ラスト2戦となったワールドスーパーバイク。前戦ドイツ大会から2週連続開催となったオランダ大会は、天候の変わりやすいことで有名なアッセンで行われた。一日に何回も雨が降る”ダッチウェザー”と呼ばれる天候は、これまで何度も名ドラマを生んできたが、選手とチームにとっては、運を試される厳しい戦い。今年も”ダッチウェザー”は健在で、3日間を通じて雨に悩まされることになった。
予選初日、フリー走行は雨で始まった。このセッションでトップタイムを出したのは、前戦ドイツ大会でスーパーバイク初優勝を遂げたシャウス(D)で、エドワーズは2番手につける。WGP500ccクラスでポールトゥウィンを飾ったことがある岡田忠之は13番手。ドライコンディションとなった午後の予選でもシャウス(D)が好調でトップタイム。マシンのセットアップに専念したエドワーズは9番手へとポジションを落とすが、ライバル勢が予選2日目の天候を心配して予選用タイヤを履きタイムアタックをする中、エドワーズは着々とサスペンションのセットアップに多くの時間を割いた。一方、岡田は、WGP時代に得意としたアッセンだったが、初挑戦となるSBKでは、朝からの雨に苦戦を強いられ、午後の予選でも14番手。2日目以降の天候回復に期待することになった。
しかし、予選2日目も、断続的に雨が降る”ダッチウェザー”が選手とチームを苦しめる。そのために、多くの選手がタイヤの選択に苦悩。初日のドライコンディションで行われた予選タイムをクリアすることは出来なかった。
さらに、上位16選手によって行われるスーパーポールも、雨のために50分間12ラップで競われることになった。ここでも路面の乾くタイミングをうまく捕らえた選手が上位につける”運”がポジションを大きく左右する。そのスーパーポールでエドワーズは8位。フロントローに並ぶことは出来なかったが、ウエットとドライのセットアップを順調に進めたことで、勝利への執念は消えることはなかった。
対して岡田は、午前中に行われたウエットの予選で4番手と調子を上げる。最終コーナーのシケインで転倒するハプニングはあったが、スーパーポールに向けて上り調子。ころころと変わる路面の中で岡田は、インターミディエイトのタイヤで9位にポジションアップすることに成功した。
PPは、ランキングトップのT.ベイリス(D)が獲得。初日暫定ポールだったR.ザウス(D)は2位に後退。続いて柳川(K)、P.キリ(S)がフロントローに並んだ。
迎えた決勝日。アッセンの空は相変わらず目まぐるしく天候が変化した。朝のウォームアップはウエット。しかし第1レースは、ドライでスタートが切られることになった。
ホールショットを奪ったのは、PPスタートのベイリス。それに、柳川(K)、キリ(S)、トースランド(D)、エドワーズと続き、岡田は8位。2周目にエドワーズが4位に浮上。ベイリス(D)に肉薄した柳川(K)は、キリにパスされ3位に後退と激しくポジションを入れ替える。その柳川を3周目にエドワーズが捉えて3位に浮上。さらにキリ(S)を交わして2番手に浮上。チャンピオン争いを繰り広げる二人がマッチレースの様相。その二人にスタートで出遅れながら猛烈に追い上げて来たシャウス(D)が加わって、この3人がトップグループを形成。後続をジリジリと引き離すことになった。
レースは終盤に突入。14周目に入って雨が降り始める。このためにトップのベイリス(D)が中止を即するために手を上げてペースダウン。シャウス(D)とエドワーズもこの判断に同意してレースは中断。3周を残してレースは成立。ベイリス(D)、シャウス(D)、エドワーズが1秒差という接戦で第1レースを終えた。
エドワーズにとっては、逆転優勝のチャンスを逃す痛恨の雨となり、ベイリス(D)が優勝、チームメイトのザウスが2位に入り、結果的にベイリスのチャンピオン獲得を援護する形となった。3位に終わったエドワーズは、ベイリス(D)とのポイントの差が24から33へと広がり、再び、ベイリスにタイトル獲得のマジックが点灯することになった。岡田は5台によるし烈な5位争いの中で、7位でフィニッシュした。
続く第2レースも、辛うじてドライコンディションでスタートが切られる。第1レースの優勝で勢いに乗るベイリス(D)が好スタート。シャウス(D)が続き、エドワーズは3番手。しかし、フロントタイヤの選択に失敗したエドワーズのペースは上がらず、ジリジリと後退。一時は12番手前後までポジションを落とすが、最後は10位でフィニッシュ。第1レースでセッティングを見直した岡田は、エドワーズのサポート役を務める形で13位でゴールすることになった。
一方、好スタートを切ったベイリス(D)とシャウス(D)は、序盤から後続をジリジリと引き離す好走。終始、シャウス(D)がレースの主導権を握っていたが、エドワーズがポジションを落としていることから、最後はシャウス(D)がベイリス(D)に優勝を譲る形でベイリス(D)が優勝。2連勝を飾ったベイリス(D)とエドワーズとの差が52ポイントへと開いたことから、ベイリス(D)のチャンピオンが決まった。
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