Technology

すべては、エンジンからはじまった。

それはすぐれた品質と信頼性で、
世界中の人々に欠くことのできないPowerとなった。
日々の仕事のなかで、余暇を過ごすなかで、
それは、単なるエンジンを超えて、
人の心を、生活を、夢を動かす動力源となった。

発電機

 必要なときに、必要な場所で、必要な電気を供給するHondaの発電機。世界中の多種多様なニーズに対してHondaは、持ち運び可能な携帯タイプから、より大容量の業務用発電機や停電時自動運転を行う非常用発電機まで、幅広いラインアップで応えている。

軽量コンパクトで扱いも簡単なE300は携帯発電機という新たなジャンルを生み出した

 その第一歩は小さな携帯発電機の「E300」であった。

 エンジンを使用した発電機の歴史は古く、Hondaの原点である自転車用補助エンジンも旧日本陸軍の無線機発電用エンジンを流用したものであった。1950年代の発電機は、軍用、工場用など用途が限られており、大型で取り扱いが煩雑、騒音も大きかった。

携帯発電機誕生のきっかけとなったE40

 1962年、ソニーのマイクロテレビ用電源の開発を申し出たHondaは「E40」を試作した。「E40」は既存の発電機の概念を大きく変える、携帯可能な小さな発電機であった。「E40」は商品化には至らなかったが、小さな筐体に必要な機構を収めるという前代未聞の技術力を生かし1965年に量産型の携帯発電機「E300」の販売を開始する。

「E300」の開発テーマは、「小型軽量で持ち運びに便利」「静かで誰でも手軽に取り扱える」「機械を思わせない家電製品なみのデザイン」であった。小さな筐体に収めるために専用設計した55.2ccの4ストロークサイドバルブエンジンは、長時間運転を可能とするバルブローテーター機構、軽量化と静粛性を両立させた世界初のタイミングベルト駆動カムシャフトなど新たに開発された技術を投入。アタッシェケースをイメージした小さな筐体に配置されたシンプルなスイッチ類は取り扱いも簡単であった。

 発売当初Hondaは主にレジャー用を想定していたが、使い勝手の良さから工事現場などの業務用の需要も多く、累計50万台を販売する大ヒットとなった。

 さらに「E300」は、安全を考慮した携帯発電機に関する法律制定のために多くのデータを提供し、以降登場する携帯発電機の安全性向上にも貢献した。

携帯発電機の代名詞的な存在になったEX400デンタ

 1979年、「E300」は、出力を引き上げ、電圧を一定に保つ自動電圧制御装置などを採用した「EX400」にモデルチェンジ。より使い勝手が向上した「EX400」は、年間10万台以上を全世界で販売し、日本では「デンタ」の愛称で親しまれ携帯発電機の代名詞にもなった。

 1990年代に入ると、パソコンや高機能の精密電子器機製品が急速に普及しはじめた。これらの精密電子機器は、家庭用コンセントに供給されている電気(いわゆる、きれいな波形の正弦波)の使用を前提に設計されていた。大規模な発電設備で作られる電気とは異なり、エンジンを回して発電を行う携帯発電機は、従来の方式は、波形に乱れが生じてしまった。また、世界的にも高まる環境問題に対応するため、より低燃費、低騒音、低振動の発電機の開発も必要であった。

きれいな波形の電気を供給することができるGENE21シリーズのEU9i

 Hondaは「壁コン(家庭の壁にあるコンセント)に追いつき追い越せ」を目標に、低排出ガス、低騒音、低振動を目指し、きれいな正弦波を供給するという難題にチャレンジ。高速多極アウターローター式オルタネーターと正弦波インバーターを開発、1秒間に数万回の演算を行うクラス初のCPU制御式によってきれいな波形の電気を供給可能な携帯発電機「GENE21シリーズ」の販売を1998年に開始した。

 オルタネーターの極小化と軽量化(従来品の約1/2)により、1kVAクラスのEU9iではクラス最軽量級の13kgを達成。二重防音構造によりヨーロッパの厳しい騒音規制(EN)もクリア。さらにエンジン回転数を自動制御するエコスロットルの採用により燃料消費量は20〜40%減少。排出ガスや騒音の低減にも成功した。また、2台の発電機を接続して大きな出力を得られる並列運転も可能とした。

