特集・交通事故負傷者数「105万人突破」を考える
交通事故実態を踏まえた、きめ細やかな交通安全対策を推進
死者数9000人以下の取り組みとあわせ、急増する事故件数・負傷者数に歯止めをかけるための方策を3名の識者の方に語っていただきました。座談会で語られた3名の識者の方々のご提言を抜粋してご紹介します。
死者数、負傷者数、事故件数減少を…
    総務庁長官官房交通安全対策室長 人見信男氏
 
死者数を減少させることが最大究極の目標であることに変わりはないのですが、負傷者数、事故件数を減少させるための対策にも一層の力を入れる必要があるのではないかと考えています。この10年間で見ると、やはり問題は高齢者の事故です。負傷者数の絶対数の多い若者と急増傾向にある高齢者の対策は今後の課題です。
参加体験実践型教育で危険に対する判断力を…
       警察庁交通局交通企画課長 松尾庄一氏

 
状況に応じた危険空間の管理の重要性をいろいろな場で啓発していく必要があるように思います。交通場面での危険に対する判断力は、ある程度実践的な教育を行なえば身につくし、それをやるべきだと思います。それがまさに交通安全教育の手法における参加体験実践型教育だと思います。
道路環境をシステムとして…
           日本大学名誉教授 長江啓泰氏
 運転を人―クルマ―道路環境の1つのシステムとして考えたときに、その3つの要素のいちばん弱いところが全体の限界となります。例えば、人はクルマの性能が上がると多少スピードが出てもすぐに止まれると過信するところがあるわけです。一見交通事故が減少傾向にあるように見えますが、ドライバー自身はクルマの性能に頼りすぎて運転技術が落ちているのではないでしょうか。



今年度の交通事故死者数および負傷者数はともに昨年と較べ増加傾向にあります。この憂慮すべき事態を受け、交通対策本部で「交通死亡事故の抑止に向け当面緊急に実施すべき対策の推進強化について」という決定が行なわれたこともこの座談会で話されました。その概要を紹介します。

「交通死亡事故の抑止に向け当面緊急に実施すべき対策の推進強化について」

平成12年9月7日付  交通対策本部決定

〈概要〉
今年の交通死亡事故死者数は、前年に比較して増加基調で推移しており、とりわけ、シートベルト非着用、高齢者の死者が多数を占めている。一方、例年秋から年末にかけて薄暮時の死亡事故が多発している。以上のことから各関係機関・団体は緊密な連携の下、交通死亡事故抑止に向けて次の対策を強力に推進する。
●推進重点
1 シートベルト及びチャイルドシートの着用の徹底
2 高齢者の交通事故防止
3 夜間(とくに薄暮時)における交通事故防止
●全国交通安全運動等の効果的推進
10月及び11月に本決定の推進重点に即したキャンペーンを展開し、広く国民の交通安全意識の高揚を図るとともに、「年末における交通事故防止運動」においても交通死亡事故抑止に向けた効果的な対策を強力に推進する。


※交通対策本部…総務庁長官を本部長とし、警察庁等関係18省庁によって構成される政府の交通安全・円滑化対策の総合的推進枠組み。
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