新型シビックでは「ゆとりの広さを確保したうえで、運転のしやすさを徹底的に追求」を合い言葉に室内設計がなされたのが特徴。
5人の乗員が収まるキャビンは、全幅1750mmのワイドボディと2700mmのロングホイールベースによって、1470mmの室内幅と1900mmの室内長が確保されている。そのうえで大胆に前方へと出されたフロントウィンドウや各グラスエリアの配置および角度の工夫が相まって、より視覚的な広さ感が高められている。
さらにフロントシートでは、インストルメントパネルの奥行きを活かしたマルチプレックスメーターの採用や、垂直に近づけたステアリング角度などによって、スポーティかつゆとりの感じられるポジションが実現されているのが特徴。一方リヤシートでは十分な広さを確保しながら、さらにフロントシートバックなどの形状にまで気を配ることで、動きやすさを追求している。
実際フロントシートに座ると、目の前に広がる視界は相当に開けているのが特徴。フロントウィンドウまでの距離が遠く離れているため奥行きを存分に感じる。それでいながらステアリングを始め、センターコンソールやドアトリムなどは、ミニバンとは異なる適度な包まれ感を演出する。このためドライバーはクルマ全体とのフィット感を得やすいのだ。
一方リヤシートは座面に傾斜がついており、腰をしっかり降ろして落ち着けるタイプとなっている。フロントシートバックも前方に向かってえぐるような形状のため、ひざ回りにもゆとりが感じられる作りだ。
外から眺めると、最近のクルマにしては低くスポーティに構えた雰囲気をもつシビックだが、ひとたびドアを開けて室内に入ると、そこには外見からは意外に思えるような効率的な空間が広がっている。
シビックの室内で特徴的部分といえるのが、新たに採用されたマルチプレックスメーターだ。これはスピードメーターなど確認頻度の高いもの(=スピードメーター/燃料計/水温計/ターンシグナルインジケーター等)を厳選した上で、インパネの上方かつ遠方のドライバー正面に配置。それ以外のタコメーターやオド/トリップメーターなどは下段の手前へ配置。つまり上段奥と下段手前にメーター機能を分割した仕組みをもつ。これにより走行中の視界からの見下ろし角を小さくして、視点移動距離を最小化。さらに走行視界に近づけることで焦点差もなくす効果があるのだという。
マルチプレックスメーターは、初めやや戸惑いを覚える。とはいえ慣れれば必要な情報の確認が、運転時の視線からほぼ変わらぬ位置で確認できるため、ピントも合わせやすく、運転時における目への負担は少ない。
8代目シビックで大きなニュースといえば、やはりモデルラインアップが4ドアセダンのみとなったことだろう。ただこれは日本市場だけの話で、アメリカでは4ドアセダンの他に2ドアクーペが存在するし、ヨーロッパでも4ドアセダンの他に5ドアハッチバックが存在する。こうした傾向から分かるのはつまり、新型シビックはそれぞれの仕向地において最適な車種を送り込んでいるということ。実はエンジンに関してもそうで、日本仕様の1.8Lとハイブリッドは世界中で展開されるが、一方で例えば欧州専用に2.2Lのディーゼル・ターボなども用意されるといった具合に、地域毎にも特性がある。
そして現在の日本市場を考えたときには、4ドアセダンのみのラインアップにもうなずける理由は確かにある。というのもシビック・クラスの5ドアハッチバック・モデルは日本において極めて小さな市場だという現状があるからだ。5ドア・ハッチバックはフィット・クラスが多くを占め、それ以上大きなサイズのモデルではセダンの方が売れており、さらにセダンよりもコンパクト・ミニバンの方が売れているというのが実際である。
そうした状況を踏まえた上で、仕向地ごとに最適の車種を送り出す…という考え方を当てはめると確かに日本市場=4ドアセダンのみのラインアップとなるわけだ。
ただHondaは常にサプライズを起こし、市場をリードするユニークな面も忘れてはならない。そう考えると将来的にラインアップが充実する可能性にも期待ができる。