 21世紀を見据えて設計された「GENE21シリーズ」は、出力を増強したモデルや超低騒音型のモデル、さらに電子制御燃料噴射装置採用したモデルなどラインアップも充実させた。熟成と進化を続けるHondaの「赤い発電機」は、屋外レジャーでエアコンも使うような大出力が求められる北米や欧州を始め世界中で、高品質ブランドの代名詞として定着。「GENE21シリーズ」の生産産累計は2006年に早くも100万台を越えた。

頑丈なフレームにセットされたE1000はプロの現場で重宝された

 Hondaの発電機は携帯型だけではなく、より大きな出力を必要とする業務用のニーズにも応え、1965年に「E1000」の販売を開始した。頑丈なフレーム付きボディに収められた「E1000」は、従来の無骨な発電機とは異なり、スマートな外観として扱いやすく、耐久性、信頼性も高く、プロの現場においても高い評価を受けた。

高い防音製を兼ね備えたEM3000

 都市部で増加する夜間工事用などでは高い静粛性が要求された。そこで1973年には大出力かつ低騒音の消音型発電機「EMシリーズ」の販売を開始。開発の最終段階において、開発担当責任者の自宅前で真夜中に試運転を実施したが、全く気がつかれなかったというエピソードを残すほど静かな発電機となった。「EMシリーズ」は、高い静粛性が評価され、映画やテレビ制作現場などでも幅広く使用された。

 多様化する発電機のニーズに対応し、携帯できる小型発電機からプロ用の大出力発電機まで、幅広いラインアップを揃えたHondaの発電機は、1978年に発電機の生産累計が100万台を越えた。

 一方、世界では大規模な災害が頻発しており、災害時の非常用電源として発電機の有効性がクローズアップされていた。日本においては、1995年1月未明に発生した阪神淡路大震災で広域停電が発生。交通信号が作動せず交通機能がマヒ。近隣都市からの救急活動や支援物資輸送の大きな障害となった。この事象に対してHondaは、停電時に自動起動して復旧後は停止する自動起動式の非常用発電機を開発。屋外設置でも20年間使用可能な塗装を施し、「使われない方がいい発電機」を日本全国の500ヵ所以上に納入した。

 さらに、2011年に発生した東日本大震災ではインフラは一瞬で破壊。携帯発電機の有効性が図らずも実証された。Hondaは東日本大震災の教訓を生かし、入手が困難であったガソリンに変わり、比較的入手しやすかったプロパンガスの使用が可能な防災向け発電機「EU9iGP」(2012年4月)と「EU15iGP」(2014年4月)を開発した。

カセット型LPGガスを燃料としたエネポ9iGB

 1965年に「E300」を販売して以来、長年にわたり発電機の研究開発を重ねたHondaは、発電機に用いられる燃料にも着目。カセットガスを燃料として使用する、ガスパワー発電機「エネポ9iGB」の販売を2010年に開始。カセットガスはガソリンに比べ、購入や保管が容易であり、「エネポ9iGB」は、発電機を初めて扱うという人々にも好評を得た。

発電機とは異なる発想の蓄電機E500

 さらにHondaは、従来の発電機と発想が異なる蓄電機「リベイドE500」の販売を2017年から日本で開始した。内蔵したリチウムイオン電池に、家庭用のコンセントや自動車のアクセサリソケットから充電して持ち運ぶ蓄電機。初代「E300」をオマージュしたコンパクトなボディの重量はわずか5.3kgで、持ち運びがより簡単になった。最大の特長は排出ガスが発生しないため、室内や車内、テントの中など屋内での使用を可能とした。また、インバーターなど内部冷却用の電動ファンは装備されているが静粛性も非常に高い。取り扱いもコンセントやUSB端子を接続してボタンを押すだけの簡単な仕様。正弦波インバーターの搭載でパソコンやスマートフォンなどの精密器機にも対応している。

 消費電力の大きい電気製品を使用する場合は、「GENE21シリーズ」「エネポ9iGB」等のより出力の大きいHonda発電機と接続して使える並列運転機能も装備。家電感覚で手軽に扱える蓄電機「リベイド E500」は、長年にわたり発電機の研究開発を重ねたHondaだからこそ出来る発想と技術による、新たなチャレンジの始まりでもある。

 Hondaが作り続けてきた「発電機」と新たに開発した「蓄電機」──この似て異なる二つの「持ち運びのできる電気」がもたらす可能性は限りなく広がる。