水陸の王者を捕まえてみよう!
子どもが喜ぶ昆虫採集

家族で昆虫採集を楽しんでいる写真家族で昆虫採集を楽しんでいる写真

体験レポート02日本最大の水生昆虫、
タガメを捜せ!

タガメが住むのは、カエルや小魚がたくさんいるところ
昼のタガメは障害物の陰にいるんだって……

日没までのひととき、今度はタガメ採集に挑戦。相手は日本最大の水生昆虫、ペットショップでも人気の的だから、3人のモチベーションもさらにアップです。向かったのは、山間に残った棚田。左右から小高い山に挟まれた谷のような地形でした。沢からの流れは、小さなため池で温められてから田んぼに注いでいきます。

田んぼの真ん中にT字の形をした大きな止まり木のようなものが……。これは、昔から伝わる、オオタカを呼ぶための工夫で、ここに時々止まると、スズメが怖がって近寄らなくなるのだとか。昔の人は、稲を守るために自然の力を上手に利用していたんだなぁ。

「ここにはハッチョウトンボやホトケドジョウっていう珍しい生きものもいるんだって。農薬を使っていないからいろんな生きものが生きていけるんだね」と、お父さん。

親子が歩いていくと、すごい数のカエルが逃げていきます。
「タガメはカエルとか小魚を食べて生きているから、それがいなけりゃ住めないんだよ」と、お父さんが説明すると、
「ちょっとかわいそうだけど仕方ないね」ふたりも納得。

どちらかといえばタガメも夜行性。カブトムシと同じように、外灯などの明かりに飛んで集まる習性もあるけれど、日中は岸辺の草の間などを探れば発見可能。今回は、こっちで挑戦です。

タガメのエサは、小魚やオタマジャクシ、カエルなどほかの小動物。そういった生きものが暮らせないような場所では、タガメも生きていけないんだ

畔(あぜ)を静かに歩きながら、気になるところをそーっと覗き込む……。まるで宝捜しだね

まずはアメリカザリガニ。そしてタイコウチ!
初夏の棚田にはいろいろな生きものがいた

捕虫網を片手に、背中を丸めて岸辺を注意深くチェックする3人。顔を近づけると、小さなカエルが四方に逃げていきます。水の深さは10cmほど。網を入れると泥で濁るけど、沢からの弱い流れがあるので、2、3分もするとまたきれいな水に……。

最初に見つけたのはアメリカザリガニでした。立派な腕を左右にかざした姿は迫力満点。優生くんと瑛吾くんにとっては、タガメより身近な存在かもね。立て続けに3匹捕まえて、兄弟の興奮は頂点。一気に勢いづいちゃいました。
ただ、ザリガニの多い場所では、タガメが幼虫の時に食べられたり、エサの取り合いが起きたりするので、タガメなどは少なくなってしまうこともあるんだって……。

真っ赤なアメリカザリガニ! いちばん身近な遊び相手かもしれないね

やがて、脇で水の中を眺めていた優生くんが何かを発見!
「タガメみたいなのがいる!」
「これはタイコウチだよ。よく似た仲間だけどね」と、お父さん。
優生くんが間違えるのも無理はありません。タガメのような大きな前脚を持っていて、シルエットはそっくりです。5、6分すると今度は、細い棒のようなミズカマキリです。
これで水生昆虫の人気者を2種類ゲット。すごいね、斎上兄弟!

タガメのように前脚でエサを獲るタイコウチ。タガメのミニチュアって感じです

ミズカマキリも捕まえちゃった! タガメも、タイコウチも、ミズカマキリも尾部に付いた呼吸管を水面に出して呼吸するんだって

ついに憧れのタガメをゲット!
水中の帝王はやっぱりかっこいい

それから、田んぼの畔(あぜ)をあっちへこっちへと移動すること、小一時間。
ついに発見!
日本最大の水生昆虫が登場です。その体色は見事な保護色。水辺の植物の陰にじっと潜んでいて……。でも、瑛吾くんが力強い前脚のフォルムに気づいてくれました。
「あれ、タガメじゃないかなぁ……」
すぐにお父さんが近寄ってきて「そうだ! タガメだよ。やったね!」と、網を静かに入れてゲットです!

いた! タガメ発見。静かに網を伸ばして……捕まえられるかなぁ

それにしてもすごい迫力。UFOキャッチャーみたいな太い前脚と、がっちりした胴体。おそるおそるつまんでみたふたりも、その姿にすっかり虜のようす。
「これ、家で飼えるかな……」。
「飼えると思うけど、充分なエサを用意するのは大変かもね。今日は逃がしてあげよう」とお父さん。
タガメもタイコウチもみんな池に帰して、3人の水生昆虫採集は終わりました。

ついにゲットしたタガメを、お父さんが見せてくれた。ふたりの目が釘づけ……

力強い前脚、がっちりした胴体。日本最大の水生昆虫の貫録が漂います

ハンティングの興奮と野山散策のワクワク感に満足!

生きものを追いかける楽しさと、自然豊かな野山の散策がミックスされた今回の昆虫採集。楽しさが2倍、3倍になって、おもしろすぎ!お父さんだって、子どもの頃に戻った表情です。いや、いちばん楽しんでいたのはお父さんだったりして……。
これからの季節、出会える昆虫の種類は数えきれないほど。みなさんも夏休みを利用してぜひ挑戦してください!

昆虫採集を終えて…

菱沼ファミリーの写真

結局、カブトムシとタガメはもちろん、ノコギリクワガタやタイコウチ、ミズカマキリなど、いろいろな生きものをゲットした斎上親子。初めての経験に、帰り支度を始めてもお子さんふたりは興奮がさめないようす。それはそうだよね。たった1日でこんなにたくさんの人気昆虫と会えたんだもの。

「生きものを見て、こんなに子どものテンションが上がるのを初めて見ました。家の周りにはこういう触れ合いができる場所がないですしね」とお父さん。
お子さんはふたりとも「絶対、また来たい!」と再戦を熱望です。楽しかったんですね。
後日、お父さんがこんなメールをくれました。
「下の子は、眠いはずなのに帰ってからも目を輝かせて昆虫図鑑をずっと見てました……」

今回のステージ

ハローウッズの風景写真

ハローウッズ

1997年、栃木県茂木町にオープンした「ツインリンクもてぎ」内、サーキットに隣接する42ha(東京ドーム9個分)の自然体験施設。キャンプ場やクラブハウス、研修室、クラフト工房をはじめ、さまざまな施設が揃っている。ハッチョウトンボやホトケドジョウなど希少な生物も生息、初夏にはホタル観賞も楽しめる。
https://www.mr-motegi.jp/hellowoods/

監修者:
崎野 隆一郎
(さきの りゅういちろう)

1957年鹿児島県生まれ。
現在、ハローウッズ森のプロデューサーを務める。
1981年、北海道大雪山国立公園の然別湖畔に移住、アイスバーや氷上ミュージアムの設計建設を手がける。
1999年、本田技研工業(株)新プロジェクト、自然活用アドバイザーに就任。
里山の再生や保全のスペシャリストとして活躍中。

※このコンテンツは、2012年7月の情報をもとに作成しております。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。