水陸の王者を捕まえてみよう!
子どもが喜ぶ昆虫採集

家族で昆虫採集を楽しんでいる写真家族で昆虫採集を楽しんでいる写真

体験レポート01森林の王者、
カブトムシを探せ!

新緑の季節は昆虫採集に打ってつけ!

今回訪ねたのは、山間に作られた総合レジャー施設内の自然観察エリア。
キャンプ場やクラブハウスが隣接しているけれど、適度に人の手が入った雑木林は、かつて日本各地にあった豊かな里山を彷彿とさせます。
夏休みには、キャンプや昆虫採集を楽しみにたくさんの親子が訪れるとか。

ちょうどこの時期、カブトムシはサナギから羽化し、タガメは盛んに行動するようになるので、昆虫採集にはベストチャンス。クルマを降りた時から期待でいっぱいです。

そんなに急がなくっても大丈夫!
でも、ふたりは我慢できないようですね

昼の間にカブトムシのマイホームを観察
思いがけず3匹のノコギリクワガタに遭遇

カブトムシは夜行性。昼に樹木を登ったり降りたりする姿に会うことはあまりありません。でも、どんなところを好むのかを明るいうちにチェックしてみようと、3人は山に入りました。3人が進んでいくと、いろいろな昆虫がお目見えして歓迎です。

まずは、剥がれかけた木の皮の間に隠れていたコクワガタを見つけました。ちいさいけれど立派なクワガタ。思わず3人の顔がほころびました。
と……、お父さんが何かを発見。何か小さな影が木の幹を登っていくのが目に入ったようです。

「あそこに何かいるぞ! 行ってみよう」
3人は、サッカーで鍛えた脚でダッシュ!
「クワガタだ!」
それは、見事なノコギリクワガタのオスでした。
「でっかい! こんなに大きいのは珍しいよね」と、瑛吾くんも大興奮!
でも、それだけではありませんでした。その木には少し小ぶりのオスと、メスも登場。
「すごい! すごい!」

カブトムシの下見で出かけたのに、1度に3匹も人気のノコギリクワガタをゲット!
この後、剥がれかけた木の皮の裏で、冬を越したコクワガタも発見。あまりのスタートダッシュにいきなりヒートアップの3人でした。

木の皮が剥がれかかったところに、コクワガタが隠れていた!

ノコギリクワガタをゲット!
これはいいスタートだぞ!

甘~い香りのトラップを作ってみた
バナナとお酒で、大好物の発酵した樹液を再現

カブトムシの好物はクヌギやナラなど広葉樹の樹液。カミキリムシなどが木の表面に傷つけた所へスズメバチがやってきて、さらに広げると樹液が一気に流れ出してきます。
「スズメバチって危ない昆虫って思われてるけど、林の中では大切な役割を持っているんだね。スズメバチがいなければカブトムシやクワガタもエサを摂れないんだよ」と、お父さん。
優生くんたちも納得したみたい。

樹液は、ちょうどこの時期の暖かな空気に触れて発酵。その甘酸っぱい匂いに誘われてカブトムシやクワガタ、カナブンなどが集まってくるというわけ。まさに林の人気レストランですね。

今回は、発酵した樹液に近い効果を上げるトラップ(ワナ)作りに挑戦してみました。それを、ストッキングや果物ネットに入れて、ねらった木の幹に結んでおけばOK。夕方に仕掛けて、日が暮れてからチェックする作戦です。でも、今回は発酵するまで待てないので、そのまま付けてみました。これでも集まってくるかなぁ……。

トラップを仕掛けたら、日が暮れるまでは待つだけなので、その間に棚田へ行ってタガメ捜しに挑戦です!

発酵して少し黒っぽくなってきたら、ネットに入れて、目星をつけておいた木の幹へ、くくりつけましょう

トラップの作り方

作り方は簡単。バナナを軽くつぶして焼酎に漬けておきます。
1、2日経って色が黒ずんで、甘酸っぱい匂いがしてきたら発酵のサイン。
そうしたら、ストッキングやネットなどに入れて、木の幹にくくりつけておきましょう。
もちろん、クヌギやコナラなどカブトムシやクワガタの好む広葉樹を選びます。

トラップ作りに必要なもの。ネット、焼酎、バナナ

まず、バナナを手で柔らかくつぶすようにします。
皮は剥かずにそのままでOK

そこに焼酎をかけて発酵を待ちますが、この日はコーラという隠し味もちょっと……

森林の王者カブトムシと対面!
樹液のレストランでディナータイムを満喫していました

夕方になって、森は少しずつ暗くなってきました。

「そろそろカブトムシ採りの用意をしなくちゃね」と、お父さん。
ふたりの首や手足へ丹念に虫よけスプレーを噴霧します。蚊に食われたら困るからね。懐中電灯もチェック。昼の間にトラップを仕掛けた場所や、樹液が出ていた木のポイントを地図で確認しておきます。

ゆっくりと山に入っていく3人。
「トラップに集まってるかな……」
「でも発酵してないからね」

やがて、トラップの木に到着。静かに近寄ります。
「……あれ、何もいないや……」
残念ながら集まっていたのは小バエのような羽虫だけでした。
「やっぱりね」
ちょっとがっかりの瑛吾くん。
「じゃあ、樹液がいっぱい出ていた木もチェックしてみよう!」
ふたりを勇気づけるお父さん。再び山道を進みます。

やがて、あの甘酸っぱい匂いが漂ってきました。
すると……。

いた!日が暮れた森に分け入って、あの樹液の匂いを頼りに捜してみると、カブトムシがディナーの最中でした

たっぷり浸み出す樹液にはノコギリクワガタも……。まさに森のレストランです

「あっ! いた! カブトムシがいる!」
強そうな角を誇らしげにかざして、オスのカブトムシが樹液を吸っていました。
「すごい! カブトムシ発見!」
ふたりは見入ったまま動きません。

「よかったなぁ。ここは森の中のレストランだね。カブトムシだけじゃなくっていろいろな昆虫が樹液を食べにくるんだよ」と、お父さん。
こうして、ついに3人は森林の王者と出会えたのでした。

監修者:
崎野 隆一郎
(さきの りゅういちろう)

1957年鹿児島県生まれ。
現在、ハローウッズ森のプロデューサーを務める。
1981年、北海道大雪山国立公園の然別湖畔に移住、アイスバーや氷上ミュージアムの設計建設を手がける。
1999年、本田技研工業(株)新プロジェクト、自然活用アドバイザーに就任。
里山の再生や保全のスペシャリストとして活躍中。

※このコンテンツは、2012年7月の情報をもとに作成しております。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。