームを3つとした計5つのロッカーアーム(以前は4つ)を採用。さらに3系統の油圧回路(以前はふたつ)を組み合わせて低回転・高回転・気筒休止という、まさに3ステージと呼ぶに相応しい3段階のバルブ制御を行なう。こうして新たに高回転用制御が追加された結果、高出力を可能とした。さらに今までは4気筒中3気筒を休止したが、新型エンジンは4気筒すべてを休止する。これにより一層の低燃費化と電力エネルギーの回生(充電)効率を向上。
全気筒休止が低燃費化につながるのは即座に理解できる。では、なぜ全気筒休止が電気エネルギーの回生効率向上に寄与するのか? 答えはエンジンの抵抗が大きいと、減速時にタイヤからの回転エネルギーがエンジンブレーキとして失われるため。これによりモーターで回生できるエネルギーが減少してしまう。しかし3ステージi−VTECの気筒休止モードは、4気筒すべてのバルブ作動を休止させるためシリンダー内を密閉状態に保てる。これによりエンジン抵抗となるポンピング・ロス(吸・排気抵抗によるエネルギー損失)を、気筒休止させない場合に比べて66%も低減できた。結果タイヤからの回転エネルギーを電力エネルギーに変換する回生効率が向上。
そしてもちろんモーターそのものやDC−DCコンバーター、インバーターといった各部品はもちろん、それをまとめたパワーコントロールユニット(PCU)や、新配列となったニッケル水素バッテリーは、それぞれコンパクト化かつ高効率化が図られた。これによりPCUとバッテリーを組み合わせたインテリジェントパワーユニット(IPU)も大幅にコンパクト化されて高いパッケージング効率を実現している。
こうした結果シビック・ハイブリッドは、まず1.3Lのi−VTECだけで最高出力95ps/6400rpm、最大トルク12.5kg-m/4600rpmを発生。さらにモーターの最高出力20ps/2000rpm、最大トルク10.5kg-m/0〜1160rpmを発生する。そしてシステムでの最大トルクは17.0kg-mと1.8Lエンジンと同等の性能を手に入れた。同時に10・15モード燃費性能は31.0km/Lという超低燃費を実現し「平成22年度燃費基準+5%レベルを達成。排出ガスでは「平成17年度排出ガス基準75%低減レベル」を達成した。
しかしユニークなのは超低燃費かつクリーンな排ガス性能を実現したにも関わらず、走りの気持ちよさにも一切妥協していないところ。とくに際立つのはエンジン駆動と気筒休止の切り替えがほとんど感じられない部分で、あくまでこれまでのエンジンの気持ちよさを失わずに、未来への約束をしっかり果たしている点だ。この辺りのフィーリングはまさに「Hondaらしさ」の現れである。
新型シビックに搭載される1.8Lのガソリンエンジンであるi-VTECも、また注目のエンジンであることに間違いない。今回の1.8Lの特徴を分かりやすくいえば、2.0L並みの動力性能と1.5L並みの燃費性能を達成したエンジンだ。
最高出力は140ps/6300rpm、最大トルクは17.7kg-m/4300rpmというスペックながら、10・15モード燃費性能は実に17.0km/Lを達成。平成22年度燃費基準+5%レベルを実現している(5AT車)。さらにクリーンな排ガス性能を実現し、平成17年度排出ガス基準75%低減レベル認定を受けるというバランスに優れたエンジンである。
こうした数々の高性能を実現できた理由は、数限りない技術が贅沢に投入されたから。そして実はこれらの技術のなかにはNSXやS2000、インサイトといった特別なモデルの特別なエンジンで使われた技術が多く存在する。
この1.8Lのi-VTECエンジンは、世界中で展開されるものでありながら、実に高度な技術が多く投入される。そう考えると、いかにHondaエンジンの信頼性が高いかが伺える。世界中で作られ使われることはイコールで、耐久性に優れたものである必然性があるからだ。
そしてもちろん、実際に走らせても軽快な吹け上がりの気持ちよさが存分に伝わるものに仕上がっている点がHondaらしいところ。担当のエンジニア氏によれば、現代に求められる厳しい燃費や環境における性能はもちろん、走りの楽しさや気持ちよさを実現する性能も決して諦めずに開発を行なったという。つまりこのエンジンはまさに「市民」という意味を持つシビックの心臓として相応しいもの。多くの人に妥協のない優れたものを提供したいという想いから生まれたエンジンだともいえる。
こうして実際に1.8Lのi-VTECは、シビックならではの爽快な走りを演出するフィーリングを確かに実現したのだ。