MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2001年8月号

トラフィック・バリアフリー

 身障者は、交通社会において何に困り、何を必要としているのでしょうか。視覚に障害のある人、車いす歩行者・車いすドライバーなど身障者がそれぞれの状況で安全・安心に移動できるためのバリアフリーの環境づくりは、すべての人が共有できる交通安全対策のめざすべきゴールともいえます。今回は身障者の交通安全ニーズを知ることを通して、バリアフリーの交通社会を実現するための課題を3名の識者に話しあっていただきました。
大澤氏_ph
大澤尚宏
(『We'LL』創刊者)
  心のバリアをどうするか

 車いす利用者と話すなかで一番感じるのは、まさに「心のバリア」です。例えば車いすに乗ったらもう終わりだという気持ちがとても強い。「車いすに乗った姿で近所に出るのは恥ずかしい」ということには、他人の視線もありますし、本人の心に車いすに乗る自分を認めたくないという気持ちもあるようです。車いすで外に出たときに感じる差別的な視線に、外出しようとする意欲、勇気が萎えてしまったという話をよく聞きます。この差別的な視線を解決するために、具体的な教育を早い段階から行なうことがとても大事だと思います。
バリアのない安全かつ
快適な交通社会の実現のために
  徳田氏_ph
徳田克己
(筑波大学助教授)

 今は、選択肢があって、それを自分の責任で選択するということが、すでに福祉の世界では当たり前になりつつあります。私たちの仕事はいかにその選択肢を増やすかというところにあると思います。
 障害者の交通安全を考えたときに、障害者に対する交通安全教育と、一般の人に対するバリアフリーについての交通安全教育の二つが有機的に機能して、はじめてすべての人が共有できる交通環境が整うのではないでしょうか。
長岡氏_ph
長岡英司
(筑波技術短期大学助教授)
  思いやりの気持ちではなく
まずは知識を持つ

 何ごとも実体験に勝るものはありません。教習現場でも車いすで道路を歩いたり、アイマスクをしたりなど、いろいろな障害のある人たちの立場に立たせ実体験をしてもらうことで、障害を単なる知識としてではなく、実感をもって理解できます。そこから本当の思いやりが生まれてくると思うのです。教習所で免許をとろうという多くの人たちが健常者で、障害は自分には関係ないという意識がありますが、誰だっていずれは年をとるし、交通事故に遭わないとは限らないのですから、決して他人事ではない。自分たちの問題として捉えるべきだということをもう少し理解してほしいと思います。
障害理解のための小冊子
「トラフィック・バリアフリー」作成
  書籍_ph

 Hondaは障害理解のための小冊子「トラフィック・バリアフリー」を作成しました(監修:徳田克己・筑波大学助教授)。これはドライバーやライダーに身障者が交通の何に困り、何を必要としているのかを知らせ、すべての人にとってバリアのない安全かつ快適な交通社会の実現をめざすことが目的です。主に、Hondaの四輪販売会社で配布していますが、教育現場などでの障害理解教育にも活用できます。

お問い合わせは
本田技研工業(株)安全運転普及本部
TEL:03-5412-1575
http://www.honda.co.jp/news/2001/c010605b.html


このページのトップに戻る目次へ

 
  安全運転普及活動コンテンツINDEX